世界一のワイン造りを目指す、高山ワインのフラッグシップ【信州たかやまワイナリー】
自治体と民間がタッグを組んでつくった、高山村が誇るワイナリー
このワイナリーの醸造責任者に指名されたのは、メジャーなワインメーカーから転職して高山村にやってきた鷹野永一氏。前出の自治体の専門職員として就任した人物だ。こうして醸造用ブドウを供給する13人の栽培家とそれをサポートする村役場のトライアングルが出来上がったのである。
早速まだできたばかりの、ピカピカのワイナリーを鷹野氏に案内してもらう。
ワイナリーで一番こだわったところを聞くと、こんな答えが返ってきた。
「一番気を使ったのは衛生管理です。特に排水には神経を使う。雑菌予防のため高圧洗浄しやすいように角度を丸くした水路の設計など独自に考えました。虫を取る機械では、取った虫が外部から入ってきた虫なのか中から発生した虫なのかを細かくモニタリングしています」。
企業で培った豊かな経験を生かした、ワイナリーづくり
醸造の仕方も鷹野氏ならではの経験が光る。ワイナリーを建てる土地の高低差を利用し、収穫したワインに負荷をかけないように醸造するグラヴィティ・フローシステムを採用。
また、高山村とワイナリーの置かれている土地の特徴を理解したうえでその気候環境を活かしているのも面白い。「冬には醸造所内は零下5度くらいになるんですが、その温度になると酒石が自然と沈殿して、除去しやすくなるんですよね」気候条件もうまく利用することにより作業の軽減につながるという。他のワイナリーの設備を見に行くと、それぞれの特徴を活かしてどんなワインを作りたいのか即座にわかるという。 “ワインメーカーで経験していないのは工場長だけ” という鷹野氏が大手メーカーで培った経験と知識が、様々なところで活かされているのだ。
こちらで作られる一番数量の多い『ヴァラエタル・シリーズ』は高山村産のブドウ100%で作られる。もともとその品質の高さから、大手メーカーの引き合いも多い高山村産のブドウ。醸造開始初年度の2016年、栽培地の中で醸造されるワインへの期待を込めて出資者でもある栽培者から丹精込めて育てられたブドウが寄せられた。それぞれが思い入れのあるブドウ品種だ。
取材時は、2016年産のブドウを2017年の5月に木樽に入れて熟成させている状況だった。鷹野氏は定期的にテースティングしてワインの状態を確かめる。この時は仕込んでから4か月目。思っていたより熟成が早く進んでおり、12月上旬にはビン詰めできるかどうかを判断するという。その後約2か月のあいだ静かに休ませて2018年の早い時期の出荷を見込む。
気軽に飲めて、皆から愛されて欲しいー高山村のワインに込める思い
ワイナリーはその土地のもつ特性や気候条件などの要素が非常に重要と言えるだろう。しかし鷹野氏はそれにやや異論を唱える。
「確かに土地の傾斜や日照時間といった特性は大切な要素の一つではありますね。しかし、その条件を利用してさらに魅力を引き出し想定されうるブドウやワインを作っていくのは、そこで働く人間の思いなんです」
このワイナリーの周りでは、代表取締役の涌井一秋さんが自治体と協力し、かつて小区画の遊休農地だった土地を借りて、ワイン用のブドウを植えている。そういったことが可能なのも、自治体と協力して運営するワイナリーだからこそだ。
そのブドウが成長し、収穫するまでまだ時間はかかる。けれど、数年後にはワイナリーの周りに美しいブドウ畑がひろがり、遠く北アルプスを見渡す美しい光景が現れるだろう。自分が今まで得たものをすべて地域の小さなワイナリーで表現することで村のワイン作りに大きく貢献している鷹野氏をはじめ、ここには自分の人生をかけた男たちのロマンがある。
鷹野氏は、まだ小さなブドウの苗木を眺めながら顔をほころばせてこう話す。
「これからはワイン造りを行いながら周辺の開発、例えばこの眺めのいい風景を楽しめるカフェやワインを楽しめるコミュニティスペースを作って行きたいですね。ウチが村のマグネットみたいになって、ここからブドウ畑や温泉に人々が周遊していく、そんな風になればいいな、と思っています」。(2017.11.09)
株式会社信州たかやまワイナリー
- 株式会社信州たかやまワイナリー TEL:026-214-8726
- 住所:〒382-0823 長野県上高井郡高山村大字高井字裏原7926
記事元:ヒトサラ https://hitosara.com/contents/oishii_nippon/studying/01/index_02.html
- TEXT :
- ヒトサラ編集部
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- EDIT&WRITING :
- ヒトサラ編集部