「パラッツォ・パリージ」のオーナーは、ミラノ近郊で建設会社を営む家庭に育った建築家の女性。設計はもちろんインテリアなどのセレクトも自分で手がけただけあって、雰囲気は女性的。テーマは「ミラノとパリの融合」というだけにスタイリッシュなミラノとエレガントなパリ、両方の特徴をうまく取り入れている。名は体を表すというが「パラッツォ・パリージ」とは「パリの宮殿」という意味なのだ。
高級アパートメントのような宮殿
どこか女性的な趣がある「パラッツォ・パリージ」
このホテルの特徴のひとつが、ホテル全体を包む明るさである。エクスクルーシブ、というととにかくライティングや採光も控えめで、いざ部屋にチェックインしてスーツケースを開こうとしても暗くてよく見えない、という経験がある方もいるはず。「パラッツォ・パリージ」はほぼ全ての客室からミラノ中心部が見えるよう窓を大きく取ってある。また、1階にあるウインターガーデンも明るいガラス張りで緑がしげる中庭に面しており、静寂な空気が満ちている。滞在したこの日も1階ではミラノ系某ファッション・ブランドの顧客専用のランチ・パーティが行われており、中庭でワイングラスを持ちながら談笑する人々の姿を見ていると、ミラノの中心地にというよりコモ湖あたりのカントリーサイドにいるかのような錯覚にとらわれる。
開放感のあるテラス席からはミラノの夜景を一望できる
もうひとつの魅力が1700平米もある広大な「グランド・スパ」。プール、ジム、トリートメントルームの他に中近東をイメージしたロイヤル・ハマム・プリヴェがあり、ほかにも専門家によってカロリー計算されたメニューを出すヘルシーバー&レストランも併設している。イタリアでダイエット、というと一見逆説的ようにも思えるが、ミラノは場所柄体型には気を使っている人が多く、ヘルスコンシャスなレストランは和食と並んで今も根強い人気を誇っているのだ。
メインダイニングの「リストランテ・ガストロノミコ」
一方、カロリーのことはおいといて、という美食堪能派ならメインダイニングの「リストランテ・ガストロノミコ」をおすすめしたい。こちらのインテリアは1940〜1950年代のイタリアン・デザインをイメージしたミッド・センチュリー・モダン。17世紀から19世紀のネオクラシックな絵画が壁面を飾っている。インテリア同様料理もモダンで、郷土料理を現代のニーズにあうよう軽くアレンジしたイタリア料理が楽しめる。もうひとつ、中庭に面したカジュアルなビストロ「カフェ・パリージ」は名前の通りミラノにあるパリ風カフェ、をイメージしておりラデュレとコラボしたアフタヌーンティが楽しめる。
ミラノは都会でありながら郷土料理はヘビー、といわれて敬遠されがちである。ミラノ風子牛のカツレツ「コトレッタ」や、牛のスネ肉を骨髄ごと煮込んだ「オッソブーコ」、サフランをきかせた「ミラノ風リゾット」などどちらかといえば冬の料理が多く、数日滞在すると料理に疲れてしまうのもよく聞く話だ。その点「パラッツォ・パリージ」は連泊するゲストのためにもレストランの構成がよく考えられており、ビジネス・ミーティングでしっかりとしたディナーをした翌日はジムで汗を流し、アフタヌーンティで体調を整える、といった使い方ができるのもいい。
- TEXT :
- 池田匡克 フォトジャーナリスト