「ここに隠れろというならお断りよ」「クルマを替えるんです」

007シリーズ第23作「スカイフォール」(2012年)で、窮地に陥った上司のMを公用車に乗せていたジェームズ・ボンドは、ロンドンの裏通りに面したガレージにクルマを停め、シャッターを上げる。そこにはシルバーグレーに塗られたアストンマーティン『DB5』の姿が。Mの「これなら全然目立たないわね」という皮肉には、(若いのに随分と懐古趣味なのね)という、男の世界を揶揄する意図もみてとれる(本作でのMは女性)。

スーツでも軽快フットワーク「ボンドなV8」を味わえ!

アストンマーティン 『DB11 ヴォランテ』

DBシリーズの最新モデルは、3色から選べる幌を備えたコンバーチブル。エンジンはV8のみで、オープン化による重量増をものともしないばかりか、車体前後の重量バランスも理想的。上質な内装はスーツとの相性も抜群だ。

第1作の「ドクター・ノオ」(1962年)以来、長きにわたって製作されてきた007シリーズは、マンネリ化を打破するために、第20作「ダイ・アナザー・デイ」('02年)がシリーズ最高の興行成績を収めたにもかかわらず、主演を当時40歳目前のダニエル・クレイグに交代。寡黙でタフな若きボンドの成長を描く、事実上の新シリーズとして、007を再構築した。「スカイフォール」は、新世代ボンドの3作目だ。

冒頭で記したやりとりは、初期シリーズの象徴である『DB5』を登場させることで、古い年代のクルマを愛する原作小説版の設定にのっとりつつ、映画版のファンの期待にも応えた、印象的なシーンだ。時代が変わろうとも、英国紳士の正統は自国のスポーツカーであり、その頂点にアストンマーティンがある。そんな不滅のボンドカーを選ぶうえでおすすめしたいのが、『DB11ヴォランテ』だ。

アストンマーティンの旗艦モデル、『DB11』シリーズにはV12エンジン搭載モデルとV8エンジン搭載モデルがある。トップモデルは当然V12で、ストイックにスポーツドライビングを堪能するならボディもクーペがベスト。一方のV8はエンジンがコンパクトなこともあり、明らかに鼻先が軽く、専用のセッティングが施されたしなやかな足回りが、夏の夜のクルージングを優しくエスコートしてくれる。それでいて、アクセルペダルを深く踏み込んだときの加速は猛烈。男らしさを軽快フットワークで包み込んだV8こそ、モダンなボンドのキャラクターに近い。そのV8を積むオープンボディのヴォランテなら、サウンドがダイレクトに耳へ届き、爽快感は格別だ。

男らしく、しなやかなトム フォードのスーツ

007シリーズ第22作「慰めの報酬」(2008年)以来、ボンドが着用するトム フォードのスーツ。英国サヴィル・ロウの伝統を尊重した、男らしく、ラグジュアリーな仕立ては、007ファンならずとも、ワードローブに加えるべきだ。スーツ¥530,000・シャツ¥60,000・タイ¥28,000・チーフ¥22,000(トムフォード ジャパン)

ロー&ワイドなスタイリングは英国車らしい品格にあふれ、スーツをまとって運転してもよく似合う。もちろんここで選ぶべきは、英国の伝統的なスタイルをモダンに解釈し、最高のフィッティングで表現したトム フォードのグレースーツだ。「スカイフォール」は、ボンドの死と再生を描いている(本当に序盤で生死不明になる!)。

モダンで若々しいボンドのスタイルをなぞるだけなら素直にクーペを選ぶべきなのだろうが、あえてラグジュアリーなヴォランテを選ぶところに、革新を忘れない紳士の矜持がある。

アストンマーティン『DB11 ヴォランテ』
ボディサイズ:全長4,750×全幅1,950×全高1,300㎜
車両重量:1,870kg
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:3,982cc
最高出力:503PS/6,000rpm
最大トルク:513Nm/2,000~5,000rpm
トランスミッション:8速AT
価格:¥22,437,293(アストンマーティンジャパン)

※価格はすべて税抜です。※2018年夏号掲載時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2018年夏号ラグジュアリー・ スポーツカー を味わい尽くす
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クレジット :
撮影/柏田芳敬(車両)、唐澤光也(パイルドライバー・静物)スタイリスト/大西陽一 構成/櫻井 香