「ダイエットに果物はNG」は思い込み

糖分の多い食べ物は、体に余分な脂肪を貯め込みやすくするため、ダイエットやスタイル維持にはよくない!と信じている方が多いのではないでしょうか? 糖分が多い食べ物と言っても、スイーツのようなお菓子から、果物や清涼飲料水など、さまざまです。それらすべてが本当によくないのでしょうか? 管理栄養士で、臨床栄養実践協会・理事長の足立香代子先生は、「肥満や生活習慣病のリスクは、食事の後に急激に血糖値が上がってしまう”食後過血糖”に問題があり、果糖を多く含む生鮮食品・果物のなかには、血糖値を上げにくくしてくれるものがある」と言います。そのメカニズムとは? 具体的に、血糖値を上げにくくしてくれる果物とは?

肥満の原因は、糖分が多い食べ物自体ではなく「血糖値」の急上昇!

血中にブドウ糖が多いと、インスリンが多く分泌され、余分な脂肪としてため込みます。
血中にブドウ糖が多いと、インスリンが多く分泌され、余分な脂肪としてため込みます。

食後に血糖値が急上昇すると、血糖値を下げようとして、大量のインスリンが分泌されます。インスリンは脂肪細胞に働き、余分な糖を脂肪として貯め込む作用があるため、大量に分泌されると肥満に繋がるということが、医学的に明らかにされているのです。

健康診断では見つかりにくい「食後過血糖」とは?

インスリンの働きが悪くなると、食後の血糖が高くなってしまい、正常な範囲に戻るのに時間がかかってしまいます。この状態を「食後過血糖」と言い、空腹時に採血する健康診断では見つけにくく、糖尿病予備軍と思って間違いありません。

40歳以上の日本人の5人に1人が「食後過血糖」と言われており、生活習慣を改善せずにこのまま放置すると糖尿病に進行してしまうため、食事管理には注意が必要なのです。

また、糖尿病へと進行しなくても、食後の血糖値が高いと、認知症や心血管疾患死亡リスクが上がるという報告もあるので、食事内容を見直すことが必要なのです。

食後の血糖値が高いと、病気の「リスク」が上がってしまう
食後の血糖値が高いと、病気の「リスク」が上がってしまう

「果物=太る」ではありません!

ダイエットには敵視されやすい、ごはんなどの穀物や果物には、糖質が多く含まれています。しかし、「糖質」と一括りにしても、その中には、ブドウ糖、果糖、砂糖(ショ糖)と、いろいろな種類の糖類が含まれております。果物には、果糖、ブドウ糖、砂糖(ショ糖)が混ざっていますが、果糖が多い食べ物ほど、食後血糖を上げにくいことがわかっています。果物は、その果糖の分量が多い食べ物。

糖質の中でも、果糖は、ブドウ糖や砂糖(ショ糖)よりも血糖値が上がりにくいのがわかります
糖質の中でも、果糖は、ブドウ糖や砂糖(ショ糖)よりも血糖値が上がりにくいのがわかります

日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017」では、肥満や中性脂肪の増加、2型糖尿病の発症リスクが上がるため、「生鮮食品での果糖の摂取」は推進する一方で、「果糖を含む加工食品の摂取」量は減らすべきとされています。

これは、果物などに含まれる糖質と違い、人工的につくられた「果糖ブドウ糖液糖」などが入ったスポーツドリンクなどの摂取を減らすことが望ましい、ということを意味しています。

しかし、一部の専門家の中には、果物は血糖値を上げてしまうため、「果物=太る」というような表現をしている方もいるのが事実です。果物を食べることが、太ることに直接結びついていることはありませんので、適したタイミングで、糖質の「質」を見極めて食べることが重要なのです。

食後のデザートは、スイーツではなく果物に!

肥満や生活習慣病のリスクは、食事の後に急激に血糖値が上がってしまう「食後過血糖」という状態が問題なのです。ですから、糖質を敵視するのではなく、糖質の中の血糖値を上げやすい、ブドウ糖や砂糖(ショ糖)の取り過ぎに注意すべきなのです。食後に起こる血糖値の急上昇を抑えるには、糖質の量ではなく、「質」に注目しましょう。特に果物の中でも、果糖が多い種類は血糖値を上げにくくしてくれる食品ですから、まさに食後のデザートにピッタリなのです!

おすすめの果物はキウイ!

身近な果物の代表として、キウイ、りんご、オレンジ、みかん、パインアップル、バナナを例に、果物の糖バランスと食物繊維の含有量を比較したグラフをご覧ください。

キウイ、りんご、オレンジ、みかん、パインアップル、バナナの糖質バランスの比較。
キウイ、りんご、オレンジ、みかん、パインアップル、バナナの糖質バランスの比較。
キウイ、りんご、オレンジ、みかん、パインアップル、バナナの食物繊維含有量の比較。
キウイ、りんご、オレンジ、みかん、パインアップル、バナナの食物繊維含有量の比較。
年齢が高くなるほど食後血糖が高いものの、20歳代より上昇した40歳代でも1時間値122mg /dl、全平均値115mg/dlと緩やかな上昇に留まった。つまりキウイの糖質構成と食物繊維の関係からと考えられる。
年齢が高くなるほど食後血糖が高いものの、20歳代より上昇した40歳代でも1時間値122mg /dl、全平均値115mg/dlと緩やかな上昇に留まった。つまりキウイの糖質構成と食物繊維の関係からと考えられる。

食後30分の血糖値は、果糖と食物繊維が多いほど上昇しにくく、砂糖(ショ糖)が多いほど上昇しやすいことがわかっています。具体的には、糖のバランスで果糖の多いキウイが食後血糖を抑えており、オレンジ、パイナップル、みかん、バナナなどに比べて、食物繊維の量も多く含まれているという特長があることから、果物の中でもキウイが、食後の血糖値上昇を抑制する比率が高いことがわかりました。

コンビニ食にキウイを追加すると、栄養バランスが30%以上増加します。
コンビニ食にキウイを追加すると、栄養バランスが30%以上増加します。

また、キウイは身近な果物の中でも、*栄養素充足率スコアが高く、購入したお弁当やコンビニ食などに追加するだけでも、栄養素が30%以上増加し、栄養バランスが改善したという結果も出ました。

*栄養充足率スコアは、重量100gに含まれる17種類の栄養素(たんぱく質、食物繊維、カルシウム、鉄、マグネシウム、カリウム、亜鉛、ビタミンC,B1,B2,ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビタミンA、ビタミンE)の、日本人の食事摂取基準(2015年版)における、1日あたりの摂取基準(30〜49歳女性での推奨量、目標量、目安量)に対する割合(%)を算出し、その平均値を取ったもの。充足率スコアの計算に使用した各栄養素の含有量は、ゼスプリ・グリーンキウイ、ゼスプリ・サンゴールドキウイはNew Zealand FOODfiles2014 Version01の値を、その他の果物は日本食品基準成分表2015年版(七訂)に収載されているキウイの栄養素含有量の数値を元に充足率スコアを計算すると、緑肉種は10.2、黄肉種は15.1となる。
豊富な栄養素を含んだキウイフルーツ。
豊富な栄養素を含んだキウイフルーツ。

日本人はもっと積極的に果物を採るべき!

国際連合食糧農業機関 FAOSTAT「Food supply quantity(g/capita/day)」より作図。
国際連合食糧農業機関 FAOSTAT「Food supply quantity(g/capita/day)」より作図。

グラフを見ていただくとわかる通り、イタリア、韓国、ニュージーランド、アメリカと比べても、日本は年々、果物の摂取量が減少傾向にあります。果物=太るということが、健康的ではないイメージを持ってしまっていることが関係しているのではないか?と推測されています。

BMJ Open 4: e005497, 2014 より引用
BMJ Open 4: e005497, 2014 より引用

こちらのグラフを見ていただくとわかる通り、実は、果物の摂取量が多いほど、糖尿病発症のリスクが減るという結果も出ています。これは、果物の量が増えることで、果糖ブドウ液糖や、ブドウ糖、砂糖(ショ糖)が多く含まれるものを口にする機会が減ることを表しているのではないでしょうか。

キウイは食後のデザートにピッタリの果物です!
キウイは食後のデザートにピッタリの果物です!

どんなに健康な方でも、30歳を過ぎた頃から徐々に血糖値は上がりやすくなる傾向にあります。美容や健康のために食後のデザートを諦めていたという方は、ぜひ果物をおいしくいただいて、血糖値の急激な上昇を防いでみませんか? 特に心配な方は、ぜひキウイフルーツを食べることを習慣にしてみてください。

ただし、あくまでバランスのよい食事を摂った後で、果物を摂取すると血糖値の急上昇を抑制することができるというお話ですので、極端に果物だけを食べて血糖値の上昇を抑えようとは思わないようにすることも大切です。

足立香代子さん
臨床栄養実践協会 理事長
(あだち かよこ)一般社団法人臨床栄養実践協会 理事長、せんぽ東京高輪病院 名誉栄養管理室長、管理栄養士。1968年中京短期大学家政科食物栄養専攻卒。1985年より、せんぽ東京高輪病院(現・東京高輪病院)に勤務。長年の臨床経験に基づき、患者の個性、症状にあわせた栄養指導に取り組む。2014年より現職。日本臨床栄養学会理事。日本肥満治療学会理事。
一般社団法人臨床栄養実践協会
この記事の執筆者
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