初対面の相手に対し、「彼女は信頼できそう」「きちんと仕事をしてくれそう」などと、一瞬で印象を判断した経験はありませんか? それは、自分と初めて顔を合わせる取引先やお客様側も、同じこと。私たちは、出会った瞬間に相手のイメージをつくり上げ、良し悪しの判断をしています。

大きな商談や交渉といった大事なビジネスシーンでは、出会った瞬間に、相手の信頼を勝ち取らなければなりませんよね。

そこで参考にしたいのが、「短い選挙期間に」「初対面の人々から」「一瞬で圧倒的な好印象」を獲得し、勝ちを掴まなければならない「政治家」の魅せ方。株式会社InStyle代表取締役の鈴鹿久美子さんは、国会議員秘書として、多くの人気政治家を間近で研究し、現在は立候補者を戦略的に当選に導く「魅せ方のプロ」として、活躍しています。

今回、そんな鈴鹿さんから、相手を瞬時に魅了するテクニックを5つ教えていただきました。以下のような一流の魅せ方を身につけることで、どんな相手からも好感をもたれるようになるでしょう。

■1:握手は「自分から先に」手を差し出す

一流の人は握手にも全力を注ぐ
一流の人は握手にも全力を注ぐ

選挙では、立候補者は有権者と多くの握手をします。握手をするのは、相手を魅了するため、そして安心して自分を受け入れてもらい、ファンになってもらうためだといいます。

「握手は勝利のツールとして、直接的で大きな効果を生みます」と鈴鹿さん。選挙だけでなく、握手はビジネスシーンにおいても武器になるとのこと。

「握手は手を差し出した者の勝ちです。手を先に出された場合にも、握手したときに自分の方に少し引くことがポイントになります。手を握ったときに弱々しくてはダメです。手をキュッと握り、少し自分の方に引くことで、相手はビジネスの中に引き込まれた心理メッセージを受け取ります。そして握手の最初と最後には、相手の目を捉えることも忘れないようにしましょう」とアドバイスします。

また握手をする「爪」にも注意するべきだといいます。華やかにデコレーションされたネイルは、ビジネスシーンではマイナスに影響するとのこと。

「デコラティブな爪は、そこに時間とお金とエネルギーを使っていると思われます。それはビジネスのエネルギーが分散しているように見えて、弱みになります。もちろん爪を綺麗にしていることは大切です。そのため、政治家の方には、マネキュアを塗るのではなく、爪自体を磨くことを勧めています」(鈴鹿さん)

海外では、爪のお手入れは常識。爪を清潔にすることで、握手や名刺交換をする際に好印象を抱かれるでしょう。爪はピカピカに磨く、またはネイルをするにしても、シンプルにワンカラーネイルにしたいですね。

■2:「3種類の笑顔」を身につける

一流の人は笑顔を使い分ける
一流の人は笑顔を使い分ける

ビジネスシーンでは、初対面の人とのコミュニケーションは、名刺交換からスタートしますよね。名刺を交換するとき、相手の名刺を見るために、顔を下に向けていませんか?

特に商談やプレゼンテーションなどの勝ちたい場面では、名刺に目を向けず、相手の目を見続けるべきだといいます。

「相手は絶対に名刺に目を落とすので、受け取った名刺に視線を落とさず、相手が顔を上げるまで、目を見続けてください。そうすると相手が顔を上げた時に、目を見られているのがわかります。目を見られた側は、『自分はずっと見られていた』『この人に従おう』となるのです」(鈴鹿さん)

そこで好印象を持たれるためには、表情も大切です。相手が顔を上げたときには、笑顔で待ち受けましょう。

「笑顔は自分を助ける武器になります。このときにはこの笑顔と決めておきましょう」と鈴鹿さん。「口元からのぞく歯の本数」で、笑顔を3種類に分けることができるといいます。

笑顔の口元からのぞく歯の本数によって、与える印象が異なる

0本:リーダーシップ
4本:信頼
8本:親しみやすさ

政治家の「党首」のポスターは、口を結んでいるものが多いそうです。これは、リーダーとしての意思と決意を表現するためだとか。

逆に新人候補者は、警戒心を取り除く、親しみやすさを得るために8本の歯を見せて、有権者との距離を縮めるといいます。つまり、相手にどう思われたいかによって、笑顔を使い分けるのです。

「日本人は笑顔が下手なので、トレーニングが大切」だと鈴鹿さん。鏡を見ながら、ぜひ3種類の笑顔を練習してみましょう。

■3:名前をスマートに聞く

一流の人は名前の聞き方も工夫する
一流の人は名前の聞き方も工夫する

仕事相手の名前を思い出せないとき、ありませんか? 政治家にとっても相手の名前を覚えるのはとても大切ですが、会う人数が多すぎて、なかなか覚えられないそうです。うっかり相手の名前を忘れた時に使える、スマートな聞き方があります。

それが、名前をストレートに聞いた後に、名字は知っているので、下の名前を教えて欲しいと聞く方法。鈴鹿さん自身、橋本龍太郎元首相からこのように聞かれたそうです。

「君、名前は何というんだったかな?」
「鈴鹿と申します」
「それは知っているよ。下の名前だよ」
「久美子と申します」
「そうだった、久美子さん。久美子と言う名前の女性はよく働くしっかり者なんだ。僕の奥さんもね、久美子と言うんだよ」

下の名前を聞くメリットは、親しみやすさが倍増すること。そして下の名前を聞いた後に、その名前の感想をつけることで、自分の記憶に残りやすくなるといいます。

ビジネスでもプライベートでも使えるテクニックになるため、実践してみましょう。

■4:失敗を信頼につなげる

一流の人は失敗を最大のチャンスにする
一流の人は失敗を最大のチャンスにする

どんな優秀な人でも、失敗することがあるでしょう。失敗したときの対応次第で、信頼を勝ち取るチャンスに変わるといいます。

鈴鹿さん曰く、「失敗したときに『失敗しました。申しわけありません』と、まず最初に言えること。例え間違ったことを言った、やり方を知らなかったとしてもミスをしたと思ったら、謝りに行く。信頼はここで積み上がるのです」とのこと。

自分の失敗を素直に認め、謝罪することは、なかなか難しいもの。しかし失敗は信頼を得るチャンスなのです。そして失敗をした後は、なぜ失敗したかを冷静に分析することが重要。

「一流の方は、失敗を失敗のままで終わらせません。失敗したことを徹底的に検証するのです。ただの『失敗』を自分の力になる『経験』に昇格させるのです」(鈴鹿さん)

また部下が失敗したときには、叱ってあげることが大切とのこと。鈴鹿さんは「これを言ったら自分が嫌われるかもしれないなどと考えている時点で、ぬるい!『あなたが今したことはダメだよね』と、きちんと指摘しましょう。部下の失敗をチャンスに変えてあげることも、上司の大事な仕事です。仕事に失礼なことをしてはなりません」と鈴鹿さん。

自分の失敗も、周りの失敗も、自分の成長につなげていきましょう。

■5:仕事に対する覚悟を見せる

一流の人には覚悟がある
一流の人には覚悟がある

働く女性にとって、仕事を腰掛けでやっていると思われたくはありませんよね。

「この仕事を成し遂げるという覚悟を持っていなければ、信頼は勝ち取れません。女っぽさや、女らしさは、ビジネスの場では削ります」

鈴鹿さんが政策秘書をしていたとき、会議に行くと、周りは男性がほとんど。男性の中にいても浮きたたないよう、服装にも気をつけたといいます。

あなたは仕事場で揺れるアクセサリーや、大きな指輪を身につけていませんか?

鈴鹿さんは、「揺れるアクセサリーはビジネスの場ではつけません。アクセサリーは、そこに視線を惹きたいから身につけるのです。耳元で揺れるピアス、胸元で揺れる長いネックレスは、セックスアピールにつながることもあります」と指摘します。

ビジネスシーンで身につけるアクセサリーは、ピタッと止まるものを選びましょう。ピアスやイヤリングは、ビジネスの場ではなくてもよいとのこと。ただし、シャツやカットソーを着るときには、ネックレスが必須になるそうです。

「露出している肌は、分断するのがマナーです。シャツやカットソー着用時の鉄則は、40cmのネックレスを着けて、肌を分散すること。これで、ビジネスの場では不要な色気が消えます」とアドバイスします。

仕事に対する覚悟は、見た目からも伝わるもの。仕事中に女子力や色気を示す必要はありません。仕事モードとプライベートモードは分け、揺れるアクセサリーはプライベートで身につけましょう。

自分が周りからどう見られているのかは、普段あまり意識することがないかもしれません。しかしビジネスシーンでも、電車に乗っているときでも、買い物をしているときでも、常に私たちは誰かに見られています。一流の人を参考にして、自分も相手を魅了していきましょう。

鈴鹿久美子さん
政治家のためのブランディング戦略家/魅せ方コンサルタント
(すずか くみこ)政策秘書として国会議員に仕え、洗濯から政策まで多岐にわたる議員秘書業務と、大小様々な選挙実務を経験。2012年、解散総選挙で離職せざるを得ない秘書の受け皿をつくりたいと政策秘書を辞職。議員秘書専門人材紹介会社「議員秘書ドットコム」の運営を開始。現在は、議員秘書の人材紹介に加え、議員秘書養成、政治家のコンサルティングの他、立候補者を戦略的に当選に導く「魅せ方のプロ」として全国で活躍。株式会社InStyle代表取締役。
『会う人すべてがあなたのファンになる 一流の魅せ方』鈴鹿久美子・著 大和書房刊
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
椎名恵麻
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