クルマの存在意義は移動の道具だけではない。自己表現のツールであり、また人と人のつながりにも重要な役割を担う。そして、そこから自然発生的に文化が生まれる。近年、レクサスはさまざまな分野でモノ作りや各種の表現活動を行っている。一見、クルマ作りとは無関係に見えるが、次世代に向けた新しい価値観の創造という点では何らブレはない。そして、提案をし続けることに意義がある。そうしたレクサスの文化創造活動のひとつに、ミラノ・デザインウィークがある。ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏が、日本ではあまり知られていないレクサスのもうひとつの「顔」をリポートする。

ミラノ・デザインウィーク2018

最新のテクノロジーで理想の世界を創造!

エントランスを入ると、クルマの走行音を模したような音ではっとさせられるサウンドデバイスが設置されている。

世界でもっとも大きなデザインのお祭り、ミラノ・デザインウィーク2018が、4月17日から22日にかけて開催された。

ミラノは美食や服飾の街として知られているけれど、もうひとつ工業がさかんで、デザインは1950年代からこの都市の強みのひとつなのだ。

サローネと通称される家具の見本市から始まったが、昨今はフオリ・サローネと呼ばれ市内で展開されるインスタレーション(空間を使った展示)が話題を呼ぶことが多い。

なかでもミラノ・デザインウィークといえばLEXUSの存在を抜きにしては語れない。2005年に初参加していらい、凝った内容と大がかりな仕掛けで来訪者を楽しませてくれている。

約1万2000本の糸がひとつの光源なのに1本たりとて影にならず輝く、市川創太氏のインスタレーション(下には315本の脚がやはり1本も影にならないストゥール)。

どこでインスタレーションを行うか。それもLEXUSにまつわる大きな興味である。2018年、LEXUSが選んだのはレオナルド・ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館内「カヴァッレリッツェ」。

ここは飛行機や蒸気機関車、それに潜水艦にいたるまで、イタリアの誇る産業技術の博物館である。その隣にLEXUSはさらに最新のテクノロジーを使って世界に類のない空間を創造した。

2018年のためにLEXUSが選んだテーマは「「LIMITLESS CO-EXISTENCE」。リミットレス・コエグジステンスとは、「完全なる共存の状態」のこととLEXUSではする。

今回のカヴァリレッツェにおけるメインインスタレーションは、スペースデザイナーの市川創太氏による、天井から吊された約1万2000本の糸を、1本たりとて他の影になることなくひとつの光源で照らすというもの。

「それぞれが自分の世界の中心であり続けながら「共存(CO-exist)」できるという理想の世界をデザインの力により具現化しています」

Lexus Internationalではこの作品の意図を上記のように解説している。

「アルゴリズムの計算は大変ですが、楽しい」。市川創太氏がそう語ってくれたように、出来映えはみごとだ。

実際に広いスペースで糸がきらきらと輝くさまは星座のなかにいるようで、息をのむ美しさだった。 

若手クリエイターの育成にも貢献!

グランプリを獲得したExtrapolation Factoryによる「Testing Hypotheticals」。
Extrapolation Factoryのエリオット・P・モンゴメリー(左から3人目)とLexus Internationalの澤 良宏プレジデントと、メンター(完成に導く係)を務めたストゥディオ・フォルマファンタズマの2人。

同じタイミングで、「LEXUS DESIGN AWARD 2018」のグランプリ授賞式も開催された。

2018年で第6回を数えるこのアワードは「次世代を担うクリエイターを育成・支援する国際デザインコンペティション」として人気が高まっている。

今年度のテーマは「CO-(共)」といい、68カ国から1319点におよぶ応募があったそうだ。

4月16日に発表されたグランプリは、米国人とドイツ人からなるグループユニットExtrapolation Factoryに。

イクトラポレーションという統計用語をユニット名にした彼らが「CO-」を主題として提案したのは、「Testing Hypotheticals」。仮説を試すという意味だろう。

「ALTATTO」というフードコーディネーター3人組が「他の風味と調和しながら一体化する力」に注目して、ベルガモットの風味を与えたロリポップは、味覚と食感に訴えかけた。

実際には、ニューヨーク・クイーンズの住人を対象としたワークショップを行い、自分たちの未来をよりよく出来る提案を探ってもらった。

おもしろいのは表現方法だ。たとえばクイーンズの地下鉄で心地よい香りの送風機があればいいという提案では、ファンの裏側に植物の葉が挿してある。

日用品のみを使っての提案なので、ひと目見ただけでは意図がわかりにくいものが少なくない。

このように説明を聞きながら見ると、しかし、「ああ、たしかに植物の香りはなごむなあ」など、ユーモラスなプレゼンテーションの背後に説得力が感じられる。

「昨今では、プロダクトそのものよりも、デザインやその哲学といったものが大きな役割を果たすようになって来ました」

審査員のひとりであるデイビッド・アジャイ氏の授章時における評である。

「デザインを通して若いクリエイターとよりよい社会づくりに貢献するためのもの」と「LEXUS DESIGN AWARD 2018」の意義を語ってくれたのはLexus Internationalの澤良宏プレジデントだ。

ミラノでのLEXUSは、たしかに、デザインを通して未来の可能性を垣間見せてくれた。 

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。