【目次】

【「箸の日」とは? 8月4日になった理由を解説】

8月4日は「箸の日」です。日付の由来は「は(8)し(4)」という語呂合わせから。

私たちの生活には当たり前の存在である箸ですが、日本では古くから「食」と「礼儀」を支える道具として大切にされてきました。「箸の日」は、毎日の食事に欠かせない箸へあらためて感謝すると共に、正しい使い方や食文化について考えるきっかけにしてほしいという願いが込められています。


【「箸の日」はなぜ制定された? 由来と歴史】

■「箸の日」誕生の由来

インターネット上には、「箸の日」は、1975(昭和50)年に「わりばし組合」が制定したという記事が散見されます。日付は「は(8)し(4)」の語呂合わせに由来し、民俗学研究者の提唱を受けて制定されたとか。ただし、当時の団体の正式名称や一次資料は、現時点では確認できていません。

■2014(平成26)年に日本記念日協会へ登録

現在、一般社団法人 日本記念日協会に登録されている「箸の日」は、愛知県名古屋市の箸メーカー・株式会社藤本商會本店が制定した記念日として、2014(平成26)年に認定・登録されています。同社では「箸の日」を、「正しい箸の持ち方や箸への感謝を表し、日本の食文化を見つめ直す日」としています。


【箸はいつから使われている? 日本の箸文化の歴史】

■日本の箸のルーツは弥生時代の遺跡から

日本で箸が使われ始めた時期については諸説あります。農林水産省は、弥生時代から飛鳥時代ごろと推定されていると紹介しています。一方、奈良文化財研究所によれば、弥生時代や古墳時代の遺跡から箸は確認されておらず、箸を使う食事法が本格的に普及したのは奈良時代ごろと考えられています。初期には、竹を折り曲げたピンセット状の「竹折箸」が、祭祀などに用いられた可能性も指摘されています。

■奈良時代には2本ひと組の箸が定着

中国文化の影響を受け、日本では奈良時代になると、現在につながる2本ひと組の箸を使う食文化が広まったとされています。

■平安時代には箸に「作法」が

平安時代には、宮廷の儀式や宴席で箸が使われ、箸台や箸箱などの道具も用いられていました。その後、室町時代には日本料理の作法が整えられるなかで、箸の使い方にも細かな決まりが生まれ、食事における箸の作法も整えられていきました

■江戸時代以降、身近な道具として定着

江戸時代末期には、日本独自の「割り箸」が登場し、飲食店や来客用として広く普及しました。また、日本では家族それぞれが専用の箸を使う「銘々箸」の文化も発展。素材や形、用途によってさまざまな箸が生まれ、現在の豊かな箸文化へとつながっています。


【箸のマナーで気をつけたいこと|嫌い箸・忌み箸をわかりやすく紹介】

日本では、箸は単なる食事の道具ではなく、相手への心遣いや礼儀を表すものとして大切に扱われてきました。そのため、箸の持ち方や使い方には、避けるべきとされる作法があります。

■「嫌い箸」とは? 

「嫌い箸」とは、食事の場で行儀が悪いとされる箸の使い方のこと。代表的なものには、以下のようなものがあります。

・刺し箸:料理に箸を突き刺して取ること
・迷い箸:どの料理を取るか、料理と料理の間で箸を迷わせること
・拝み箸(おがみばし): 両手で箸をはさみ、拝むようにする所作
・掻き箸(かきばし): 器の縁に口を当てて、箸で掻き込む所作。また、箸で頭をかく所作
・移り箸:一度ある料理を取ろうとして箸をつけたあと、取らずに別の料理へ箸を移すこと
・ねぶり箸 :箸をなめる所作
・寄せ箸:箸を使って器を引き寄せること
・渡し箸:箸を器の上に渡して置くこと

いずれも、料理を作った人や同席する人への配慮に欠ける行為として、避けられてきました。

■「忌み箸」とは?

「忌み箸」は、特に葬儀や弔事を連想させるため、縁起が悪いとされてきた箸使いです。その代表が「合わせ箸(箸渡し)」です。ふたりでひとつの食べ物を箸から箸へ渡す行為は、火葬後の骨拾いの作法を連想させるため、日常の食事では避けられています。

ご飯に箸を突き立てる「仏箸(立て箸)」も、仏事で故人に供える枕飯を連想させるため、行ってはいけない箸使いとされています。

■美しい箸使いは相手への思いやり

箸のマナーには、食事をともにする人や料理への敬意が込められています。正しい箸使いを身につけることは、日本の食文化を受け継ぎ、心地よい食事の場をつくることにもつながります。


【箸にはどんな種類がある? 素材や用途による違い】

毎日の食卓で使う箸には、実は素材や形、用途によってさまざまな種類があります。使う場面や料理に合わせて、工夫が重ねられてきました。

■素材は?

箸の素材には、木、竹、金属、合成樹脂などさまざまなものがあります。日本で古くから使われてきた木製の箸は、手になじみやすく、温かみがあるのが特徴です。杉や柳、ヒノキのほか、さまざまな木材が用いられ、漆を塗った「塗り箸」には、耐久性や美しさを高める工夫が施されています。また、竹箸は軽くて扱いやすく、菜箸など調理用の箸にも多く使われています。

■用途によって使い分けられる箸

日本では、食事用だけでなく、料理を作る、取り分けるなど、目的に応じた箸が発達しました。

代表的なものには…
・銘々箸:一人ひとりが使う食事用の箸
・菜箸:調理や盛り付けに使う長い箸
・取り箸:大皿の料理を取り分けるための箸
・盛り付け箸:細かな料理の盛り付けに適した箸
などがあります。

また、祝い事で用いる「祝い箸」など、特別な場面に合わせた箸もあります。

■形や加工にも職人の工夫が

箸の形にも、丸型、角型、先細型、平型などさまざまな種類があります。先端を細く削った箸は、魚の小骨を取ったり、細かな料理を扱ったりする日本料理と相性がよく、繊細な食文化を支えてきました。現在のように、使用時に2本に割る形の割り箸は、明治初期に作られるようになったとされています。その後、飲食店などを中心に広く普及しました。衛生面や手軽さから飲食店を中心に広まり、日本独自の箸文化のひとつとなっています。


【「箸の日」に知っておきたい豆知識】

■お気に入りの箸を長く使うためには

木製や漆塗りの箸は、日々のお手入れによって、風合いを保ちながら長く使うことができます。使用後は、やわらかいスポンジなどで優しく洗い、水に長時間浸けたままにしないことがポイントです。木地が傷む原因になるため、洗ったあとは水分を拭き取り、風通しのよい場所で乾かしましょう。また、漆塗りの箸は高温や長時間の浸水に弱いものもあります。食器洗浄機を使用する際は、必ず商品の取扱表示を確認し、「食洗機対応」と明記されたものだけを使用しましょう。

毎日の食事で使う箸だからこそ、丁寧に扱う行為は道具への感謝にもつながります。役目を終えた箸は、自治体の分別方法に従って処分するほか、神社や寺院で行われる箸供養に納めるのもおすすめです。

■愛着あるお箸なら修理も検討

木製や漆塗りの箸は、使い込むほど手になじみ、愛着が深まる道具です。傷んだ箸をすぐに処分するのではなく、修理や塗り直しをして使い続けることを検討してみてはいかがでしょうか。

たとえば、箸専門メーカーの「兵左衛門」では、漆の塗り直しや、折れた箸先の修理などのメンテナンスを受け付けています。漆がはがれた箸をそのまま使い続けると木地を傷める場合があるため、修理によってお気に入りの箸を長く愛用できるようにしています。

■役目を終えた箸に感謝する「箸供養」

長く使った箸や古くなった箸を供養する「箸供養」が日本各地で行われています。箸は毎日の食事に使う身近な道具である一方、かつては人の魂が宿るもの、神聖なものとして考えられていました。そのため、使い終えた箸を粗末にせず、感謝を込めて納める風習が生まれたとされています。

「箸の日」を制定した藤本商會本店も、愛知県豊橋市の龍拈寺に「箸塚」を建立し、30年以上にわたって箸供養を実施。また、東京都千代田区の日枝神社でも、古い箸を供養する「箸感謝祭」が行われています。

■世界にも広がる箸文化

箸は、中国、韓国、ベトナムなど、東アジアを中心に使われていますが、素材や形、使い方にはそれぞれ違いがあります。例えば、中国の箸は日本のものより長く、取り分けにも使いやすいかたちが一般的です。一方、韓国では金属製の箸が多く、食器との組み合わせにも特徴があります。日本の箸は、先端が細く、料理をつまみやすいかたちに発展してきた点が特徴で、魚料理や細かな盛り付けなど、日本料理の繊細さと深く結びついています。

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毎日の食卓で何気なく使っている箸ですが、お気に入りが見つかると、料理がいっそう美味しく感じられるような気がしませんか? 手軽に使える食洗機対応タイプと、漆などクラフツマンシップを感じられるタイプとで、箸選びに迷う人も多いのではないでしょうか。お箸は日本の食文化や礼儀作法を映し出す存在でもあります。「箸の日」をきっかけに、いつも手にしている箸をあらためて見つめ、その使い方や扱い方について考えてみてるのもいいですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /一般社団法人日本記念日協会(https://www.kinenbi.gr.jp/) /藤本商会本店(https://www.fujimotoshokai.com) /兵左衛門(https://www.hyozaemon.co.jp) /日枝神社「箸感謝祭」(https://www.hiejinja.net/events/) /万葉百科 奈良県立万葉文化館「歌詳細」(https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/detailLink?cls=db_manyo&pkey=1804) :