日本人にとって昔からそばにあり、どこか懐かしさを感じる和菓子・たい焼き。気軽に買えて食べ歩きしやすいので、ちょっとしたおやつにも最適ですよね。最近ではチョコミント味や生地がタピオカやクロワッサンだったりするもの、口から生クリームやフルーツが飛び出ているたい焼きパフェなども人気で、味も種類もどんどん進化しています。

普段、何気なく駅前やデパ地下で買って食べていませんか? それだけではもったいない! 実はたい焼きには、まだまだおいしくなる可能性があるのです!

今回は、たい焼きの魅力を世間に伝え続ける和スイーツ評論家・イワイサトシさんに、日本人が愛してやまないたい焼きを最高においしく食べる条件を伺いました。まずは、たい焼きの種類から確認していきましょう。

意外と知られていない豊富なたい焼きの種類

■焼き型で天然モノと養殖モノを区別!

たい焼きとひと口に言っても、いくつかの種類があるのをご存知でしょうか。まず焼き型は、一丁焼きと連式の2種類。

「1匹ずつ焼く『一丁焼き(世間でいう天然モノ)』と鉄板に数匹分の焼き型を配置した『連式(世間でいう養殖モノ)』の違いがあります。断面を見れば違いは歴然で、一丁焼きは平たく、連式は厚い。例えるなら、一丁焼きは袋で、連式は箱であるといえます」(イワイさん)

一丁焼きの型(東向島 浪花家)
連式の型(歌舞伎座 めでたい焼)

この焼き型については、オーダーメイドか既製品かの違いもあるそう。

「伝統的な鯛の姿のままで店の独自性を出す店もあれば、一方で東京駅地下にある『たい焼き鉄次』は丸い円形をしているし、浅草『たい焼 勝』は南部鉄器製の少し小振りな焼き型を使用しています。また近年では、ソフトクリームのコーンカップを模したような『鯛パフェ』なども誕生しています。

たい焼き銀次

ちなみに『たい焼き鉄次』は焼き型が『一丁焼き』でありながら34匹分を『連式』の様に焼き続けることができる世にも珍しい『全自動たい焼き』でもあります」(イワイさん)

■個性的な連式の焼き型が次々に登場!

さらに、連式の中でも生地形成において個性の違いも出るそう。鯛の周囲に羽根のような生地が付いた羽根付きのものや、部分的に生地を増すものもあると言います。

「お馴染みの鯛型の周囲に生地を纏わせた『たいやき神田達磨』の『羽根付き』や、たい焼き1匹分相当の分厚い皮であんこをサンドした『銀座たい焼き 櫻家』の『厚焼き』という生地形成で個性を発揮するたい焼きもあります。

たいやき神田達磨 神田小川町本店

さらに『羽根付き』でも全体を覆ったたい焼きもあれば、先頃、砂町銀座商店街に移転された『水天宮たいあん』のように部分的に生地が増したたい焼きもあるし、『厚焼き』ならあんこが丸見えのオープンサンドのようなたい焼きもあれば、板橋区役所前『けんぞう 仲宿店』のようにあんこを完全密封した箱型のたい焼きもあります」(イワイさん)

水天宮たいあん
けんぞう 仲宿店

それ以外にも、焼き型には使用年月、使用環境、焼き手のクセなどが次々に加味され、チェーン店でも焼き手(たい焼きを焼く人)によって焼き型の摩耗の仕方が代わったり、経年劣化で鱗の角が丸まったりと、独自の変化を遂げるそう。

その変化の仕方でたい焼きは個性を手に入れるため、イワイさんはそういった意味合いも込めて「1匹たりとも同じたい焼きナシ」と表現しています。たい焼き、奥が深いですね。

最高においしいたい焼きを食べるための7つの条件

たい焼きといっても本当に種類がさまざまで、お店によって個性が違うことはわかりました。では、お店が違ったとしても、すべてのたい焼きをさらにおいしく食べる方法はあるのでしょうか? イワイさん曰く、たい焼きをおいしく食べるには以下のような条件があるそうです。

■1:あんこや生地が自家製or製餡所に発注しているお店で買う

自家製餡の表示

「この店のたい焼きはおいしそうだ」という判断の基準があれば知りたいですよね。イワイさんは、「判断基準の第一歩として『あんこや皮の生地が自家製もしくは製餡所へ発注した独自製品であること』は大きな目安になります」と語ります。

「つくり手の意気込みや熱意は、たい焼きの味や成り立ちに大いに反映されて明確な差を生み出し、その店の個性になります。自家製か否かは店頭表示もしくは公式サイトやブログ・各種SNS、もしくはネット上の口コミで確認する事ができますので、事前に調べておくといいと思います」(イワイさん)

こういった自家製のあんこや皮を使ったたい焼きを提供している店で、イワイさんのおすすめをいくつか挙げていただきました。

「たい焼きのあんこは始祖である麻布十番『浪花家総本店』が基準になると思います。小豆のアクの強く塩気が効いて、小豆の皮がシャキシャキと心地良い歯応えが魅力です。また吉祥寺『天音』の黒糖が香る個性派あんこも素晴らしいです。そして高幡不動『たい焼き橘屋』のササゲの入ったまろやかなあんこも捨て難い!

浪花家総本店

片やたい焼きの皮ですが、四ツ谷『たいやき わかば』のパリッと薄いけれどしっかり歯応えのある皮。東松原『たこ&たい』の豆乳が入ったモッチリした食感の皮。恵比寿『たいやきひいらぎ』の30分かけて焼き上げるパリパリの皮など。さらに『鯛屋 たけ丸本舗』や先ほど名前を挙げた『けんぞう 仲宿店』の独自配合の粉によるオリジナルの皮等々、おすすめしたい各たい焼き屋さん独自の味わいは枚挙に暇がありません」(イワイさん)

■2:行列ができているお店で買う

行列が出来ている店

さらにイワイさんは、行列の有無も重要なポイントだと言います。

「行列が出来ている店もわかりやすい基準になります。これの意味するところは、有名店もしくは人気店でおいしいと世間で評判になっているということよりも、それによって原材料の消費速度が速くなって、自ずと素材自体の鮮度が高いことの方が重要です。すなわち、素材の風味がつくりたてもしくはそれに近い状態の、新鮮なあんこや生地で焼き上げたたい焼きを食べることができるということです」(イワイさん)

たい焼きは駅前やデパ地下で買えますが、よりおいしいものを求めるならやはり人気店や有名店がベストということですね。

■3:一丁焼きでつくられているお店で買う

たい焼きには焼き型によって「一丁焼き」と「連式」があると説明しましたが、1匹ずつ焼く一丁焼きのお店を選ぶというのもアリなのだとか。イワイさん曰く、「一丁焼きの、皮とあんこが程よく焦げた芳ばしい香りは、食欲をより一層刺激します」とのこと。

■4:一丁焼きなら皮からあんこが少しはみ出て焦げているものを選ぶ

また、一丁焼きと連式、それぞれでとくにおいしいものを選ぶ基準もあるようです。

「一丁焼きなら、皮からあんこが少しはみ出てそれが焦げたたい焼き。連式ならガス式の焼き台でつくられたたい焼き。今は電気式が増えてコチラのほうが焼き上がりも美しいですが、ガス式で出来る焼きムラもそれはそれで美しく、何より郷愁を呼び起こします。

それは羽根付きのたい焼きも同様です。

加えて羽根付きの場合は、肝心の羽根部分もしっかり火が通っていることが重要です。薄く焼き上がった生地は本体部分の皮とは異なり、すっかり水気を無くしてサクサクと軽やかな歯応えを実現しています。その場合は本体の皮より羽根部分の色が濃く色付いているので判断の基準になります。

とはいえ、これらは初回購入時では判断できませんので、すべては2度目以降の判断基準となりますね」(イワイさん)

もし注文時に選べそうだったら、一丁焼きなら皮からあんこが少しはみ出て焦げたもの、連式ならガス式の焼き台でつくられたものを頼みましょう。

■5:購入後はすぐ箱や袋を開けて蒸気を逃がす

買ったあと、焼きたてであればアツアツのたい焼きをハフハフ言いながらそのままパクッと食べるのではないでしょうか。ですが、イワイさんによると、まずは袋の口を開けて蒸気を逃がすのがいいそうです。

「複数個を購入した場合、箱入りならば急ぎ蓋を開けて蒸気を逃がし、たい焼き同士に空間を与える。袋入り及び包装されているならすぐに封を開け、あとは同様です。

数を問わずたい焼きを購入する際には包装されますが、そのときたい焼きから放出する蒸気が袋の内部に溜まり水滴になって、せっかくパリパリとした焼きたての皮をふやけさせてしまいます。

なので持ち帰る場合は無論、すぐ食べる場合でも蒸気による水浸しを防ぐため包装を解放して湧き出る蒸気を外へ逃したいのです。なのでたい焼きを買いに行くならば、口の大きなバッグを持っていくのがいいでしょう」(イワイさん)

おいしいたい焼きを食べたいなら、ぜひふやけさせないようにしましょう。

■6:お店から渡されたときの状態のままで食べる

頭から食べる派、しっぽから食べる派など人によってこだわりがあるかもしれません。どう食べるのが正解なのか? 実は、お店によって違うそうです。

「一匹買ったなら、たい焼き屋さんで渡されたときの状態で、むやみやたらにいじくり回さず在るがままに食べる。もしかしたらその渡し方には店側の思惑があるかもしれないので。というのも、店によってさまざまな仕掛けをしている場合があるんです。お店の指示に従って食べることで得られる驚きの体験もあります」(イワイさん)

お店によって、渡したときに頭が上であれば、頭から食べるのが一番おいしいと店主が考えているという場合もあるんですね。ただし、「食べてみたけれどその渡し方に別段意図がないとわかったら、個人の自由に食べてもらってかまいません」とのことです。

■7:甘酒と一緒に食べる

最後は、飲み物。たい焼きと一緒に飲むドリンクとして、お茶や牛乳などはよくあるかと思いますが、イワイさんのオススメは甘酒だそうです。

「たい焼きのお供には、緑茶やほうじ茶はもちろん、米麹で作られた無加藤の甘酒もおすすめです。和菓子の2大構成要素は豆と米であり、故にあんこと米麹の甘酒は必然的に相性が良いと、ひとりのあんこ好きとして日々実感しております。

なので酒粕で作る甘酒は除外されます。加えて米麹の甘酒は無加糖の自然な甘さなので、たい焼き屋さん自慢のあんこが醸し出す甘さを邪魔しない上に小豆の風味まで高めてくれる、いわば『たい焼きbooster(ブースター)』と呼べる存在と思っております」(イワイさん)

まずは米麹の甘酒を買ってから、たい焼きを買いに行くのがよさそうですね。

時間が経ったたい焼きをおいしく食べる3つの方法

できたてのたい焼きを食べるのが一番ですが、なかなか手に入らないこともしばしば。その場合、どうすればおいしく食べられるのでしょうか?

■1:常温になるまで待ってから食べる

イワイさんは、常温たい焼きがオススメなのだそうです。

「個人的には購入した日にだけできる、常温たい焼きをおすすめします。購入後にあえて常温、いわゆる人肌くらいになるまで待ってから食べる。あんこも皮も水分が抜け切ることなくシットリしていてやわらかいという、 焼和菓子のたい焼きを生和菓子的な食感で味わえる、その日以降では巡り合えない食べ方です」(イワイさん)

■2:冷凍保存したたい焼きはオーブンで両面焼いてレンジで加熱してから食べる

また、たくさん買ってしまってすぐには食べられないときは、冷凍保存することになりますよね。その場合の最適な保存方法と、冷凍したたい焼きを食べるときにまた買いたてのようなおいしさを味わえる方法はあるのでしょうか?

「1週間程度なら個別でラップに包んで冷蔵保存で。長期になる場合は密閉できる袋にひとつずつ入れて空気を抜き冷凍保存を。再加熱は常温に戻したたい焼きをオーブンで両面3~5分ずつ焼いて、シメに電子レンジで30秒加熱するのがおすすめです」(イワイさん)

■3:食事系ならカレー味のたい焼きを食べる

食事系たい焼き

あんこだけでなく、カスタードやチョコなど、あんこ以外のものが入っているたい焼きも多いですよね。あんこ以外にたい焼きに意外と合うと思ったものを教えていただきました。

「あんこ以外となると、ピザやお好み焼き等をアレンジした食事系たい焼きがありますが、たい焼きの皮にはカレーが良く合うと思います。現に複数のたい焼き屋さんで『キーマカレーたい焼き』等を提供しています。そんな中でも伊豆大島にある島京梵天の『酵素玄米トマトリゾットたい焼き』は他の食事系たい焼きの中でも類を見ない異質な存在感を放っていますね」(イワイさん)

お昼どきを目指して、食事系たい焼きを狙いに行ってもいいかもしれません。カレーのたい焼きを見かけたら、ぜひ試してみてください。シメのスイーツとしてあんこのたい焼き、という合わせ技も可能です!

たい焼きは可能性の宝庫! 今まで、たい焼きにこんなにも個性の違いがあることも知らなかった方が多いのではないでしょうか。また、いただいたたい焼きでもおいしく食べる方法があることがわかりましたね。これからたい焼きを食べるときは、今回ご紹介した条件を思い出してみてください。それだけでも、たい焼きの奥深さに浸れるはずですよ!

イワイサトシさん
和スイーツ評論家
(いわい さとし)これまでに3700匹以上のたい焼きと、2500個以上の豆大福を食べ歩いてきた無類のあんこ好き。現在もテレビ、ラジオなどさまざまなメディアを通じてたい焼きと豆大福の魅力を伝え、その筋では「餡子食う大魔王」と呼ばれる。本業はグラフィック・デザイナー。著書に『東京のたい焼き ほぼ百匹手帖』(立東舎)、『私がしあわせな東京豆大福五〇の覚書き』(TOKYO NEWS BOOKS)がある。
Twitter
この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2018.7.15 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
PHOTO :
イワイサトシ(『東京のたい焼き ほぼ百匹手帖』より)
WRITING :
Mami Azuma