【目次】

【「国際左利きの日」とは? 制定の由来と8月13日になった理由】

  • ■8月13日は「国際左利きの日」

  • 1992年、イギリスにある「Left-Handers Club(左利きクラブ)」によって提唱・制定されたのが「国際左利きの日(Left-Handers day)」です。

  • ■なぜ8月13日?

  • 「国際左利きの日」の日付は、提唱者であるディーン・R・キャンベル氏の誕生日に由来する…という説がありますが、不吉な数字とされる“13”日にちなみ、左利きに対する偏見や迷信をなくすためにこの日付が選ばれた、ともいわれています。

  • ■なぜ制定された?目的は?

  • 世の中の日用品や道具類、設備の多くは右利き用にデザインされているので、左利きの人特有の苦労や安全上のリスクが発生することも…。左利きでも安全に使える道具類を開発・製造・販売するように、「国際左利きの日」を制定してメーカーに呼びかけようとしたのです。左利き用商品の販売促進も目的のひとつといわれています。

  • また、「国際左利きの日」は左利きの人の多様性や個性を祝福する日でもあります。海外では、右利きの人が左手を使って1日過ごすチャレンジや、左利き用グッズの体験イベントなどが開催されています。


【左利きはなぜ生まれる? 利き手が決まる仕組みと割合】

日本人は右利きが多いといわれますが、なぜ「右利き」「左利き」と別れるのでしょう。利き手の基礎知識について解説します。

■利き手とは?

手を使って動作をする場合、その器用さや運動能力が優れているほうの手を「利き手」と言い、多くは幼少期に「右利き」か「左利き」かに確立します。

■利き手が決まる仕組み

利き手が決まる仕組みは完全には解明されていません。大規模な遺伝学研究では、利き手には多数の遺伝的要因が関係していることが示されており、脳の左右差や発達過程、環境・文化的要因などが複雑に関わると考えられています。

■「圧倒的右利き多数」は世界共通

「日本人は右利きが多い」というのはご存知ですね。とはいえ、国や公的機関は利き手の比率について調査・発表をしていません。国勢調査や厚生労働省による国民生活基礎調査などは、社会保障や医療体制の構築を目的としたもの。利き手は個人の身体的特徴であって病気や障害ではないため、公的調査の項目に含める必要性が低いのです。

2020(令和2)年に発表された世界最大規模の利き手に関する共同研究によると、世界全体での左利きの推計値は10.6%と報告されています。日本国内の複数の調査・研究では、右利きが約88.5%、左利きが約9.5%〜11%前後。さらに、両利き(クロスドミナンス含む)が約2%というデータが一般的に用いられているようです。日本人はともかく、世界的にも左利きの人は約1割しかいないとは驚きです。

■なぜ右利きが多い?

利き手は両親の傾向に比例するという研究もありますが、実は先天的なものより後天的、育った環境や文化によって優位性が変化します。日本をはじめ東アジア諸国やヨーロッパでは「右側尊重」の伝統が強いので、左利きを矯正するという社会的圧力が高かった時期がありました。「小さいころは左利きだったけど、小学校に上がる前に右利きになるよう訓練させられた」と記憶している人もいるのでは? 日本語(平仮名、片仮名、漢字)は、右手で書きやすいようにできています。


【左利きならではのメリット・デメリットとは? 日常生活で感じる違い】

■左利きのメリット

左利きだからといって、右利きより直感力や情報処理能力が高いと科学的に証明されているわけではありません。一方で、左利きであることが有利に働く場面として研究されているのが、対戦型スポーツです。

◆スポーツで相手が対応しにくいことがある

左利きは右利きに比べて数が少ないため、右利きの選手は左利きの相手との対戦経験が少なくなりやすいと考えられています。そのため、相手と直接対峙する競技では、左利き特有の攻撃方向や動きに対応しにくいことがあり、戦術上の利点につながる可能性があります。実際、野球や卓球など、素早い反応が求められる一部の競技では、トップレベルの選手に左利きが比較的多いことを示した研究もあります。

◆道具によって左右の手を使い分けられる人もいる

左利きの人のなかには、文字を書く、箸を使う、ボールを投げるなど、動作によって使う手が異なる人もいます。このように、活動によって優位な手が異なることは「クロスドミナンス(交差利き)」などと呼ばれます。左右の手を使い分けることで脳が発達したり、情報処理能力が高まったりするとまでは断定できませんが、道具や場面に応じて使いやすい手を選べることは、日常生活のなかで実用的なメリットのひとつといえそうです。

■左利きのデメリット

・道具が使いづらい:日常品や道具、社会的な設備は右手で使うように最適化されているので、使いづらさを感じる場面や状況は多いもの。特に、一般的なハサミや包丁、カッターナイフ、缶切り、急須、注ぎ口が付いた片手鍋やお玉などは、左手ではとても扱いづらく、ハサミなどはよく切れません。

たとえば自動改札機や自販機など、切符やコインの投入口やICカードのタッチ部分なども右側にあるので、左利きの人は体をクロスさせるか、利き手ではない右手で操作することに。ドアノブやレバーの回転方向も、右手で扱いやすいように設計されています。カメラもシャッターボタンや安全装置は右側にあるため、左利きの人は構え方や操作に工夫が必要です。

・文字を書く際に支障がある:日本語の平仮名、片仮名、漢字は、左から右へ、上から下へ書くようになっていますね。左から右へという動作は「引く」行為ですが、これを左手で書くと「押し出す」ことになり、ペン先が引っかかりやすいというデメリットが。また、横書きの場合は左から右へと書き進めるため、左利きの人は書いた文字の上に左手が被さることになり、文字列のバランスがとりにくかったり、インクなどで手が汚れやすいということにも。日本語だけでなく、英語をはじめとする多くの言語は右手優位にできています。

・隣の人と肘や手がぶつかる:右利きの人の右側に左利きの人が座ると、互いの利き手がぶつかりやすいという状況に。左利きの人が左端の席に座ることでその問題は解消されますが、会食などで上位の席が左奥だとそうはいかないという状況も…。また、テーブルマナーとしての食器の配置も右利きが基準です。グラスに手を伸ばすときなどに不便を感じることもあるでしょう。


【左利き用の道具にはどんなものがある? 身近なアイテムをチェック】

「国際左利きの日」は、左利きの人が安全に使える道具類が流通することを目的として制定された記念日でしたね。ここでは左利き用の道具をご紹介します。

■文房具

・ハサミ:刃の合わせ目(上に来る刃)が左右逆で、左手で握った際に刃同士がスムースに噛み合う構造。ハサミを手にしてみるとわかりますが、通常のハサミを左手で使うと切るラインが見にくいもの。左手用のハサミはそれも解消されます。

・カッターナイフ:左手にフィットするようにボタンの位置やグリップが設計されています。

・定規:左利きの人が右から左に線を引く際に見やすいよう、メモリは右から左に配置されています。上下や表裏でメモリの方向が異なる両用タイプも。

・万年筆:左利きだとペン先を紙に押し付ける「押し書き」になるため、通常のものとはペン先の構造が異なる左用万年筆があります。ペン先が当たる角度、左手特有の「ペンを寝かせ気味に持つ」「左上から右下へ押し出す」という特徴でも滑らかに書けるよう、ペンポイント(先端)が全体的に丸く、左右均等に丸みを持たせて研磨されています。また、押す力が直接ペン先にかかるため、柔らかいペン先だと先端が開いてしまい、紙の繊維を引っ掛けたりインクが途切れたりしがち。そのためペンポイントをやや硬めに設計し、圧力がかかっても先端が開きすぎないように補強されています。小さなペン先に、驚くべき工夫や技術が投入されているのです。

・手帳:月間でも週間でも日毎でも、日付はそのスペースの左上にあるのが一般的ですが、左利き用の手帳は右上に印刷されています。また、通常のものとは逆の、右ページにダイアリー、左ページにメモ覧があるので、スケジュールを見ながらメモ欄に書き込むときもスムーズです。

■キッチン用品

・片刃の包丁:出刃包丁や刺身包丁などの和包丁は、刃のついている面が左右非対称。そのため、左手で包丁を握った時に安全に切れるよう「左利き専用の片刃」でつくられています。

・注ぎ口付き片手鍋、お玉:通常とは逆の、ハンドルの右側に注ぎ口が付いたもの。両手用に左右に注ぎ口がある片手鍋や、360度どこから注いでも液だれしないユニーバーサルデザインの商品もあります。

・缶切り、ピーラー:刃の向きや回す方向が逆。左手での動作がスムーズです。

・ティーポット、急須:ハンドルが本体の左側に付いている、左手で握って注ぐ設計に。後手(注ぎ口と反対の場所)にハンドルがあるものは、利き手に関わらず使えます。

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■日用品

・財布:右利きの人にはイメージしにくいかもしれませんが、ファスナーなどの開閉も一般的には「右手で左から右に引きやすい」仕様になっています。左利き用の財布は、小銭入れやカードポケットの開閉方向が左右逆。左手でお札やコインが取り出しやすいように設計されています。

・トランプ:これは目からウロコ! 通常、トランプの数字やマークは左上の角に付いています。これは、右利きの人がトランプを扇状に広げたときに、左上角が見えることに起因しているのだとか。左利きの人が扇状に広げると右上角が見えるので、4つの角すべてにマークが印字されているものが。これなら利き手に関わらずゲームを楽しめますね。


【「左利きの日」に知っておきたい豆知識|世界の左利き事情や著名人も紹介】

■「サウスポー」の由来

左投げのピッチャーを「サウスポー」と呼ぶことから、「サウスポー」は左利きの代名詞として使用されていますね。この野球のサウスポー命名の由来は、野球場の構造にあり! 午後の強い日差しがバッターの目に入りにくいよう、ホームベースからピッチャーマウンドに向かう方向が東北東になるような球場設計が推奨されています。そのため、左投げのピッチャーがホームベースに向かって投げる際、南[south]から腕[paw]が振られるため、[south paw(南の手)]と呼ばれるようになったのだとか。

これはあくまで有力とされてきた説のひとつ。MLB公式サイトによれば、野球で「south paw」という言葉が使われた初期の例はピッチャーではなく野手を指したもので、さらに野球より前には、ボクシングなどで左手や左手による一撃を「south paw」と表現した例も確認されています。つまり、「サウスポー=球場の南側から腕を振る左投手」が語源、と断定することはできません。由来には諸説あるものの、やがて野球で左投手を表す言葉として定着し、現在では広く「左利き」を意味する言葉として使われています。

■動物にも「利き手」はある?

人間ほど複雑な動作をしませんが、利き手の傾向が見られる動物も。

猫や犬は器用に前脚を使うことがあります。たとえば狭い隙間に入ったおもちゃやお菓子を掻き出そうとする行為で、どちらの前脚を使うか? 階段や段差を降りる際、どちらの前脚から下ろすか? こういったことで利き手がわかることもありますが、感情に左右されることも少なくないので、数回の観察では判断がつかないようです。

■左利きで知られる著名人

最後に、サウスポーで知られるスポーツ選手や芸能人を挙げましょう。

野球界:大谷翔平さん(右投げ左打ち)、イチローさん(右投げ左打ち)、王貞治さん(左投げ左打ち)

テニス界:ラファエル・ナダル(テニスは左打ち、文字を書くのは右手)、ジョン・マッケンロー(左利き)、ゴラン・イワニセビッチ(左利き)、マルチナ・ナブラチロワ(左利き)、モニカ・セレス(左利き。フォアハンド、バックハンドはともに両手打ち)

芸能界:小栗旬さん(左利き。役柄によって右手を使うことも)、二宮和也さん(もともと左利きで、幼少期に右利きへ矯正された経験も)、竹内涼真さん(左利き。ただしスポーツでは右利き)、吉高由里子さん(左利き。役柄によって右手を使うことも)、夏帆さん(左利き)、松岡茉優さん(左利き)

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左利きは、その人が生まれ持った身体的な特徴のひとつであり、個性でもあります。利き手や利き脚が左右どちらであっても、誰もが無理なく、安全に道具や設備を使える環境が望ましいものです。

俳優の世界では、役柄や時代背景に合わせて、普段とは反対の手を使う訓練をすることもあるようです。2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』で紫式部を演じた吉高由里子さんは、右手で筆を持つ執筆シーンを自然に演じ、「普段は左手で書くとは思えない」と話題になりました。一方、2025年のTBSドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』で新境地を見せた竹内涼真さんが、左手で包丁や箸を扱う姿に目を留めた人も多かったのではないでしょうか。

何げない所作にも、その人らしさは表れるもの。左利きも右利きもひとつの特性として尊重され、どちらを利き手とする人にとっても使いやすい社会であることが、これからますます求められます。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『世界大百科事典』(平凡社)/『世界人名大辞典』(講談社)/『日本人名大辞典』(講談社) :