【目次】
- 11月5日「お香文化の日」が伝える、日本の香りの文化
- 香りを「嗅ぐ」ではなく「聞く」というのはなぜ?
- 「香道」「聞香」「組香」の読み方と意味
- 「沈香」「伽羅」「白檀」はどんな香木?
- 「線香」「練香」「匂い袋」。お香の種類と楽しみ方
【 11月5日「お香文化の日」が伝える、日本の香りの文化】
■11月5日は「お香文化の日」
愛知県名古屋市に事務局を置く、愛知県薫物線香商組合が制定した「お香文化の日」。お香の長い歴史から生まれたさまざまな製品と、それにまつわる周辺文化の普及促進を図ることを目的としています。
■日付の由来
「いい(11)・お・こう(5)」と読む語呂合わせから。
■お香の歴史
日本へは6世紀の仏教伝来と共に大陸から伝わったとされます。主に仏前を浄めて邪気を払う「供香(くこう・そなえこう)」として用いられていました。
日本でのいちばん古い記述は、720(養老4)年に成立した日本初の正史『日本書紀』。「ひと抱えもある大きな沈水香木が淡路島に漂着し、島人がそれと知らずかまどに入れて薪とともに燃やしたところ、その煙が遠くまで薫り、これを不思議なこととしてこの木を朝廷に献上した」とあります。
8世紀の奈良時代には、中国(唐)から来日した鑑真和上が、香木や生薬などを調合してつくる「薫物(たきもの)」の製法を伝えました。すると宗教儀式だけでなく、空間や衣服に香りをつけるという用途にも広がっていきます。
平安時代には紫式部の『源氏物語』や清少納言の『枕草子』など多くの書物・文献にも登場。当時は皇族や貴族など特権階級のみが使うものでした。武士が台頭して禅宗が広まった鎌倉時代は、香木そのものと向き合い、一木の香りをきわめようとする精神性が尊ばれるようになると同時に、お香の原料である香木(こうぼく)がコレクションの対象に。香木の香りを鑑賞する「聞香」の方法も確立されました。
そして室町時代に東山文化が花開いていくなかで、茶の湯と同じく香も文化の一翼を担っていきます。
経済力をもった町人が台頭した江戸時代、香文化は一気に広まります。香をゲームにした「組香」の創作や、それを楽しむために多くの優れた香道具が制作されました。香を聞くための作法が整えられ、香は「道」としても確立されていきます。その一方で、中国から手軽に使える線香の製造技術が伝わり、庶民の間にも使用が浸透していきます。
現代では、仏壇や墓での供養に用いられるほか、匂い袋や扇子に香をつけたり、ルームフレグランスとして使用するなど、趣味や癒しの道具として私たちの暮らしのなかで親しまれています。
【 香りを「嗅ぐ」ではなく「聞く」というのはなぜ?】
香道の鑑賞法聞香では、香炉の灰に埋めた香炭団の熱で、銀葉に載せた小さな香木を間接的に温め、香炉から立ち上る微かな香気を鼻元に寄せて静かに呼吸を合わせます。この佇まい自体が、まさに「香りの言葉に耳を傾ける」ような静寂と集中に満ちていることから 「嗅ぐ」ではなく「聞く」と表現するのです。
単に鼻で匂いを捉えるという実質的な行為ではなく、心と五感を研ぎ澄ませて香りと深く対話する精神的な姿勢を表しているためといえるでしょう。
【「香道」「聞香」「組香」の読み方と意味】
■「香道」とは
「香道(こうどう)」は、一定の作法に従って香木の香りを鑑賞する日本の伝統的な芸道です。香りを聞き分けながら、古典文学や四季の情景などを味わう楽しみもあります。茶道や華道と並ぶ「三道」のひとつに数えられ、室町時代の東山文化期に体系化されました。
主要な鑑賞形式には「聞香(もんこう)」と「組香(くみこう)」 があります。
■「聞香」とは
香炉の灰に火をおこした香炭団を埋め、灰の上に銀葉(雲母の薄い板)を置きます。その上に小さな香木を載せ、炭の熱で間接的に温めて、立ち上るほのかな香りを鑑賞します。
■「組香」とは
数種類の香木を焚き、その香りの違いを聞き分けて当てる風雅な遊び。四季の情景や古典文学の物語になぞらえたテーマ(「源氏香」など)に基づき、数種類の香木の香りを聞き、その同異を確かめて楽しむ香遊びです。古典文学や四季の情景などを題材にしたものがあり、決められた方法で答えを示します。例えば志野流では、「記紙」と呼ばれる用紙に答えを記します。
【「沈香」「伽羅」「白檀」はどんな香木?】
仏具店や寺院の売店などでお線香を選ぶ際、「沈香(じんこう)」「白檀(びゃくだん)」「伽羅(きゃら)」という表記を見ることがあるでしょうか。それぞれ香りに特徴があります。
■沈香
熱帯産のジンチョウゲ科の樹木からとる香木。風雨によって折れたり虫食いや菌の感染などによって樹木が傷つくと、その防御反応として樹脂が分泌され、それが長い年月をかけて熟成されて良質の香材になったものを「沈香」と呼びます。原木⾃体は軽くても、樹脂が沈着した部分は重く水に沈むため「沈水香」や「沈香」と呼ばれるように。常温ではあまり香りませんが、加熱すると幽⽞な香りを発します。
独特の苦みや辛みをベースに、樹脂特有の甘さやコク、時にスモーキーさや酸味が混ざり合う香りで、なかでも、南インド・マイソール地方に産する「老山白檀(ろうざんびゃくだん)」は、高級な白檀として知られています。
■伽羅
「沈香」のなかでも最上品のものを「伽羅」と呼びます。香りの⽣成に⻑い年⽉を要すので、⾮常に多様で複層的な香りをもつといわれます。産出量が僅少で、古来よりその価値は“⾦に等しい”とされてきました。日本の香り文化の中⼼素材としてなくてはならないもので、香道の主香材でもあります。
辛み・甘み・苦み・酸味・塩からさが絶妙に調和したような、格調高く華やかな香りが特徴。焚き終わった後の余韻(残香)も極めて長く続きます。
■白檀
熱帯地方に産する心材に甘い芳香をもつ香木です。お香の原料のほか、仏像や扇子、念珠などの材料にも使われます。古くから衣類や書物などの防虫を目的としても用いられ、正倉院御物(しょうそういんぎょぶつ)にも添えられました。
ウッディでまろやかな甘さと、爽やかさを併せ持つオリエンタルな香りが特徴です。優しく包み込むような親しみやすさも。沈香や伽羅と異なり、熱を加えなくても常温のままで強い香りを放ちます。
【「線香」「練香」「匂い袋」。お香の種類と楽しみ方】
「お香」といってもその形状はさまざまです。使い勝手や好みで選び、漂う香りを楽しみたいですね。手軽に使えるお香の種類をご紹介します。
■直接火を点けて香らせる「線香」「コーン型」
スティックタイプの線香が一般的ですが、渦巻き状のものや円錐形のコーンタイプも。燃えた灰が落ちるので受け皿などが必要です。風通しのいい場所では灰が散ったり、火が付いたまま動いたりすることもあるのでご注意を。ペットや小さなお子さんのいる家庭には不向きかもしれません。
■常温で香る「匂い袋」「文香」「防虫香」
最も手軽に使えて携帯できるのがこのタイプ。丁子(チョウジ)や甘松(カンショウ)、竜脳(リュウノウ)、白檀などを刻んで袋に詰めた「匂い袋」や、和紙に包んだ「文香(ふみこう)」は、火を使わず室温で香るように調合されたもので、インテリアフレグランスや衣服のアクセントとして気軽に使えます。箪笥や衣装ケースなどに忍ばせておく「防虫香」は、虫が嫌う香りを放ちます。
■間接的な熱で香らせる「香木」「練香」「印香」
灰に仕込んだ炭の熱で、間接的にあたためて香らせるのが「香木」や「練香(ねりこう)」「印香(いんこう)」です。
聞香に使用するのが、極小に刻んだ「香木」。香炉に盛った灰の中に炭を仕込み、表面を円錐状に整えた灰の頂点に銀葉(ぎんよう、雲母の小さな板)をのせ、その上に極小に刻んだ香木をのせ、間接的に温めて香らせます。
「練香」は、粉末にした各種香料に蜜や梅肉を加えて練り上げ、熟成させた丸薬状のお香のこと。王朝文学にも「薫物(たきもの)」として登場します。現代では主に茶の湯の席で用いられます。
「印香」は、配合した香料を梅花やもみじなど、さまざまな形に押し固めたかわいらしいお香。「練香」も「印香」も、熱灰の上にのせて薫じます。
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「お香文化の日」は11月5日ですが、これとは別に4月18日は「お香の日」とされています。『日本書紀』に595年4月の香木漂着の記述があることと、「香」の字を「一・十・八・日」に分解できることにちなみます。香らせるという点ではフレグランスと同じですが、奥深く、奥ゆかしいのがお香の特徴。香りのバリエーションも多いので、お気に入りの香りを見つけてみてはいかがでしょう?
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/愛知県薫物線香商組合( https://www.aichi-senkou.com/ )/松栄堂( https://www.shoyeido.co.jp/ )/山田松香木店( https://yamadamatsu.co.jp/ ) :

















