ドラマの撮影現場やNHK紅白歌合戦などで、芸能人の「差し入れ」が話題になることがよくありますが、一般人でも気の利いた差し入れのできる人は、一目置かれますよね。
仕事やプライベートでちょっとした差し入れをする機会で、あなたは相手から本当に喜ばれているでしょうか? 贈る側の自己満足だけで、実は相手にとってありがた迷惑になっていた……なんてことになったら、目も当てられませんよね。
今回は、マナー講師の尾形圭子さんから、「差し入れをするときのNGマナー」について教えていただきました。さまざまなシチュエーション別での注意点をご紹介しますので、T.P.O.に合った振る舞いができるようになりたい人は、必見です!
「職場」で差し入れするときのNGマナー2選
■1:ホールケーキなど「切り分けが必要なもの」を選ぶ
これはいただいて実際に困った、という人は多いのではないでしょうか。
残業中や繁忙期において、“お疲れ様”の意味で行う差し入れといえば、スイーツ系が王道。仕事に追われて心身ともにヘトヘトのときにも、甘いものでエネルギーをチャージすると、もう一頑張りできそうな気がしますよね。
とはいえ、忙しい職場に、ホールケーキなど切り分けが必要なものを差し入れるのは、考えもの。人数分にカットして、お皿やフォークを用意して、さらに食器の後片付けもあって……と、猫の手も借りたい状況に作業を増やしては、迷惑になるおそれがあります。
そういう点で、職場への差し入れは、メンバー全員に分けやすい「個包装のもの」がおすすめです。また、すぐに食べない人がいることを考慮すれば、常温保存ができて賞味期限の長いものがベターでしょう。
■2:「手軽に食べられないもの」を差し入れする
職場への差し入れでは、あくまで“仕事の合間に食べるもの”という視点をお忘れなく。たとえば繊細なパイ生地でできていたり、粉砂糖の飾りがあったりするスイーツなどは、ポロポロと落ちてしまい、デスクを汚さないように食べるのは至難のわざ。どちらかというと優雅なアフタヌーンティー向きで、職場の差し入れには適していません。
「職場への差し入れは、仕事に支障が出ないように、片手でさっと食べられ、落ちるものが少ないものを。甘いもの以外では、サンドイッチや栄養ドリンクなどもおすすめです」(尾形さん)
職場への差し入れは、食べやすさに重点を置きましょう。ちょっとした気分転換のつもりが、かえって仕事に遅れが生じた……など、くれぐれも本末転倒にならないよう、心配りができるといいですよね。
誰かの「お宅」に差し入れするときのNGマナー2選
■3:相手にとって「当たり前すぎるもの」を差し入れする
プライベートの差し入れでは、まず“相手のために選びました”という気持ちが伝わることが大切です。この点、訪問先のすぐ近所のお店で購入したものなどは、差し入れとして最もふさわしくありません。贈る側に悪気はなくても、相手には“当日、間に合わせで買いました”などと受け取られるおそれがあります。
また、高級なお菓子であっても、誰もが知っている定番モノでは、特別感がいまいち……。マナー違反ではありませんが、相手に喜ばれるにはもう一工夫ほしいところです。
「高級だけどありふれたスイーツよりも、値段はお手頃で珍しいお菓子のほうが、喜ばれるのではないでしょうか。たとえば、私は北海道の出身ですので、地元で評判のお菓子を差し入れすることがよくあります」(尾形さん)
地方出身者はぜひ、実践してみたいワザですね。有名ブランドのものは一通り食べつくした食通の人にとっても、地方限定の知る人ぞ知るスイーツは新鮮で、きっとその場の会話も弾むことでしょう。
■4:家族の存在を考慮しない
差し入れを選ぶ際、まずは、相手の好みを基準とするのは基本中の基本ですよね。では、お酒好きな上司のお宅に招待されたケースでは、上司の好みに合いそうなワインがいい? それもあながち間違いではありませんが、ワンランク上のマナー美人を目指すのであれば、上司本人の好みだけにとらわれてはいけません。
「できれば、訪問先のご家族全員に喜んでもらえるように配慮したいところです。たとえば、小さいお子さんがいるのであれば、ワインだけでなく小分けにしたクッキーをプラスする。おじいちゃん、おばあちゃんが同居されているのであれば、羊羹も添えるなどです」(尾形さん)
この気遣いができれば「なかなかやるな」と一目置かれること、間違いなしです。
「イベント」で差し入れするときのNGマナー2選
■5:主催者側に確認せずに、花束を贈る
コンサートや演奏会、そして個展や展覧会では、お祝いの花束をよく見かけますよね。ただ、こうした芸術系のイベントでやみくもに花束を贈るのは、必ずしも良策とはいえません。
花粉が飛び散ったり、虫が混入したりするおそれから、会場によっては花束の持ち込みをお断りしていることもあるからです。せっかく用意したのに、渡せなかった……なんて涙目な事態を招かないためにも、事前に主催者側のルールを必ず確認しておきましょう。
また、たとえ花束持ち込みOKの会場であっても、花束は避けたほうがよい事情があるようです。
「花束はただでさえかさばるうえ、他の人の贈り物と重複するおそれもあります。持ち帰ったり管理したりするのが大変だという点で、あまりおすすめできません。各種イベントの差し入れでは、楽屋で軽くつまめるお菓子や飲み物のほうが、喜ばれるのではないでしょうか」(尾形さん)
もちろん、相手から「景気づけに目立つ花束かスタンド花が欲しい!」など要望があれば別ですが、基本的には後に残らない“消えもの”が望ましいということですね。また、余っても困らないように、職場への差し入れ同様、なるべく個包装のもの、常温保存ができるもの、賞味期限の長いものを選ぶようにしましょう。
■6:差し入れの金額にこだわりすぎる
演奏会や展覧会の参加者から、有料チケットを譲ってもらって招待された場合、差し入れはそれと同額のものを贈ったほうがいいのでしょうか?
「こうするのが正解……という厳密なルールはありません。ただ、きっちり同額のものを差し入れで返そうとすると、場合によっては、相手をかえって恐縮させてしまうおそれもあります。数千円のチケットであれば、同額以内。たとえば1,500円~2,000円程度のものでいいのではないでしょうか。何より招待した側は、来てもらっただけでもうれしいと思います。気持ちとして、きれいなメッセージカードにお礼を書いてお渡ししてみたりするのもいいと思います」(尾形さん)
金額にこだわるよりも、気持ちを込めてお礼を伝えたり、「あの作品、素敵!」など、ポジティブな感想を伝えたりすることこそが、最善の贈り物になるでしょう。
「バーベキュー」で差し入れするときのNGマナー2選
■7:主催者や他の参加者と相談せず独断で食材を決める
バーベキューの差し入れには何を持っていけばいいのか? 持ち込みの分担が明確に決まっていないと、なかなか悩ましい問題ですよね。この場合の正解は、とにかく主催者や他の参加者によく相談すること! 「これならまずまちがいないだろうから……」と独断で決めると、ろくなことがありません。
たとえば、肉の差し入れで考えてみましょう。たしかに、肉はいくらあっても困らないから大歓迎、というケースあるでしょうが、他方で、主催者側がメインの肉を用意する場合、「肉よりサイドメニューのほうがありがたかったのに……」ということもあります。
特に網の上で食材を焼くバーベキューは、どうしても味が偏ってしまいがちで、実はさっと片手で食べられる「焼かないサイドメニュー」が喜ばれることが、大いにあるからです。加えて、焼き担当となる(恐らくは)男性は常に熱気にさらされているため、片手で食べられる常温or冷たいちょっとした食べ物は、大変喜ばれます。
また、肉以外の焼く食材も、独断で決めてしまうと、他の参加者と重複して、せっかくの食材を無駄にしてしまうおそれもあります。
差し入れするからには、参加者みんながおいしく飲み食いできるものがいいですよね。何が喜ばれるかはケース・バイ・ケースなので、サプライズを狙うよりも「これ持って行っていい?」と、事前に確認or名乗り出るようにしましょう。
■8:野菜やフルーツを「カットした状態」で差し入れする
バーベキューの差し入れでは、どんな食材を選ぶのかもさることながら、いかに品質を保つのか、そして、衛生面はどうなのか、もポイントです。
「現場での調理の手間を省けるようにと、野菜やフルーツをカットした状態で差し入れするのは、望ましくありません。しっかり保冷するか、りんごなどそのまま食べられるものを。イチゴ・キウイなどは冷凍にして持って行っても喜ばれますね。また、キュウリやピクルスなども手軽に食べられるのでおすすめです」(尾形さん)
フルーツや野菜は、バーベキューの口直しにもってこい。ぜひおいしく食べられる状態で差し入れしましょう。
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差し入れは、人間関係を円滑にするツールのひとつ。今回ご紹介したNGマナーをしっかり押さえて、自分も相手も笑顔になれる贈り物を心がけましょう。
株式会社ヒューマンディスカバリー
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美