大沢たかお さん
俳優
(おおさわ たかお)東京都出身。19歳からモデルとしてファッション誌やパリコレクションで活躍し、ドラマ『君といた夏』(94年/CX)で俳優に転身。以降ドラマ『JIN -仁-』(09年、11年/TBS)、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年/東宝)など数々の話題作に出演。4作にわたったシリーズ集大成の映画『キングダム 大将軍の帰還』(24年/東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)が第48回日本アカデミー賞優秀賞を10部門で受賞。大沢さんが主演とプロデューサーを兼任する劇場版『沈黙の艦隊』(23年/東宝)の続編、『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(東宝)は9月26日より全国公開。【公式インスタグラム/@osawa_takao.official

日本映画の枠を超えた挑戦に挑んでいます

俳優の大沢たかおさん
シャツ¥280,500、パンツ¥225,500/ボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)、その他/スタイリスト私物

シリーズ最新作でも再び最新鋭の原子力潜水艦であり独立国家を標榜する〈やまと〉の艦長・海江田四郎を演じる大沢たかおさん。壮大な物語の第2章として位置づけられる本作の撮影現場での体験や想いから、類稀な作品世界の魅力に迫ります。

──劇場版『沈黙の艦隊 北極海大海戦』公開にあたって、現在の想いをお聞かせください。

実写版の『沈黙の艦隊』はまず2023年9月に劇場版が公開されて、その後翌年2月から未公開シーンを含めた『沈黙の艦隊シーズン1〜東京湾大海戦〜』が、Amazon Originalドラマとして8話に渡り配信されたという前代未聞の展開に挑んだ経緯がありました。

劇場版とドラマシリーズの両方を観ていただいた方はおわかりかと思うのですが、実は昨年の劇場版は『沈黙の艦隊』という壮大な作品の導入を担うような位置づけをもっていました。ラストに明確な結末をおかない映画でもありましたので、正直なところ劇場版をご覧になった方はそのあたりを突っ込んでくるのではないか? という懸念もありました。

──確かに映画の終盤にきて“おや?もしかしてこの映画、ここで終わらない…?”とぞわぞわした記憶があります。

すみません、観る方にとっては少しだまし討ちのような終わり方でしたよね(笑)。しかしいざフタを開けてみたら、劇場版は僕が予想していた数字をしっかり超える大ヒットにつながってくれたのでほっとしました。映画のヒットのおかげかPrime Videoのほうも2024年上半期のネットドラマの配信視聴率1位(※)を獲得できて、かわぐち先生が生み出された『沈黙の艦隊』という作品には、本当に多くの方の期待値のようなものがあるのだと実感できたことが今作の制作にもつながりました。

※Amazon MGM スタジオが日本で手掛けた作品の中で、歴代一位の国内視聴数を記録。(2025年9月時点。Amazon MGM スタジオが日本で手掛けた作品における配信後365日間の国内視聴数)
俳優の大沢たかおさん
かわぐち先生が生み出された『沈黙の艦隊』という作品には、本当に多くの方の期待値のようなものがある(大沢さん)

──劇場版第2弾である『沈黙の艦隊 北極海大海戦』には強力な新キャストが加わり、潜水艦バトルもさらにスケールアップしているとのことですが、ストーリーとしては原作のどのあたりのパートを切り出しているのでしょうか。

まず、今作は原作漫画の『沈黙の艦隊』全巻の中でも、最も盛り上がるブロックに焦点を当てて実写化を試みています。〈やまと〉が北極海の水面下というバトルフィールドでアメリカ最新鋭の原子力潜水艦と直接対決を繰り広げると同時に、地上では日本で衆議院解散総選挙が行われるというブロックなんです。

数年前にこの映画を企画した当時から、僕は選挙のシーンにすごく興味をもっていました。当時は今よりも選挙に関心をもつ人が少なかったので、そのような状況下でひとつのエンターテインメントとして、選挙を面白く刺激的に見せてみたらどうだろうかと考えたのです。総選挙と原作屈指の潜水艦のバトルシーンを組み合わせた2時間の映画は、うまくいったら邦画の枠を超えられるようなものになるかもしれないとも思っていました。

観てくださったお客様が喜んでくださるのが僕たちの目指す“成功”

俳優の大沢たかおさん
うまくいったら邦画の枠を超えられるようなものになるかもしれない(大沢さん)

──荒唐無稽とも思われる斬新な政治信条を掲げる政治家・大滝淳役で津田健次郎さん、原作では男性キャラクターだった民自党幹事長の海渡真知子役で風吹ジュンさんが登場されるということで、永田町のシーンも厚みを増しそうですね。

そうなんです。エンターテインメントとしていちばん張り切って頑張らなくてはいけない局面でもあるので、映画としてどれだけのスケール感や迫力、人間ドラマをぶつけることができるのか。まさに今作は正念場であると捉えています。自分で言ってしまうのもなんですが、もはや『沈黙の艦隊』は観た後に“なんとなく良かったね”というふんわりした感想が浮かぶ程度ではすまされないステージまで来ている作品だと思っているんです。ですから、ある程度の評価と数字は必ず叩き出さなくてはと。

僕自身も演者として全力で撮影に取り組みましたし、潜水艦のシーンに迫真性を富ませるためのCGやVFX表現にもこだわり抜き、初号試写会の開催があやぶまれたほどスタッフが粘りに粘って編集に奮闘した作品なのですが、それもすごく大切なことだと思っているんです。

いつも思うのですが、エンタメとして高い評価をいただく作品ほど、計画どおりには進まないことのほうが多かったりします。締め切りは大切ではありますが、個人的には創り手が最後まで粘って、こだわって、最大限までベストを尽くそうと努力する熱量の高さこそが作品の質をグッと上げてくれるとも思っています。

──その結果として生まれた迫力に満ちた映像や音響は、前作の劇場版でも話題となりました。

監督やプロデューサー、役者陣やスタッフまで含めた全員が常に“この作品は絶対に成功させなくてはいけない”という気迫で取り組んでいますからね。観ていただいたお客様が感動して喜んで劇場をあとにしていただけることが僕らの目指す“成功”ですから。そこに対しては1ミリたりとも妥協しないでやっていこうというのが、チームの原点であり出発点。だから映画の公開日が迫る今、すごくドキドキしています(笑)。

俳優の大沢たかおさん
役者陣やスタッフまで含めた全員が常に“この作品は絶対に成功させなくてはいけない”という気迫で取り組んでいます(大沢さん)

──そんな今作ならではの注目ポイントを、ぜひ教えてください。

深海の中の密室空間である潜水艦って、ある種の閉塞感とか恐怖感のある舞台設定じゃないですか。ゆえに基本的にはスリルとサスペンスが潜水艦映画の醍醐味だと思うんです。そうした意味で今回の北極海の氷の下でのバトルシーンは、よりいっそう閉塞感を増幅させているぶん、迫力も増していると思います。

また、頭脳を駆使して指揮を執る海江田の動きは相変わらず最小限で、ほぼ一歩も動いていませんので、彼をとりまく絵としての大きな変化はありません。しかしそこに実際の北極のダイナミックな映像をインサートするなどの視覚的な工夫がなされています。さらに僕が船員を演じる役者陣に『この作品は絶対に失敗できない』という決意表明のようなものを話したこともあいまって、現場の緊張感もさらにインパクトの強いものになっています。そんな〈やまと〉艦内から醸し出される独特の空気感と北極の水面下での閉塞感の恐怖が交じり合うことで生まれるスリリングな緊迫感を、ぜひ劇場でご堪能ください。


『沈黙の艦隊』について語る大沢さんの声のトーンは穏やかでときにあたたかく、手塩にかけたわが子を世に送り出すかのような熱量が伝わってきました。Vol.2ではさらに作品のビハインドに迫りますのでお楽しみに。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

劇場版『沈黙の艦隊 北極海大海戦』9月26日より公開!

(C)東宝
(C)東宝

■あらすじ/シーズン1のドラマシリーズは、Amazon MGMスタジオが日本で手掛けた作品の中で歴代一位の国内視聴数を記録した『沈黙の艦隊』。その待望の続編が、至高の潜水艦バトルアクションを余すところなく堪能できる劇場版として登場する。物語は、日米共同で極秘建造された原子力潜水艦「シーバット」が、艦長の決断により核ミサイルを搭載したまま独立国家「やまと」を宣言するところから始まる。東京湾での激闘ののち、舞台は極寒の北極海へ。描かれるのは、原作漫画随一の名場面〈北極海大海戦〉と、連載当時に社会現象を巻き起こした〈やまと選挙〉。砕ける流氷をかわしながら繰り広げられる緊迫の魚雷戦、そして潜水艦同士の知略を尽くした激突。冷たい北の海で火花を散らすその戦いは、ポリティカルな駆け引きとともにさらなる高みへと加速する。シリーズ最大級のスケールで描かれる、極上のアクション・ポリティカル・エンターテインメントがここに幕を開ける。

■キャスト/
大沢たかお
上戸彩 津田健次郎
中村蒼 松岡広大 前原滉 渡邊圭祐
風吹ジュン
Torean Thomas Brian Garcia Dominic Power
Rick Amsbury 岡本多緒 酒向芳
夏川結衣 笹野高史
江口洋介

■原作:かわぐちかいじ(『沈黙の艦隊』/講談社「モーニング」掲載)
監督:吉野耕平
脚本:髙井光
音楽:池頼広
主題歌:Ado「風と私の物語」(作詞・作曲:宮本浩次/編曲:まふまふ)
プロデューサー:戸石紀子、松橋真三、大沢たかお、千田幸子、浦部宣滋
配給:東宝

問い合わせ先

ボッテガ・ヴェネタ ジャパン

TEL:0120-60-1966

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取材・文 :
谷畑まゆみ