【目次】
- サンゴの日とは?由来と意味
- サンゴは植物?それとも動物?意外と知らない正体
- サンゴ礁が重要な理由|“海の森”と呼ばれるわけ
- サンゴが減ると何が起きる?私たちへの影響
- サンゴにやさしい行動とやりがちなNG行動
- 寄付・ボランティア・買い物で応援する方法
【サンゴの日とは?由来と意味】
■3月5日は「サンゴの日」
命豊かな海の自然の一部であるサンゴ礁の大切さを思い、その保全を訴えるために、WWFジャパンが1996年から提唱してきた記念日「サンゴの日」。日付は「3(サン)」「5(ゴ)」と語呂合わせ。日本では沖縄や奄美などの海域に多くのサンゴ礁が広がっています。3月はサンゴの産卵に向けた準備が始まる時期であり、海の豊かさを意識するのにぴったりの季節ということで採用されました。
■「サンゴの日」の意味、目的は?
「サンゴの日」にWWFジャパンが提唱する具体的な目的を挙げてみましょう。
・サンゴ礁の保護:温暖化や開発、赤土の流出などで危機に瀕しているサンゴ礁を守る。
・生態系の理解:「海の熱帯雨林」とも呼ばれるサンゴ礁の豊かな生態系について知ってもらう。
・環境への意識向上:海の環境保全の大切さを考え、行動するきっかけをつくる。
【サンゴは植物?それとも動物?意外と知らない正体】
現在世界中の海でさまざまな問題を抱えているサンゴについて、「サンゴの日」をきっかけに考えてみたいですね。まずはサンゴについての基礎知識を。海草や植物と思っていませんか? 意外と知らないことばかりで驚くかも!
■サンゴって何者?
サンゴはその見た目や動かないことから、植物や石の類だと思われることもあるようですが、実はれっきとした海洋生物。刺胞動物門・花虫綱に属し、イソギンチャクやクラゲの仲間です。
多くのサンゴは石灰質の骨をもっていて、この骨が長い年月をかけて成長し、巨大なサンゴ礁をつくります。表面は小さなイソギンチャクのような形の「ポリプ」という個体が集合していて、夜になるとそのポリプの触手が伸びてプランクトンを捕まえて食べるのです。
しかも体の中に「褐虫藻(かっちゅうそう)」という微細な藻類を共生させていて、この褐虫藻が光合成することによって糖分などの栄養を得て生息しています。
■サンゴの色は褐虫藻の色?
サンゴといえば、黄色や褐色、ピンク色の姿を思い浮かべる人も多いでしょう。実際には、枝のように広がる枝サンゴや平たいテーブルサンゴなど、海の中には青や黄色、紫など色とりどりのサンゴが広がり、美しい景観をつくっています。
実はサンゴは大きく2種類に分かれます。
浅瀬でカラフルな姿で楽しませてくれるのは「造礁サンゴ」と呼ばれるもの。黄や緑、紫色などの色の正体は、サンゴに共生する褐虫藻と、サンゴ自身の蛍光たんぱく質によるもので、サンゴ自体はほぼ透明なのだとか。
ところが海水温が異常に上下したり、なんらかのストレスが原因でサンゴから褐虫藻が逃げ出してしまうことがあります。するとサンゴの透明な肉の下にある白い骨格が透けて見え、これが「サンゴの白化」と呼ばれる状態。色がなくなるのは、サンゴが褐虫藻という栄養源を失い、弱っているサインなのです。
もう一方は、深海に棲むサンゴ。こちらが宝飾品として利用される「宝石サンゴ」です。水深100m以上の光が届かない場所に生息するため褐虫藻をもちません。そのため、赤や桃色などの色はサンゴ自身の骨格の色なのです。
■聖武天皇・光明皇后も愛した来歴が
日本におけるサンゴの歴史は、奈良時代にシルクロードを渡って地中海からもたらされたものが最初のようです。奈良時代の至宝といえば、聖武天皇の遺愛品などを納めている正倉院(奈良市)ですね。毎年秋に約2週間だけ至宝の一部が公開されて人気ですが、正倉院にもサンゴの原木やサンゴのビーズ(礼服着用時の冠の残欠)が保管されています。
【 サンゴ礁が重要な理由|“海の森”と呼ばれるわけ】
サンゴ礁は「海の森」や「海の熱帯雨林」と呼ばれているのをご存知ですか? その理由を知ることが、サンゴが置かれている状況や問題について真剣に考えるきっかけになるかもしれません。
■サンゴ礁は天然のシェルター
世界全体の海底に占めるサンゴ礁の面積はわずか0.2%未満。ところがそこには全海洋生物の25%が暮らしているといわれています。そのわけは…。
「サンゴはどんな形?」と問われてもなかなか答えられないでしょう。あの複雑な立体構造こそが、小さな魚やエビなどの海洋生物を大きな魚などの敵から逃れる絶好の形状なのです。また、複雑な形のサンゴは多くの生物の産卵場所としても利用され、エサが豊富な育児室でもあります。
「狭く複雑な構造空間で、限られた栄養を使い回しながら膨大な数の生き物を養っている」のがサンゴ礁。サンゴが生息していなければ、地球にはこれほど多種多様な海中生物は存在しなかっただろうといわれています。
■「リサイクルシステム」のお手本
サンゴが生息するのは、もともと栄養分の少ない場所が多いそう。少ない養分を、サンゴと褐虫藻が協力して効率よく巡回しているのだとか。わずかな栄養を餌にサンゴは成長しますが、そのサンゴを食べる生物がいて、その生物の排泄物が次の命を…と、リサイクルシステムは完璧です。
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サンゴは(体内に共生する褐虫藻によって)光合成を行い、酸素や栄養を生み出し、ほかの生物に栄養として提供しています。サンゴ礁と藻場の有機物生産量は他の生態系より高く、地球上でもっとも生物生産の高い場所なのです。また、サンゴ自体を食べることで食物連鎖を生むことも。かわいらしいチョウチョウウオの仲間や、シロサンゴヤドカリ、ブダイやオニヒトデなどもサンゴを食べるのです。適度な食物連鎖が行われているうちは完璧なリサイクルシステムといえますが、行き過ぎが問題視されています。
【サンゴが減ると何が起きる?私たちへの影響】
サンゴ礁は全海洋生物の約25%が依存する場所。ということは、サンゴ礁が減ってしまうと大量の海洋生物が行き場を失うことになり、人間にもたらす影響もさまざまです。
■漁獲量の激減
ある研究データによると、サンゴ礁が劣化するとその海域の魚の総重量の60~80%が減少すると予測されています。前述の通り、外敵が少ない環境をつくり出すサンゴ礁は産卵場所であり、稚魚の育児室。そのサンゴが死滅すると、生まれない、あるいは成長する前に他の魚に食べられてしまうということが起こり、数年後には漁獲量が減る、という負の連鎖が起こりかねません。供給が減れば価格が高騰するのは自然な流れです。現在日常的に食べている魚が、気軽には食べられない高級魚になりかねないのです。
これは世界的な危機といえますが、天敵であるオニヒトデの駆除作業や、サンゴの苗の植え付けや育成など、日本でも各地でサンゴを守り育てる活動が行われています。
■台風や高波被害が拡大
健康なサンゴ礁は複雑な構造をしていますが、この形状は魚の棲息に適しているだけでなく、沖から押し寄せる波に対してブレーキの役割も。サンゴ礁は波のエネルギーを平均で97%も減少させるといわれているので、この天然の防波堤がなくなると、台風や高波被害が拡大して深刻化することも懸念されています。
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また、死滅したサンゴは組織が剥がれ落ち、白い骨格だけになります。この「サンゴの白化」が、波の衝撃やウニなどに削られることによって、数年から数十年かけてばらばらに崩れてしまいます。すると、サンゴ礁によって複雑な地形がつくり出されていた海底は平らで低くなり、台風などで発生した波は強いエネルギーを保ったまま海岸まで到達することに。高潮や浸水被害が増大し、海岸線は削られ、塩害被害も大きくなるかもしれません。
■観光業へのダメージ
青い空と海に白い砂浜、気軽なシュノーケリングで色とりどりのサンゴを…という機会が減ることに。サンゴ礁という美しい景観が失われるだけでなく、そこに群れるカラフルな熱帯魚も姿を消すでしょう。ダイビングや観光船などのアクティビティの満足度が低下するだけでなく、砂浜が減少し、海水は透明度が低くなるなど、大きなダメージは避けられません。
■温暖化の加速
「ブルーカーボン」というワードを聞いたことがあるでしょうか。これは海の生物によって吸収・固定される炭素のことです。
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サンゴの体内に共生する褐虫藻が光合成を行い、CO₂を吸収して酸素を生み出します。サンゴの死は褐虫藻の死をも意味し、それによって巨大な二酸化炭素の吸収源が失われることに。行き場を失った二酸化炭素は海中や大気に残り続け、温暖化をさらに進めることになるのです。
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それだけでなく、死んだサンゴは自らが二酸化炭素を排出する側にまわってしまうことがあるのだとか!
また、「海の熱帯雨林」と呼ばれるサンゴ礁は、マングローブや海草藻場(うみくさもば)など、強力な二酸化炭素吸収源とも繋がっています。サンゴ礁が防波堤としての役割を失うと、高波がマングローブの林や海草藻場を破壊し、海洋全体の二酸化炭素吸収能力が大きく落ちてしまい、温暖化の加速化に繋がるのです。
【サンゴにやさしい行動とやりがちなNG行動】
シュノーケリングなどサンゴを鑑賞する機会に注意するだけでなく、海での行動で気をつけたいことがあります。これらは「グリーン・アクション」と呼ばれる、地球環境を保護するために日常のなかで具体的に起こすことができる行動の一部です。
■サンゴに触らない、蹴らない
シュノーケリングやダイビングの醍醐味は、実際に自分の目で海中生物を鑑賞したり、写真に撮ったりすることですが、サンゴに近づく際には触らないことを徹底して! 立ち去る際に、フィンで蹴ったり、砂を巻き上げたりすることもNGです。
■生き物を追い回さない
サンゴ礁はさまざまな生物の安息地ですが、ストレスがかかったカメや魚は攻撃的になり、サンゴを傷つけてしまうことも。
■ごみを残さない
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海中でも陸でも自分がごみを残すのは当然NG行動ですが、海中に漂うプラスチックや釣り糸などのごみに気が付いたら回収するという、一歩進んだ行動を!
上記は海での「グリーン・アクション」。これらは国連環境計画とリーフ・ワールド財団の協力によって開発された「グリーン・フィンズ」が示している行動です。「グリーン・フィンズ」は、スキューバダイビングやシュノーケリングをはじめとするマリンスポーツの環境への影響を軽減することを目的とした唯一の国際プログラム。一貫した環境基準を提供していて、保全活動をする団体から海を楽しむ個人までが、サンゴ礁や海洋生物を保護する持続可能な実践に役立っています。
ほかにも、紫外線吸収剤(オキシベンゾン等)を使用していない日焼け止めを選ぶ、グリーン・フィンズ等の環境基準を遵守しているダイビングショップを選ぶ、マイボトルやエコバッグの使用を徹底して使い捨てプラスチックごみを出さないなど、海に出かける前のグリーン・アクションも。
【寄付・ボランティア・買い物で応援する方法】
サンゴが地球の生態系にもたらしている恩恵や、サンゴ礁が減少するとどんなことが起きるのか、ざっと解説してきました。最後に、今すぐ実践できる「サンゴを守るアクション」を紹介しましょう。
■寄付で応援する
サンゴ礁の減少を食い止めるため、新たにサンゴの苗を育てたり、海に植え付ける活動が行われています。それらの団体に寄付をしてサンゴの里親になることも大きなサンゴ支援です。
■ボランティアで応援する
日本における一大生息地である沖縄では、サンゴの苗づくりや、植え付けイベントなど、さまざまな再生支援が行われています。(沖縄県サンゴ礁保全協議会)
■買い物で応援する
化学物質を出さない製品や寄付つき製品の使用、グリーン・フィンズなどの国際基準を守っているダイビングショップを選ぶ、サンゴにストレスを与えない…などの行動を「サンゴ・フレンドリー」といいます。直接的な支援ではなくても、「自分の選択や行動がサンゴ礁の保全に役立ち、沖縄や世界の美しい海に繋がっている」と意識することもサンゴを守る行動です。買い物の際には意識して選択したいものですね。
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「ブルー・カーボン」「グリーン・フィンズ」「サンゴ・フレンドリー」などは、初めて触れるワードだったかもしれませんね。海水温の上昇を抑えるためにCO₂排出を減らす努力を続けるとか、合成洗剤の使用を控えるなど、日常生活の中にもサンゴ保全に繋がるアクションはあるもの。「サンゴの日」という記念日があることを広めることも、その一助になるかもしれません。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/環境省( https://www.env.go.jp/nature/biodic/coralreefs/index.html )/WWFジャパン( https://www.wwf.or.jp/staffblog/news/99.html )/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/PADI( https://blog.padi.com/jp/what-is-green-fins/ ) :

















