秋の奈良の風物詩、正倉院展は1300年の時を超えたロマンの宝庫!

毎年10月末から11月上旬にかけて奈良国立博物館で開催される正倉院展。今年のメインビジュアルは、海を越えて日本にやってきた美しい水差しです。1300年前の人々を目の前に感じられる…。その奇跡を、正倉院展担当の研究員・三本さんが語ります。

三本周作さん
奈良国立博物館学芸部文化財課美術工芸室主任研究員
日本彫刻史を専攻し、特に仏像の金銅製荘厳具の分析から仏師系統や金工工人の動向等を探る研究を行ってきた。正倉院展には’18年より関わり、’21年からは主担当に。

【今月のオススメ】第78回 正倉院展

展覧会_1
北倉 漆胡瓶(しっこへい)

「胡瓶(こへい)」は西アジアに由来する把手付きの水差しのこと。この『漆胡瓶』は、黒漆地に、草花のほか鹿やオシドリなどさまざまな文様の形に切った銀の薄板を貼り、繊細な装飾を施した華やかな名品。

中国・唐からの舶来品と考えられ、シルクロードのロマンが漂う。正倉院の起源となった、聖武天皇の遺品6百数十点の詳細を記した目録『国家珍宝帳』に記載されている。

展覧会_2
南倉 伎楽面 酔胡王

朝鮮半島の百済から伝わった仮面劇「伎楽(ぎがく)」は、奈良時代の寺院で盛んに演じられていた。正倉院には、当時のままに近い伎楽面が171面伝わっており、正倉院展でも人気を呼んでいる。

本作は酒に酔ったペルシアの王を表した面で、目を見開きぐいっと歯を剥いたユーモラスな表情と、丈の高い冠帽(かぶりもの)が目を引く。


正倉院展は、毎年、秋に正倉院で宝物の点検が行われる時期に合わせて、その一部が一般に公開される展覧会です。第1回の開催は、戦後すぐの昭和21年。そこから80年、今年で第78回を迎えます。

正倉院について教科書的な説明をすると、もともとは東大寺の正倉で、奈良時代に日本を治めた聖武天皇のご遺愛品を中心に、さまざまな宝物が納められていました。その数、約9000件。西アジアから中国を経由して日本にやってきた、当時一級の工芸品も多数あり、よく「シルクロードの終着点」といった呼ばれ方もされます。

1300年も前のものが、当時の姿を残して今に伝えられている。しかも、地中から発掘されたわけでもなく、一度も土に埋まることなく、宝庫の開扉に天皇の許可を必要とする「勅封(ちょくふう)」などの厳重な管理のもとで大切に守られてきた。これは本当にすごいことで、世界でもほかに類を見ません。私は、研究員として正倉院宝物を目近にするたびに、その奇跡に深く感じ入ってしまいます。

今回の正倉院展も、魅力あふれる宝物が目白押しです。美しい工芸品はもちろん、当時のものづくりの知恵がうかがえる宝物もお目見えし、人々の息づかいを感じていただける内容になっています。

会場で実際に宝物の前に立てば、時を超えてきたその存在感に圧倒されると思います。それぞれの魅力をあますところなくお伝えするべく、館をあげて工夫を凝らした展示に取り組みますので、ぜひ足をお運びください。(談)

<Information>第78回 正倉院展

象牙製の碁石や舶来の水差しなど、聖武天皇の身辺に置かれた遺愛品の数々をはじめ、当時の人々の祈りの心を伝える経典や、東大寺の大仏開眼会で使われた箱など、多様な宝物60件を紹介。うち11件が初出展。正倉院の神秘性を示す異色の宝物として、『虹龍』と名付けられた動物のミイラも話題に。室町時代に将軍足利義教が「竜日干」を見たと記録されている。近年の研究でニホンテンと判明。

会場/奈良国立博物館
会期/2026年10月24日(土)〜11月9日(月)まで開催

問い合わせ先

奈良国立博物館

TEL:050-5542-8600(ハローダイヤル)

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