【美しいひとの美しい部屋・夏スペシャル】目の前に広がる青い色と波の音。地球の恵みをダイレクトに感じる家で暮らす彼女たちのライフスタイルとは──「海辺での暮らし」がもたらしたもの

海の近くで暮らしてみたい。一度はそんな思いを抱いた人も多いはず。どこまでも続く豊かなブルーと潮の香り、心地よい波の音。海を身近に感じながら過ごす、おおらかな時間は、仕事や生き方、体や心にどんな影響をもたらしたのでしょうか。

二拠点暮らしや移住など、忙しく働く彼女たちのリアルな声を、開放感溢れる部屋と共にお届けします。

グエナエル・ニコラさん
デザインスタジオ「キュリオシティ」代表
(Gwenael Nicolas)デザイナー。デザインスタジオ「キュリオシティ」代表。インテリアデザインから、建築、プロダクトデザインまで幅広く手掛ける。
宮元玲子さん
デザインスタジオ「キュリオシティ」プロデューサー
(Reiko Miyamoto)プロデューサー。夫であるニコラさんと共に1998年、「キュリオシティ」を設立。事務所のマネジメントをはじめ、デザイン以外のすべての業務を担当。curiosity.jp

デザインスタジオ「キュリオシティ」 代表 グエナエル・ニコラさんとプロデューサー・ 宮元玲子さんの海とつながる家

家_1,インタビュー_1
 

まるで海の上に建っているかのよう。ニコラ夫妻の南紀白浜の別荘は、水平線の先まで海を独占している感覚に。シームレスにつながるテラスとリビング・ダイニングは、共に床材に木目調のセラミックタイルを使用し、一体感を高めている。シンプルな無垢オークのダイニングテーブルは、ニコラさんがデザイン。

「パワフルな海と対峙し、雄大な自然を受け入れる。ただ海を眺め、何もしない。なんて贅沢なんだろう」 (グエナエル・ニコラさん)

家_2,インタビュー_2
 

外壁の焼杉は塩害対策にも。水平線に向かって大きく軒を下げる切妻屋根がなんともダイナミック。サッシを開け放てば、外と中がひと続きに、心地よい風が通り抜ける。この家の特等席は、広大なテラス。日の動きと共に刻々と変化する影がテラスを彩り、さまざまな表情を見せてくれる。

家_3,インタビュー_3
左/自宅目の前の岩場を歩く玲子さん。夏は、テラスから水着でそのまま海へ。家族で海水浴はもちろん、磯遊びや釣りなども楽しむ。右/ニコラさんと玲子さんのオフタイム。テラスにて。

和歌山県・南紀白浜は、美しい白砂の海岸や自然が生み出した雄大な奇岩など、絶景を有する関西屈指のビーチリゾート。観光客が多く訪れるエリアから少し離れた地に、グエナエル・ニコラさん、玲子さん夫妻の別荘はあります。インテリア・プロダクトデザイナーとして世界的に活躍するニコラさんと、公私共に長年のパートナーである、プロデューサーの玲子さん。東京は慌ただしく忙しく、とにかく仕事をする場所、常に決断をし、アウトプットし続ける場所だと、ふたりは語ります。

「結婚20年を機に、仕事一辺倒の生活から、少しライフスタイルを変えようかと話すなかで、だったら海を目の前に暮らそう、と。伊豆や箱根、鎌倉や葉山などいくつも土地を見てまわりましたが、なかなかこれだ!という地がなくて。そんなとき、ふと目に止まったのが南紀白浜。訪れたこともないのに、直感でビビッときました。すぐに現地を訪れたところ、この土地に出合い、ふたりで即決しました」と玲子さんが言えば、

「目の前には海しかない。海まで約80m、この理想的な土地に身をおいた瞬間、ひらめきました。パワフルな海と対峙し、海とつながる家。雄大な自然を受け入れ、共に生きる家。ただ海を眺めて、何もしない贅沢を味わう家…。そんなイメージが湧いてきたんです」とニコラさん。

また、空港から車でわずか5分という好立地も決め手になったとか。

「東京の自宅からドア・トゥ・ドアで約2時間。ふっと肩の力が抜けるこの家でエネルギーを蓄えます」

家_4,インタビュー_4
廊下の先には、錆びた鉄板のアートが。
家_5,インタビュー_5
浴室はあえて海に面さず、黒を基調に月明かりだけで幻想的に。
家_6,インタビュー_6
リビングのデイベッドはニコラさんがデザイン。壁面の大きなオブジェは、現代作家・石塚源太氏の漆の作品「感触の表裏#5」。
家_7,インタビュー_7
書斎のテーブルに置かれているのは、ニコラさんがデザインした椅子のワンパーツのプロトタイプをオブジェにしたもの。筆掛けもオブジェに。
家_8,インタビュー_8
東京から持ち込んだ、この家でゆっくり読みたい本たち。
家_9,インタビュー_9
書斎。椅子はニコラさんデザインの「AIMA」(カンディハウス)。デスク前のアートは、ニコラさんの出身地、ブルターニュで購入した、造形作家、Thierry Le Saec氏の作品。
家_10,インタビュー_10
茶室。風炉先屏風に見立てた石の彫刻は、彫刻家・水井康雄氏の作品。京都のギャラリー「SHINYA」で購入。
家_11,インタビュー_11
左/屋外の石の彫刻も同様。右/テラスに置かれていたのは、オリジナルのガラス製の関守石。
家_12,インタビュー_12
茶室のお軸は、松平不昧公の手紙を掛軸にしたもの。
家_13,インタビュー_13
キッチン。滞在中はふたりで料理を。カウンターのスツールは「ZARA HOME」で購入したものを塗装。
家_14,インタビュー_14
ダイニングテーブルにはキリッと冷えた白ワインが。
家_15,インタビュー_15
左/玲子さんイチオシの『まりひめ』。和歌山県内でのみ栽培が許可されている県オリジナル品種の高級ブランド苺。美味!右/地元の食材を使ったしらすとそら豆のパスタ。

「自然を理解し、共に生き、共に変化していく。そんな家を目指しました」

ニコラさんがデザインを手掛け、地元の神社仏閣を手掛ける工務店の協力を得て、ローカルの素材を多く用いたこの家は、ミニマルで力強い造り。傾斜を生かし、コンクリートで高床にした構造の上に建つ木造平屋の外壁には焼杉を使用。リビング・ダイニング、茶室、客室、書斎はすべて海に向かって並び、「本当のメインの居場所」とニコラさんが語るテラスは、リビングよりも広く設計。直接海に出ることができます。

「テーマはフィッシャーマンズハウス。オープンで、海とつながる家。自然はただ美しいだけでなく、ときに恐ろしく、ときに優しい。ファイトしたら負けてしまうから、抗うことなく、理解する。自然と共に生き、共に変化していく家を目指しました。20年後はどう変化しているだろう? 楽しみですね」とニコラさん。忙しいふたりですが、1か月に一度はこの家で過ごすことが目標だとか。

「東京から来て、真っ先に雨戸を開けるんですが、その瞬間、目の前に現れる雄大な海に、毎回圧倒されつつも、ふっと力が抜けてほっとするんです。晴れた日の真っ青な海も好きですが、曇りの日、空と海の境目がなくなってグレー一色になる景色も美しくて…。それから、ここは、時間の流れが違います。ゆったりと、心地いいスピードで一日が過ぎていきます」と玲子さん。

ニコラさんも、仕事中心の慌ただしい東京と違って、ここではゆっくり読書ができると言います。

「この家では、仕事はしません。何もしない。海を眺めて、海で遊んで、ときどき読書。目がよくなる気がします(笑)。夕焼けも、星空も本当に美しくて、月もびっくりするほど大きく見える。雨や風が強く吹き荒れてもそれもまた自然のパワーだと思う。雄大な自然の、さまざまなキャラクターを知ることができるのがおもしろい。ポジティブなエネルギーが満ちていくのを感じます」


◇ニコラ夫妻のHouse DATA
●場所…南紀白浜
●間取り…リビング・ダイニング、キッチン、客室、茶室、書斎、バスルーム
●ここに決めたいちばんの理由…海との近さ

PHOTO :
長谷川 潤
EDIT :
田中美保