ニューヨーク演劇界のトニー賞に当たるのが、ロンドンのオリヴィエ賞。昨年、同賞の11部門でノミネートされ、作品賞を含む9部門で受賞という過去最高の記録を打ち立てたのが『ハリー・ポッターと呪いの子』(Harry Potter And The Cursed Child)だ。

 そのロンドンのオリジナル・キャストから7人が今回のブロードウェイ・プロダクションに参加。もちろん、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞を受賞した3人(ハリー・ポッター役ジェイミー・パーカー、ハーマイオニー・グレンジャー役ノーマ・ドゥメズウェニ、スコーピアス・マルフォイ役アンソニー・ボイル)はそろってやって来ていて、トニー賞の同じカテゴリーで3人とも再び候補になった。その他、計10部門でノミネート、最終的に作品賞を含む6部門で受賞。このトニー賞の結果を受けて、チケット争奪戦にはさらに拍車がかかるだろう。

二部に分けて上演される『ハリーポッターと呪いの子』

振付と魔法のあの手この手の表現に驚かされ続ける

『ハリポタ』二部作上演中のリリック劇場に掲げられた巨大なオブジェ
『ハリポタ』二部作上演中のリリック劇場に掲げられた巨大なオブジェ

 ネットの一部ではミュージカルとして紹介されていたりもする『ハリー・ポッターと呪いの子』。しかしながら、ミュージカルではない。誰も歌わないし、純粋なダンスもない。けれども、ミュージカル的に楽しむことのできる舞台であることは間違いない。

 それを証明するように、ストレート・プレイとしては例外的に、オリヴィエ賞でもトニー賞でも振付賞の候補となっている。場面の変わり目での音楽や効果音に合わせた役者たちの動きが、さながら群舞のように目を惹くのだ。同時に、音楽も魅力的。

 加えて魔法の表現。題材から言って魔法がどんなふうに出てくるのか興味が湧くかと思うが、その手法が多彩。文字通りマジシャンのテクニックを使ったものから、歌舞伎の早替わりを思わせるものまで、様々な形でアッと言わせてくれる。もちろん高度な映像技術も含め機械的手法も使われるが、むしろ人力が主であり、その辺りが逆に驚きを大きくしていて面白い。同じ劇場でやっていた『スパイダーマン』(Spider-Man:Turn Off The Dark)が空しく劇場内を飛び回るだけだったのと対照的だ。

 パート1とパート2に分かれているので、両方観ると半日がかりの観劇になるが、それだけの価値は充分にある。

 話の内容は、大人になったハリー・ポッターと魔法学校に入った息子との父子の葛藤を軸にした物語。時間を行き来する冒険の中で、過去の様々な人物や事件が伏線として登場するという、シリーズのファン向けの楽しみも多く準備されているが、全く知識がなくても、それなりに楽しめる作りにもなっている。ちなみに、ロンドン版開幕後に、ジャック・ソーンとジョン・ティファニーの書いた脚本を元にした本が正式にシリーズ最新作として出版され、日本語版も出ているので、予習されたい方はそちらを。

少しばかり面倒なチケット入手を成功させる魔法とは?

『ハリポタ』二部作のプログラムとオマケにもらえる缶バッジ
『ハリポタ』二部作のプログラムとオマケにもらえる缶バッジ

 さて、入手困難と言われるチケットだが、日本にいながら手に入れるには?

 秘策があるわけではないが、より取りやすい方法はある。というのも、通常のルートで買おうとすると最終的にチケットマスターのハリー・ポッター特別サイト(https://harrypotter.ticketmaster.com/)に行き着く。もちろん、ここですんなり買える場合は問題ない。ところが、これがなかなかうまくいかない。パート1、パート2があって、セットでまとめ買い、別々に選んでまとめ買い、全く別々に買う、という選択肢の設定が複雑なせいではないかと思うが、とにかく先に進めない。オンライン・チケット売り出し初日の申し込み開始直後のような状態になる。ここで挫折するというのが現状。

 そこでオススメするのが、BROADWAY.COM(https://www.broadway.com/)で購入するという方法だ。こちらは比較的すんなり買える。結局20%程度の手数料を取られることになるが、普通に買っても手数料は取られるので、そこは目をつぶりたい。お試しあれ。

 なお、BROADWAY.COMで予約した場合、チケット受け取りの窓口が異なるので注意が必要だ。通常はリリック劇場の42丁目側の入口にあるボックス・オフィスで受け取るが、BROADWAY.COMの場合、裏側にあたる43丁目側の入口で受け取り、そこから入場することになる。間違えて慌てないよう、ご確認を。

チケット入手サイト

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この記事の執筆者
ブロードウェイの劇場通いを始めて30年超。たまにウェスト・エンドへも。国内では宝塚歌劇、歌舞伎、文楽を楽しむ。 ミュージカル・ブログ「Misoppa's Band Wagon」(https://misoppa.wordpress.com/)公開中。 ERIS 音楽は一生かけて楽しもう(http://erismedia.jp/) で連載中。
公式サイト:ミュージカル・ブログ「Misoppa's Band Wagon」