VW・ゴルフシリーズのなかでも、別格の速さで名を馳せるのが、「GTI」モデル。ひとまわり小さなポロシリーズにも設定されていて、大きさやデザインで存在をひけらかすのを良しとしない紳士には、ぴったりの秘密道具だ。モータリングライターの金子浩久氏が日本導入に先駆け、最新型を海外でテストした。その模様をお届けしよう。

アクセントカラーとモダンな素材で印象が一変!

ポロGTIとしては4世代目。赤いラインの入ったハニカムグリル、専用デザインのフロントバンパーなどが標準モデルとの違いだが、カーマニアでなければ、気がつかないレベル。そして、それこそが魅力のひとつなのだ。
ポロGTIとしては4世代目。赤いラインの入ったハニカムグリル、専用デザインのフロントバンパーなどが標準モデルとの違いだが、カーマニアでなければ、気がつかないレベル。そして、それこそが魅力のひとつなのだ。

 先ごろフルモデルチェンジしたフォルクスワーゲン・ポロは完成度がとても高かった。

 シットリとした乗り心地、静かな車内、1.0リッター3気筒とは思えないほどチカラを出しているエンジン、臨機応変に賢く変速するツインクラッチタイプの7速オートマチックトランスミッション。ボディサイズが大きくなっただけでなく、車内の有効スペースも広がった。

 完成度がとても高く、もう「コンパクトカー」とは呼べないほど立派な1台に成長していた。

 そのポロのスポーティ版が「ポロGTI」。スペイン・マラガ郊外の一般道とアスカリ・サーキットで運転してきた。

 新型ポロGTIに乗り込んで最初に眼を惹くのは、ダッシュボードやセンターコンソール、ドアハンドルの周辺などに赤いパネルが用いられていることだ。

 そのパネルも艶消しのマット調のもので、ちょうどスマートフォンやPCなどのボディに用いられるものに似ている。クルマで使われているのを見るのは初めてだ。これが悪目立ちしておらず、非常に雰囲気を明るくしていて、とても良く似合っている。

 ノーマルのポロのインテリアのちょっと冷たく野暮ったいデザインを、これが見事に救っている。同じポロシリーズに属しているとは思えないほど、印象を変えるのに成功している。ぜひ、赤以外の他の色でも試みて欲しい。

インテリアは、より強めの印象。ただし金子氏の記述にある通り、色と質感のバランスが絶妙で、ポロGTIの新たな個性として浸透しそうだ。
インテリアは、より強めの印象。ただし金子氏の記述にある通り、色と質感のバランスが絶妙で、ポロGTIの新たな個性として浸透しそうだ。

ゴルフでも大きいという紳士におすすめ!

「ゴルフ」「ポロ」の各GTIモデルに共通の、チェック柄シート。昔と比べてモダンになっているのがわかる。
「ゴルフ」「ポロ」の各GTIモデルに共通の、チェック柄シート。昔と比べてモダンになっているのがわかる。

 日本仕様のポロのエンジンは最高出力95馬力を発生する1.0リッター3気筒ターボだが、ポロGTIには200馬力の2.0リッター4気筒ターボが搭載される。倍の排気量と倍近い最高出力を発生しているエンジンなので、速い。

 ただ速いだけでなく、あまりエンジンを回さなくても十分に加速するので、走り方と気持ちに余裕が生じてくるから、余計に「高級感」が増してくる。

 アスカリ・サーキットで印象的だったのは、「XDS」。XDSは電子制御タイプのディファレンシャルロックで、コーナリングの際にイン側タイヤのブレーキを瞬間的に掛けることによって、パワフルな前輪駆動車に特有の中高速コーナリングでのアンダーステアを解消するものだ。

 フォルクスワーゲンでは、XDSは先代ゴルフGTIから装着(現行ゴルフでは「XDSプラス」に進化)されていて、ポロGTIにも先代から装備されている。新型ポロGTIでも、その効き方はスムーズで、ニュートラルなコーナリングを実現している。先代ゴルフGTIを超えているのではないか。

 一般道では快適に走り、サーキットではゴルフGTIと変わらぬペースで走ってもネを上げることはなかった。

 速さと余裕とスポーティドライビングでポロGTIの完成度は完璧に近かった。インテリアも魅力を高めるのに一役買っている。ノーマルのゴルフやゴルフGTIを大きくなり過ぎたと嘆いている人には、ぜひ、このポロGTIを勧めたい。

この記事の執筆者
1961年東京生まれ。新車の試乗のみならず、一台のクルマに乗り続けることで得られる心の豊かさ、旅を共にすることの素晴らしさを情感溢れる文章で伝える。ファッションへの造詣も深い。主な著書に「ユーラシア横断1万5000km 練馬ナンバーで目指した西の果て」、「10年10万kmストーリー」などがある。
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