私たちの生活と切っても切り離せない「現金」ですが、その扱い方には思わぬ落とし穴があることも。お祝い事やお悔やみの場でのお金のやりとりには、昔からのしきたりもあり、知らないと思わぬ恥をかくことにもなりかねません。いざというときに迷わないだけの「現金の扱い方」に関する知識を、身につけておきたいですよね。
そこで今回は、女性のうつくしいふるまいに詳しい、愛されマナー学プロデューサーの平川直央子さんに、日常でついやりがちだけれど、実は失礼にあたるお金にまつわる行動、避けた方がよい行動をお聞きしました。うっかり相手をモヤモヤさせてしまわないように、以下の7つには気をつけましょう。
「現金を扱う、渡す」ときにやりがちだけど、実はNGなマナー7選
■1:お金を「むき出しのまま」手渡す
親しい間柄同士でお金をやり取りするときなど、お金をむき出しのまま渡したり、持ち歩いたりするのは美しいマナーとはいえません。
「お金そのものへの敬意だけでなく、特にお金をどなたかにお渡しする場合、ものを包んでお渡しするという行為自体が、相手を敬う気持ちの表れでもあります。そこに、日本人の奥ゆかしさ、先人が伝えてきた美意識が込められているように思います。同じ価値のものでも、むき出しでお渡しするよりはお相手に与える印象もいいですよね」(平川さん)
お金をやりとりするときには、懐紙やちょっとした紙にくるみましょう。相手への気持ちを包んで渡す、その価値観を大切にしたいものです。
■2:新築・開店のお祝いに「結びきりの水引」を使う
お祝いをお渡しするときに使うご祝儀袋には、赤と白の水引と呼ばれる飾りがついています。その結びかたにもいくつかあり、たとえば何度でもあってほしい入学祝や昇進、出産祝いには“蝶結び”を用い、一度きりであってほしい出来事には、一度結んだらほどけない”結びきり”を選びます。
では、新築や開店祝いはどうでしょうか? 新築、開店も本人にとって一世一代のイベントであることには違いないのですが、ふさわしいのは「蝶結びの水引」です。平川さんは、「新築や開店も何度あってもよいお祝い事であるため、また、さらに発展していく、といった前向きな思いを表すために、蝶結びの水引を用います」と言います。
お祝い事に関するしきたりを正しく理解しておくのも、大人のたしなみのひとつと言えそうです。
■3:結婚式のお祝いに「水引のついていない封筒」を使う
ご祝儀袋には、封筒に水引が印刷されたものなど、簡易的なものも市販されていますが、結婚式のお祝いには、水引が付いた正式なご祝儀袋を用います。
「本当にかしこまらない場合であれば、白い封筒に『お祝い』と書いてお渡しすることもありますが、お祝いの気持ちを伝えたいのであれば、やはり正式なものを使いたいですね」(平川さん)
それとは逆に、ほかの人と変わらない金額を包むのに、ひと回りもふた回りも大きなご祝儀袋を使うのも、ふさわしいとはいえません。
「ご祝儀袋は贈る場面、金額とのバランスで選ぶのがよいですね。売り場では、このご祝儀袋はこのくらいの金額相当のもの、と目安が書かれていることもありますので、参考にするとよいでしょう」(平川さん)
売り場にはいろいろなご祝儀袋が並んでいて、目移りしてしまうこともしばしば。ですが、“どれが今回の使用目的にふさわしいか”という視点も、忘れないようにしましょう。
■4:結婚式のご祝儀に「ピン札」を使う
「実は、ピン札と新札はちょっと違うんです」と平川さん。新札は、発行してから一度も使われていない紙幣のことをいい、銀行などで『新札と交換してください』とお願いすれば、受け取ることができます。
一方ピン札は、すでに出回っているけれど、まだ折れ目のついていない紙幣を指します。
「たとえば、ATMでお金を引き出したときに出てくるきれいなお札は、新札ではなくピン札である可能性が高いんです。ピン札では絶対にいけない、というわけではないのですが、結婚式のご祝儀など正式なものの場合は、できれば新札が望ましいですね」(平川さん)
こちらも、お相手には気づかれないかもしれないほどの小さな心づかい。ですが、まっさらなお札を用意することでこちらのお祝いの気持ちも高まりそうな、いい習慣です。
■5:お香典などで「紙幣を表」にして包む
なんと、現金を祝儀袋などに入れる際にふさわしい“向き”もあるのだそう。1万円札でいえば、福沢諭吉の肖像画が書かれた面が表です。
「肖像画の部分がお札の中で一番派手なので、お祝い事の場合は肖像画が表、かつ上(手前)側にくるように包むのがふさわしい向きです。反対に、不祝儀の場合は肖像画が裏面、かつ下(奥)側にくるように包みます。お札の一番地味な部分が、表にくる形になります」(平川さん)
ほんの小さな気づかいですが、それだけに、心からのお祝いの気持ちやお悔やみの気持ちが伝わりますね。
■6:会費制の結婚パーティーで「会費をご祝儀袋に入れて」渡す
結婚式の二次会や結婚パーティー自体を、会費制にするカップルは少なくありません。会費制とはいえお祝いだから、とご祝儀袋に包んで渡しがちですが、ここでも注意が必要です。
「会費は幹事の方が管理されているので、ご祝儀袋に入れると取り出すのが手間になってしまいます。金額は決まっていますし、開けやすい白い封筒に入れて、その場で封筒ごとお渡しするか、受付で封筒から取り出してお渡しするとスマートです。その場合も、お札が折れたりシワにならないよう、お財布とは別にして持っていきましょう」(平川さん)
その場にふさわしいお金の扱い方を身につけ、スマートなふるまいをしたいものです。
■7:お年玉を親が見ていないところで渡す
季節にまつわるお金のやりとりをもうひとつ。きょうだいや友人の子どもにお年玉をあげる、という人も多いでしょう。お年玉にも、気をつけるべきポイントがあります。
「お年玉は、親御さんの見ているところであげるようにしたいですね。お年玉をあげたことを後から知ることになれば、親御さんに気まずい思いをさせたり、困らせてしまうかもしれません」(平川さん)
お年玉とはいえ、お金のやりとりは気を遣うもの。相手や自分が居心地の悪い思いをしないよう、配慮したいものです。
*
平川さんは、「マナーは文化で、その時その時、時代によって変わっていくのも事実です。このマナーはダメ、こうしなければ、ということではなく、その時代や場面に合わせて、お相手の方に気づかいが伝わるようなふるまいを選択していけるといいですね」と言います。
現金の扱い方には特にタブーが多い印象もありますが、あくまでもマナーとは相手への気づかいです。そのことを忘れず、大人の女性にふさわしいふるまいを身につけたいですね。
愛されマナー学
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- よりみちこ