まるで絵画のようなガラス装飾は圧巻

ルネ・ラリックは1860年、フランス、シャンパーニュ地方の小さな村に生まれました。その後、両親の仕事のために幼少期をパリで過ごし、宝飾細工師のもとでの学びなどを経て、1882年にジュエリーデザイナーとして独立します。

当時のヨーロッパを席巻していたのが、「新しい芸術」という意味をもつ美術様式「アール・ヌーヴォー」。草花や昆虫など自然界にあるモチーフを用いた装飾表現です。展覧会の第1章では、「ガレとドーム/情景を描く」として、ラリックに先駆けて活躍していたエミール・ガレとドーム兄弟の作品や、アルフォンス・ミュシャのポスターなどを展示。急激な近代化により、人々のライフスタイルが激変していく時代の空気を感じることができます。細密な装飾が施されたガラス作品の数々には目が釘付けに!

右はドーム兄弟《風雨樹林文円筒形花瓶》(1903年ごろ 国立工芸館蔵)。ジャポニスムの影響がうかがえる
右はドーム兄弟《風雨樹林文円筒形花瓶》(1903年ごろ 国立工芸館蔵)。ジャポニスムの影響がうかがえる
同時代に活躍したアルフォンス・ミュシャの作品も展示
同時代に活躍したアルフォンス・ミュシャの作品も展示

みずみずしいジュエリーと美しい色合いのガラス作品

第2章「ラリック/ジュエリーからガラスへ」では、ラリックのジュエリーと、本格的なガラスのデザインを始めるきっかけとなった香水瓶、そして、ガラスのもつ輝きと透明感のある色彩を生かしたガラス作品を紹介します。

ジュエリーでは、ガラスなど新しい素材を用いた大胆なデザインで人々を魅了したラリック。代表作のひとつである『ブローチ 翼のある風の精』は、上半身をひねり、ふわりと舞い降りたような風の精の表現が秀逸。七宝にダイヤモンドを組み合わせた翼もエレガントで、じっくりと見入ってしまいます。

彫刻にも精通していたというラリックの身体表現も見どころ。ルネ・ラリック《ブローチ 翼のある風の精》 1898年ごろ 国立工芸館蔵
彫刻にも精通していたというラリックの身体表現も見どころ。ルネ・ラリック《ブローチ 翼のある風の精》 1898年ごろ 国立工芸館蔵
左の香水瓶は、現代香水の祖フランソワ・コティのために手がけたもの。左/ルネ・ラリック《香水瓶 アンバー・アンティーク》 1910年 井内コレクション(国立工芸館寄託)右/ルネ・ラリック《立像 小首を傾げる女》 1919年 井内コレクション(国立工芸館寄託)
左の香水瓶は、現代香水の祖フランソワ・コティのために手がけたもの。左/ルネ・ラリック《香水瓶 アンバー・アンティーク》 1910年 井内コレクション(国立工芸館寄託)右/ルネ・ラリック《立像 小首を傾ける女》 1919年 井内コレクション(国立工芸館寄託)

絶妙な照明も相まって”うっとり”が止まりません

時代の気分は装飾性の高いアール・ヌーヴォーから、幾何学的で洗練されたアール・デコへ。ラリックの作品も、ボリュームのあるダイナミックなデザインや、魚や鳥など生き物を抽象化したモチーフなど、新しい表現へ移行していきます。

第3章「時代とともに/ラリックとアール・デコ」では、この時代のラリックを代表する名品がずらり。なかでも宝石のオパールのように見えるオパルセント・ガラスを用いた『花瓶 オラン』は、ため息が出るほどの美しさ。厚みのある花の部分はオレンジがかった乳白色、薄い葉の部分は青系の乳白色になっていて、光によって色合いが繊細に変化します。上から見たり横から見たり、近づいたり離れたり…。表情の違いを楽しんで。

題名の「オラン」はアルジェリアの海沿いの都市名。地中海のまぶしい陽光を思わせる。ルネ・ラリック《花瓶 オラン》 1927年 井内コレクション(国立工芸館寄託)
題名の「オラン」はアルジェリアの海沿いの都市名。地中海のまぶしい陽光を思わせる。ルネ・ラリック《花瓶 オラン》 1927年 井内コレクション(国立工芸館寄託)
専門の照明デザイナーによるライティングによって、印象的な鑑賞体験が叶えられる。
専門の照明デザイナーが手がけたライティングが作品の魅力を際立たせる。さまざまな角度から変化する表情を楽しみたい

そして、ガラス作品の魅力を最大限に引き出しているのが、美術館専門の照明デザイナーによるライティング。作品そのものはもちろん、ガラスを透過した光、作品が生む影までも美しく、ドラマティックな展示空間に魅了されます。この場所、この展覧会でしかできない鑑賞体験。ぜひ足を運んでください。

建物は、明治後期に建てられ、1997年に国の登録有形文化財に登録された木造の旧陸軍施設「旧陸軍第九師団司令部庁舎」と「旧陸軍金沢偕行社」を移築・活用している
建物は、明治後期に建てられ、1997年に国の登録有形文化財に登録された木造の旧陸軍施設「旧陸軍第九師団司令部庁舎」と「旧陸軍金沢偕行社」を移築・活用している

◇Information

 

ルネ・ラリック展ーガレ、ドームから続く華麗なるフランスの装飾美術ー
会場/国立工芸館
期間/開催中〜2026年6月14日(日)
開館時間/9:30〜17:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日/月曜日(ただし4月27日、5月4日は開館)、5月7日 
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
観覧料:一般¥1,200ほか
住所/石川県金沢市出羽町3-2

EDIT&WRITING :
剣持亜弥