連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、クリエイティブディレクターであり、ビジュアルストーリーテラーのケジ・バンさんにインタビュー! 

スチール撮影から映像制作に転身し、“ブランドストーリーテリングの新たな形”を提案するプロジェクトに携わっているケジさん。新分野を切り拓くケジさんに、詳しくお話しをうかがいました。

ケジ・バンさん
クリエイティブディレクター、ビジュアルストーリーテラー
(Kezi Ban)大学在学中に『ナショナルジオグラフィック・トラベラー』のフォトインターンに。’06年、同誌のフォトエディターとなり、雑誌休刊を機に独立。’14年から映像制作をスタートし、商業的プロジェクトにも関わる。現在は “ロレアル” が立ち上げた新しいインハウスクリエイティブエージェンシー「L’Agency」に参加し、ディレクターとして活躍。

【New York】スチール撮影から映像制作に転身。愛とユーモアで道を切り拓くクリエイター

ケジ・バンさん
クリエイティブディレクター、ビジュアルストーリーテラーのケジ・バンさん

「映像こそが未来だ。学びなさい」

メンターと慕う人物がそう語ってくれたのが、’14年のこと。『ナショナルジオグラフィック・トラベラー』のフォトエディターを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動してきたケジさんのキャリアは、そこから一変。ただの写真家ではなく、撮影、監督、編集まで全工程に関わることで、表現の幅から自由度まで、加速度的に増していった。

「今はコンテンツ&クリエイティブディレクターとして、単なる宣伝とは一線を画した “ブランドストーリーテリングの新たな形” を提案するプロジェクトに携わっています。例えばビデ会社と組んだときは、トイレという一見地味な場所に、ベートーヴェンの交響曲第5番を合わせ、ドラマティックな水のインスタレーションへと昇華。シネマのような映像に仕立てることで美しく、でもどこかユーモラスなキャンペーンが完成したんです」

新分野を切り拓く仕事だからこそ、これまで失敗がなかったわけでは、もちろんない。

「数年前、息子が生まれた直後に、拡張現実のゲーム事業を立ち上げました。今思えば “新生児+スタートアップ” 自体が無謀だったかもしれません(笑)。未経験ジャンルだったこともあり、2年もの時間と多額の資金を投じた末にクローズ。恥ずかしさや怒りに打ちのめされた日々を経て、少しずつ失敗を受け入れ、学びへと変えてきました。そこで得たのは『リスクや失敗は、成長の一部』という教訓。あの経験がレジリエンスを育んだのです」

今後はAI動画や気候変動案件に取り組み、新メディアと人間のつながりも探究する。

「私は、女性が世界をリードしていたら、今とは違う素晴らしい社会になっていたと想像します。なぜなら最後に勝利するのは力ではなく、愛と共感だから。今の世の中が男性によってつくられた“ゲーム”だとしても、女性ならばその“ルール”を塗り替えることができる。そう信じて、喜びと笑いに満ちた日々を大切にしていきます」

◇ケジ・バンさんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
今日も健康でいることに感謝する。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
場を明るくするという意味で「磁石のような人だ」と言われたのが印象的。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
ハイキングか庭園散策をして、息子とアイスクリームを食べ、美術館に行き、コメディショーで締めくくれたら最高!
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
気候変動問題。完全分解可能なプラスチック開発が日本で進んでいるという記事を読み、感銘を受けました。
Q.自分を動物に例えると?
オスが体内で赤ちゃんを育てるタツノオトシゴ。お互いのホルモンを同調させるため、毎朝オスとメスがダンスをするのだとか。人間にもこんな習慣があったら素敵だと思いませんか?

PHOTO :
Masahiko Noguchi
EDIT&WRITING :
本庄真穂、喜多容子・木村 晶(Precious)
取材 :
Junko Takaku