【目次】

「発酵の日」とは? 8月5日になった理由を解説

■制定したのはあのCMの…

食品メーカーのマルコメ株式会社が制定したのが、8月5日の「発酵の日」。マルコメといえば坊主頭の男の子のCMでおなじみの、だし入り味噌のパイオニアですね!

■目的は?

日本の食を支えてきた味噌や醤油などの、発酵食品の良さをさらに広めるのが目的です。同社によると、「和食には、豊かな旬の食材や地域に根づいた郷土料理、栄養バランスのとれたメニュー構成、いただきますやもったいないの精神など、おいしさだけではない素晴らしい文化があり、そのひとつである発酵食品は日本が世界に誇れる食文化。その魅力を、より多くの人たちに知ってもらいたい」として制定したのだとか。

■日付の意味

これはおわかりですね。「はっ=8」「こう=5」の語呂合わせから、8月5日になりました。2012(平成24)年、マルコメ株式会社の申請により、日本記念日協会が制定しました。

実はそれより以前の1994(平成6)年に、万田発酵株式会社が8月8日を「発酵食品の日」として制定。発酵の「8」と、末広がりで無限の可能性を意味する「八」の語呂合わせに由来します。


【発酵とは? 腐敗との違いや発酵の仕組みをわかりやすく紹介】

■発酵とは?

発酵とは、微生物や微生物がつくる酵素の働きによって、食品に含まれる成分が変化する現象です。

■発酵と腐敗はどう違う?

ざっくりいうと、その作用が人間にとって有用なものを「発酵」、そうでない場合を「腐敗」と呼びます。関わる微生物の種類などではなく、人間にとって都合がいいかそうでないかの違い。現象としては同じです。

■発酵の仕組み

以下の工程を経て「発酵食品」になります。

1)食品中で麹菌、酵母、乳酸菌などの微生物がはたらきます。

2)微生物や微生物がつくる酵素が、でんぷんや糖、たんぱく質などを分解します。

3)その過程で、アルコール、乳酸、酢酸、炭酸ガス、アミノ酸などが生成され、味や香り、食感、保存性が変化します。

■発酵の種類と代表食品

◆麹菌を利用する発酵・醸造:味噌、醤油、日本酒、みりんなど
◆納豆菌による発酵:糸引き納豆
◆酵母によるアルコール発酵:日本酒、ワイン、ビール、パンなど
◆乳酸菌による乳酸発酵:ヨーグルト、漬物、キムチなど
◆酢酸菌による酢酸発酵:米酢、ワインビネガーなど

■発酵の効果

発酵食品の多くは、塩分や温度、水分などを調整し、人にとって有用な微生物がはたらきやすい環境をつくることで、腐敗を抑えながら製造されます。

発酵の魅力は、なんといっても素材のうま味を引き出すこと。発酵によって、アミノ酸や有機酸、香りの成分などが生まれ、原料にはなかった味わいや風味が加わることがあります。また、食品によっては栄養成分が増えたり、消化しやすい形に変化したりする場合もあります。

江戸時代の本の多くに「味噌は体にいい」と記されています。当時、科学的に分析したわけではありませんが、経験的に認知されていたから発酵食品はつくられ、食べ続けられてきたのです。

発酵の主な魅力は、「保存性を高める」「味や香りを豊かにする」「食品の成分を変化させる」の3点です。

 


【発酵食品が愛される理由とは? 日本の食文化との深い関わり】

■日本の発酵の決め手は「麹」

日本の発酵食品の大きな特徴は、麹を使用していること。麹は、蒸した米や麦、大豆などに麹カビを繁殖させたもので、甘味があり、種々の酵素を含みます。味噌、醤油、みりん、酢、酒、焼酎はすべてこの麹を使ってつくられます。

中国では麹を麦や大豆でつくりますが、稲作が盛んだった日本では米で麹をつくるようになりました。お供え物のご飯に生えたカビが麹の始まりという説もあります。もともとは中国から伝わった技術(現象)ですが、米で麹をつくるようになってから、日本の発酵技術は格段に進歩しました。

■「麹菌」は日本の発酵文化を支えてきた“国菌”

麹菌はカビの一種で、日本の食文化に欠かすことのできない「コウジカビ」の総称です。日本古来の発酵調味料や発酵食品の多くに用いられる麹菌は、2006(平成18)年に日本醸造学会によって「国菌」と認定されました。米麹、麦麹、大豆による豆麹などを巧みに利用して、日本人は多様な発酵食品を生み出してきたのです。

日本は年間を通して湿度が高く、特に夏季は高温多湿になります。この気象状況は食品が傷みやすい(腐敗しやすい)という課題があった一方で、カビや酵母、乳酸菌などの微生物が繁殖するには最適な環境。先人たちは人体に有害な「腐敗」を防ぎつつ、有用で保存がきく「発酵」へ誘導する技術を、長年の生活の知恵として身につけてきたのです。

■主な発酵食品

味噌以外の日本の食卓に欠かせない発酵食品について紹介しましょう。

・醤油:小麦と大豆を原料とする醤油麹に食塩水を加え、発酵させて絞った液体調味料。日本食の味つけのもととなることから「下地(したじ)」、またその色から「紫(むらさき)」などとも呼ばれます。

・納豆:蒸した大豆に納豆菌を作用させて発酵させた「糸引き納豆」を一般的に納豆と呼びます。独特の粘りと風味が特徴です。ほかに、蒸した大豆と麹で麹豆をつくり、塩水に浸けて発酵させたあと乾燥させた「塩辛納豆」が。ちなみに豆菓子の「甘納豆」は発酵食品ではありません。

・ぬか漬け:米ぬかと塩、水を混ぜて発酵させた「ぬか床」に野菜を漬け込んだもの。ぬか床に棲んでいる乳酸菌や酵母が野菜に入り込むことで、独特の香りと風味が生まれます。生野菜より、ビタミンB1などの栄養価が大幅にアップすると言われています。

・かつお節:カツオを煮熟し、焙乾したものが「荒節」です。荒節の表面を削って整形したものを「裸節」、さらにカビ付けと乾燥を行ったものを「枯節」と呼びます。カビ付けを数回重ねたものは「本枯節」に分類されます。


【「発酵の日」に知っておきたい豆知識|世界の発酵食品や発酵文化も紹介】

■「麹菌」は食品づくりに利用されるカビの仲間

日本には古くから続いている種麹屋(たねこうじや)という業態があり、ここから全国の醸造業者は種麹(麹菌の胞子を集めたもので「もやし」と呼ばれます)を入手して味噌や醤油をつくっています。

麹菌はカビの仲間ですが、味噌や醤油、日本酒などに使われる種麹は、専門業者によって選抜・管理された菌株です。食品製造に用いられる麹菌は、長年にわたって安全性を確認しながら利用されてきました。

■米味噌と麦味噌、どう違う?

米味噌の製造方法が全国に広がったため、通常「味噌」といえば米麴を使った味噌のことを指します。九州地方でよく食べられている麦味噌は、米麹ではなく麦麹を使ったもの。麦味噌は大豆ではなく麦を使うのだと思っている人もいるかもしれませんが、どちらも主原料は大豆です(小豆やひよこ豆でもおいしい味噌ができますよ)。麦麹を使ったものは「麦味噌」と呼びますが、米麹を使った味噌をあえて「米味噌」と表記することは少ないようです。

■「麹」と「糀」は同じもの?

同じものをさしますが、「糀」は米に麹菌の白い胞子が花が咲いたように繁殖した様子からついたもの。日本人の感性が生み出した漢字なのです。

■世界の発酵食品3選

・シュールストレミング/スウェーデン:塩漬けにしたニシンを缶詰にしたもので、その匂いは「世界屈指の強い発酵臭」と言われます。缶詰の中でも発酵が進むため、ガスが発生して缶が膨らむことも。厳しい冬を乗り切るための貴重な保存食です

・テンペ/インドネシア:インドネシアの伝統的な大豆の発酵食品。納豆に似ていますが、独特の粘りや匂いはありません。油で揚げたり、焼いたり煮たりして食べます。近年では「ヴィーガン(植物性肉)」の代表格として世界中で人気を集めています。

・インジェラ/エチオピア:エチオピア特産の穀物であるテフを発酵させ、クレープ状に薄く焼き上げたエチオピアの主食。野菜や肉の煮込み料理などをのせ、インジェラをちぎって包むようにして食べます。

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古くは縄文時代までさかのぼるともいわれている日本の発酵文化。風土や生活環境による知恵が生かされた発酵食品には、先人の知恵が詰まっているのですね。日々の食事に適量を取り入れたいものです。「塩麹」や「レモン麹」など、肉や魚を漬けるのに使ってみると、うま味がアップして、奥深い味わいになります。最近注目されている「パイナップル麹」は、パイナップルの果肉と米麹でつくる麹で、料理に使うだけでなく、ジャムのようにパンなどつけてもおいしいですよ。

ただし、「発酵食品であれば、どれも同じ健康効果が得られる」というわけではありません。食品によって含まれる微生物や成分は異なり、味噌や醤油、漬物などは食塩量にも注意が必要です。それぞれの特徴を知り、日々の食事に適量を取り入れながら、日本や世界の豊かな発酵文化を楽しみたいですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/一般社団法人 日本記念日協会( https://www.kinenbi.gr.jp/ )/マルコメ株式会社( https://www.marukome.co.jp/ )/パールエース( https://www.pearlace.co.jp/know-and-fun/tips/post-147.html )/農林水産省( https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2211/spe1_01.html ) :