写真は果たして絶滅してしまうのか──現代美術家・杉本博司による異次元の表現とは

世界的に活躍を続ける美術家・杉本博司が、その芸術の原点である銀塩写真をテーマに個展を開催。デジタルに置き換わられて “絶滅” しようとしている銀塩写真にこだわる杉本が見ているものとは? 「Precious」でも活躍中の人気フォトグラファー・長山一樹さんが、杉本芸術を語ります。

長山一樹さん
フォトグラファー
ファッション誌や広告、アーティスト撮影などで活躍。YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』ではヴィジュアル・ディレクターとして映像と写真を担当している。「Precious」でも毎号のようにさまざまな企画でスタッフクレジットに名を連ねる。

【今月のオススメ】杉本博司 《ポコット族》

美術家・杉本博司の作品《ポコット族》
2025年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4×185.4cm

デビュー作である〈ジオラマ〉シリーズの最新作。1975年にシリーズが始まったときから構想されていた人類史を巡る深淵なストーリーが、半世紀を超えてついに実現にいたったことが、今回の展覧会で初めて提示される。「倉庫の奥に眠っていた10年落ちの印画紙を引っ張り出してきて」プリントしたという。


カメラマンとしての下積み時代に、初めて観た杉本作品が〈ジオラマ〉でした。N.Y.のアメリカ自然史博物館にある精巧なジオラマを撮影した写真。これ、本当に目の前にあるものを撮ったんだろうか、と。写真というより、絵のようだと思いました。

写真といえば被写体にピントが合っていて背景はボケているのが一般的ですが、〈ジオラマ〉では、風景もそこにいる動物も、画面のすみずみまでが鮮明に描写されていた。そして、全体はノスタルジックで柔らかなモノクロで、その階調がすごく絵画的に感じられたんですよね。それが強く印象に残っています。

当時の僕は、「写真家」の作品として〈ジオラマ〉を見ていたわけですが、〈劇場〉や〈海景〉シリーズなどでこれは「現代美術家」のアート作品だということがわかっていき、さらに構想から10年をかけて開設された「小田原文化財団 江之浦測候所」を訪れるなどして思ったのは、「杉本さんはとんでもない未来を見ている」ということ。写真とか絵画とか建築とか、手段の域を超えて、とてつもないスケールで、人類や地球の未来を表現しようとしているんですよね。

日本が沈み、人類が滅んだ世界に、訪れる者もいなくなった遺跡として残る。過去を刻むことが、未来を見ることだと思っている…。もうこれは参考にするとかまねするとかいうレベルでない、異次元の世界観です。そういう非常に深い思想を、写真作品においては特にそうですが、抒情的になることなくさらっと見せるのもすごい。展覧会も異次元になるはず。とても楽しみにしています。(談)

<Information>杉本博司  絶滅写真

杉本博司の芸術の原点である銀塩写真を、初期(1970年代後半)から最新作にいたるまでの約60点で紹介する。

会場/東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)
会期/2026年6月16日(火)〜9月13日(日)まで

問い合わせ先

東京国立近代美術館

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

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EDIT :
剣持亜弥
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