自分の評価を上げることは、本当に難しいですよね。向上心を持って仕事していても、「すごい!」「さすが!」などと言われることは、レアケース。ただ、それはもしかしたら、あなたが仕事全体を高い視点から見ることができていないせいかもしれません。
ビジネスシーンの土台になるのは、相手のことを考えた気配り。そう説くのが、上場企業を中心に1700社でビジネスコミュニケーションを指導してきた安田 正さん。
企業の役員や経営者など、多くの成功者と接してきた安田さんは、「一流の方々は一人残らず、気配りの達人」と語ります。そこで今回は、ビジネスシーンで本当に求められている気配りについて、教えていただきました。一流の人を真似して、仕事も人生もうまく進めていきましょう。
■1: 期待に応える「ホウレンソウ」をする
あなたは普段、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を実施できていますか? 実は、若いビジネスパーソンのうち、求められているホウレンソウをできている人は、1%もいないそうです。その理由は、ホウレンソウに「何を期待されているか」まで考え、それに応えられる人が少ないから。
ホウレンソウができていると思っている人の多くは、自分がやったことだけしか報告していないとのこと。「○○会社と打ち合わせしました」「こんなクレームがありました」など、これでは報告しただけ。上司からすれば「それで、どうするの?」と疑問に思いますよね。
そこでホウレンソウでは、3つのポイントを意識しましょう。
(1)現状:上司にとって、知る必要のあることだけを簡潔に伝える。
(2)見通し:現状を踏まえて、それについて自分が得た感触。今後どうなりそうか。
(3)対処:見通しを踏まえたうえで、自分はどう対処するつもりか。具体的な解決法や新しい提案はあるか。
この3点を織り込むと、以下のような報告ができます。
「今日、○○会社のAさんと打ち合わせがありました(現状)。お話しした感触では、今週中には受注をとることができそうです(見通し)。メールでも、もう一押ししてみます(対処)」
最後の「対処」まで盛り込んで、やっと求められる報告になるのです。安田さんは「先を読んだ、期待に応えるホウレンソウができれば、気が利くと思われ、仕事でも頭ひとつ抜けた成果を出せる存在になれる」と言います。
また、多くのビジネスパーソンは、ホウレンソウをする頻度が低いそうです。上司に「あれ、どうなった?」とは絶対に言わせてはいけません。これは「私は不安ですよ」という合図とのこと。
安田さんは「思っているよりも、3倍はホウレンソウをした方がいい」とアドバイスします。もしまったくホウレンソウをしない部下がいれば、上司の方から「もっと報告をしてほしい」と部下に伝えるのも、有効だといいます。
ただし、そのときに大切になるのは、理由を教えること。「〇〇する必要があるから、常に状況を知っておきたい」などと理由を一緒に伝えることで、部下は「それならば、きちんと報告をしなくては」という気持ちになるでしょう。
■2:「相手目線」で仕事のスケジュールを組む
次々とやってくる仕事。あなたは、どのようにプライオリティ(優先順位)を決めていますか? プライオリティの立て方が下手な人は、頑張っているように見えても、仕事が遅かったり、評価されなかったりするそうです。
ビジネスにおいての気配りでもっとも大切なことは、上司や取引先といった相手のスケジュールに配慮すること。社内においては、上司にとっての仕事もプライオリティを正確に把握することが求められるそうです。
例えば、上司から書類作成を指示されたとき。自分で勝手に期限を決めて進めるのではなく、まずその仕事が上司にとってどれほど重要なのかを把握し、どのくらいの速さで進めるべきかを正確に評価することが、気配りになるといいます。
もし上司が1時間以内に仕上げてほしい仕事を、次の日に対応をしてしまったら、上司を困らせることになりますよね。そこでポイントになるのは、仕事を引き受けるときに必ず「いつまでですか?」と締め切りを確認すること。そうすることで「気配り力が高い人」という評価が得られるそうです。
もちろん、期限は必ず守らなければなりません。もしほかにもやらなければならない作業があった場合は、「現在〇〇会社の書類作成をしなければならず、15時までは難しいのですが、17時までなら必ず仕上げられます。大丈夫でしょうか?」と、できない理由も一緒に伝えて、上司の指示を仰ぎましょう。
「上から見ると、部下が今やっていることはそれほど重要でないことがあります。そのため、勝手にプライオリティを決めるのはよくありません。部下の行動をすべて上司が把握できているわけではないので、お互いにコミュニケーションを取って、状況を交換することが大切です」(安田さん)
上司に現状を伝えた上で、「やっぱりこっちを先にして」と言われた場合は、上司の指示に従うことが、結果としてあなたの評価につながります。
■3:人に頼むときは「お願いできますか?」を使う
急ぎの仕事を誰かに依頼するとき、あなたはどのように伝えますか? 絶対に期限を守ってほしいときには、「まずなぜ急がなければならないかという理由と、締め切りを示すことが重要」とのこと。すると、以下のように伝えることができます。
「急に重要な取引先のA社に、明日の15時からプレゼンすることが決まりました。そこで、明日の12時までには資料を仕上げなければなりません。お忙しいところ大変申し訳ないのですが、お願いできますか?」
ここで「お願いします」と断言するのではなく、「お願いできますか?」と疑問形にすることも、気配りのポイントになるそうです。
「『お願いします』と言われるのと『お願いできますか?』と聞かれるのでは、印象が違いますよね。相手の許可を得る形で依頼をすることで、引き受けるかどうかを相手が決めることができます」と安田さん。
断れられる可能性もありますが、このような気配りがあれば、相手は「やってあげよう」と快く引き受けてくれやすくなるでしょう。
■4:打ち合わせ・商談中はコンマ数秒の気も抜かない
取引先との大事な商談や打ち合わせ、絶対に失敗できませんよね。商談などの席では、タイミングが1秒遅れただけで、人の気持ちが180度変わることがあるといいます。
例えば、取引先から「今度、こういう仕事をしてもらえるかな?」と聞かれたときに、気を抜いて返事が遅れたとすれば、「もういいや、今のことは忘れて」と、チャンスを逃す可能性があります。すぐに「ありがとうございます、是非やらせてください!」と返事をすることが理想です。
「ビジネスの瞬間では、タイミングが重要です。返事でやる気を見せましょう」と安田さん。大切な局面では、相手に全神経を集中させなければならないのです。
また態度でも、よい雰囲気をつくりましょう。話を真剣に聞くときには、うなづくことが大切です。
安田さんによると、「うなずくというのは、あなたの話していることを聞いていますよ、理解していますよということ。ほかにも、話している相手の目を見ること、そしてメモを取ることもポイントです」とのこと。話を聞く姿勢も、大切にしていきましょう。
■5:小さな仕事でもプラスαになる改善点を探す
企業のトップに立つ人、何かを成し遂げた人は、必ず一歩先を読んでいるそうです。そのため、自分の仕事しか見えていない、視野が狭い人には、気配りはできないとのこと。では、職場で一歩先を読むにはどうすればよいのでしょうか。
例えば、あるプロジェクトメンバーに選ばれたとき。上司から頼まれていないものの、資料をブラッシュアップし、上司にこのように言います。
「部長、この資料ですが、あまり目を引かないように見えたので、ちょっと直してみました。あまりうまくできていないかもしれませんが……」
指示されたことしかしない人が多い中、頼まれていないプラスαの仕事をすることで、上司は「それは君の仕事じゃないだろう」などと言うかもしれませんが、心の中では「なかなかやるな」と評価が上がっているとのこと。
「部下から提案されることは、上司にとって非常にうれしいことです。上司の面目が潰れると思う人もいるかもしれませんが、日本人はそんなに心が狭くありません。気配りというのは、すべて能動的な発想であり、行動なのです。自分の方から、相手はこうしてもらいたいのではないかと考え、自分から発信することが気配りです」(安田さん)
また「自分の担当領域を勝手に決めて、それ以外の仕事をしない人は、成長できません」とズバリ。人に指示されるのを待つのではなく、自分で考えて行動をしていきましょう。
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周りに評価されたい、もっと仕事をうまく進めたいなら、今日からビジネスシーンに求められる気配りを実践することが大切です。自分をワンランク上に引き上げ、仕事も人生も成功を勝ち取りましょう。
『できる人は必ずもっている一流の気配り力』安田正・著 三笠書房刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 椎名恵麻