沖縄に滞在していた春先、桃の節句から2日間「クラシックカーラリー沖縄」が開かれていた。翌日にはレース参加車両と公道でも出くわした。このレースに特別協賛しているのがショパールだ。ショパールはいつもどこでも、本気でモータースポーツの文化に関わっている。だから、その腕時計も正しくレースの精神を見立てていて、見栄えもいい。
ショパール30年目のアニバーサリーモデルはより華やかに!
「ミッレ ミリア 2018 レース エディション」
レースを知らないと、まともなレーシングウォッチを作れないことを、ショパールはよく判っている。その真骨頂ともいえる腕時計シリーズの最新作が「ミッレ ミリア 2018 レース エディション」である。イタリアで開かれる、世界で最も美しいレース「ミッレ ミリア」のオフィシャルパートナーとタイムキーパーをショパールが始めてから、もう30年になる。毎年の限定モデル「レース エディション」もまた、待ち遠しいクラシックカーの祝祭を彩るのに欠かせない花なのだ。
今年はステンレススティールのモデルが1,000本、ベゼルにローズゴールドを奢ったモデルが100本の限定。どちらもスイスの公的機関COSCの精度テストをパスした、公式クロノメーターである。30年目の記念の文字がシースルーバックのサファイヤクリスタルに掲げられているのも、例年以上に華やかだ。
ショパール現・共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏自身も、毎年このレースに参加している。隣に座っているのがF1の英雄ジャッキー・イクスだったりするし、参加車もポルシェ社の博物館が特別に貸し出したらしい、1956年製のスパイダーだったりするのだ。ずいぶん前になるが、初めて彼に単独インタビューした時に尋ねてみた。「スポンサーになる前に、ミッレ ミリアに出たことがあるのではないですか?」。当時はまだ副社長だった彼が、視線を逸らしながら可笑しそうに「ウイ」と言った。
クルマが好きな人間が腕時計のつくり手で、しかもそれが他ならぬショパールであったことで、こうした幸運な腕時計ができている。30年目のクロノグラフはとても出来が良く、文字盤はクラシックカーの計器盤のような、円形のエンジンターンド模様を連ねた粋なブショナージュ(ブショネ仕上げ)。パンチングを施したカーフレザーのストラップは、裏側にダンロップレーシングのタイヤパターンを施している。嘘がなく、わざとらしくもなく、レースを記念する腕時計をレースとレースカーに見立てることは、実は難しい。
「ミッレ ミリア」のレース参加費が8,000ユーロ(約102万円、※2018年6月現在)だから、時計の価格と妙な符合のようなものがある。参加するためには、最低条件でも1957年以前に製造されたレースカーが必要だ。その車の輸送や整備があり、1000マイル(伊語でミッレ ミリア)を走るレース本番だけで4日間は費やす。レースのミッレ ミリアにはなかなか参加できない人も、腕時計を求めることでこのおそろしく魅力的な、しかも文化的モーターイベントに参加する。そういう時計なのである。
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- TEXT :
- 並木浩一 時計ジャーナリスト