「本物の家具」がもつ魅力を味方につけてもらうために、インテリアエディター「D」が厳選した大人のためのインテリアアイテムをご紹介する連載。身長156cmと小柄なエディターが、実際に家具を触ったり、座ったりしながら、女性ならではの視点でインテリア名品の魅力を掘り下げます。第6回はミノッティの『アストン アームチェア』です。

極上の座り心地を感じられる、ミノッティの「アストン アームチェア」

ミノッティのアストンアームチェア
ぼってりとしたボリュームのある背から繋がるむっちりとしたアーム

なんとなく全体的にずんぐりむっくりした感じ、というのがアストン アームチェアの第一印象でした。ところが、何気なくアストン アームチェアに座った瞬間、そのモチッとした座面の沈む感じ、腰回りから背中にかけての感触に驚きました。例えて言うなら、ふくよかな女性の腕から肩にかけての触り心地に似た気持ち良さです。

ミノッティのアストン アームチェアに座る女性
アストン アームチェアの最大の魅力は、座って初めて感じるふくよかさ。脚を乗せているのはアシュレイスツール。
【ブランド】ミノッティ【商品名】アストン アームチェア【写真の仕様の価格】¥535,680(税込)【サイズ】幅740×奥行き850×高さ750 座面高410mm【材質】脚=アルミダイキャスト 本体=グースダウン+ウレタンフォーム 生地=コットンヴィスコースツイード(綿20% ポリエステル1% ヴィスコース2% アクリル68% ナイロン7% 麻2%)

その感触を知ってからもう一度見ると、なんとも魅力的に見えるから不思議です。実は、アストン アームチェアのシートクッションとシートバックにはやわらかい詰め物があり、熟練職人の技を表現した頑強な構造で実現されています。ピューターカラーのほっそりしたアルミ脚の効果で、グラマーな本体が空間に浮遊しているような軽やかさを感じられ、その対比が実に美しいひとり掛けソファなのです。

カーキ色のアストンアームチェア
【ブランド】ミノッティ【商品名】アストン アームチェア【基本価格】¥522,720〜(税込)【サイズ】幅740×奥行き850×高さ750 座面高410mm【材質】脚=アルミダイキャスト 本体=グースダウン+ウレタンフォーム 生地=コットンモダールベルベット(綿80% モダクリル10% ポリエステル10%)

単体で主張せず、毎年「空間提案」されるミノッティの家具

ミノッティの最大の特徴は、毎年更新される「空間提案」と「オリジナルファブリック」。デザイナーのロドルフォ・ドルドーニは、建築家であることもあり、「今年のリビング」「今年のベッドルーム」といったテーマ性をもってコレクションを発表します。それ故に家具単体で主張するわけではなく、空間に馴染むようなデザインが多く、アイテムひとつを取り上げると比較的オーソドックスな印象を受けます。

ミノッティのアストンシリーズ
古き良き時代の応接室のような雰囲気のアストンシリーズ

すべての張地がオリジナルで、しかも毎年新作が開発されることも大きなポイント。毎年アイテムは更新されますが、手持ちのアイテムも布地を変えることでインテリアを更新できます。ファブリック張りのアストン アームチェアは着脱可能なので、本体を送らなくとも張り替え(カバーの注文)ができるのはうれしいですよね。設置は営業担当の方が1脚から来てくださるとのこと。「ミノッティの家具は、各ご家庭に入ってからお付き合いが始まる」という企業姿勢は一流ブランドの誇りを感じます。

アームチェアのファブリック
2018年のファブリックは、2020年の五輪を意識して日本語の名前がついているのも面白い
カバー式のファブリック
ファブリックはカバー式で、着脱できます

ミノッティは、Made in Italyにこだわるファミリーカンパニー

ミノッティの社長とクリエイティブディレクター
左からミノッティ現社長兄弟、一番右がクリエイティブディレクターのロドルフォ・ドルドーニ

ミノッティは1948年創業、今年70周年を迎えます。創業者アルベルト・ミノッティによってブリアンツァに小さなクラシック家具工房からスタートし、

2代目のレナート&ロベルト・ミノッティ兄弟の手腕により世界に認められるブランドとなったファミリーカンパニーです。建築家・ロドルフォ・ドルドーニとのコラボレーションにより、現在は世界60か国以上に展開する、イタリアを代表するモダン家具メーカーへと成長しました。

自社工場も併設した「ミノッティ スタジオ」では、ファミリーが自分たちの目で業界のトレンドを分析し、毎年ミラノサローネ国際家具見本市に出展するコレクションを開発。デザインから製造までを一貫して行うスタイルです。

キメの細かいレザーのステッチ
有名ブランドバッグや靴と同等のクオリティーをもつ縫製

多くのヨーロッパ家具メーカーが海外生産へシフトしていく中、ミノッティは「Made in Italy」を守っています。ルネサンス期から継承されたクラシック家具づくりのテクニックは、モダン家具の中にもしっかりと息づき、イタリアならではの感性にあふれた職人技を注ぎ込んでいます。ファブリックスやレザーの仕様はもちろんのこと、ステッチに使う糸の色まで指定出来るきめ細かさはオンリーワン家具である証です。

建築家兼デザイナーのロドルフォ・ドルドーニ氏
建築家兼デザイナーのロドルフォ・ドルドーニ

1954年ミラノ生まれの建築家兼デザイナーのロドルフォ・ドルドーニは、ドルチェ & ガッバーナなどの空間デザインをはじめ、さまざまな一流家具・照明メーカーの製品デザインを手掛けています。

ミノッティとのコラボレーションは2018年で20周年をむかえ、その内容は家具デザインにとどまらず、ミラノサローネのブースデザインやニューヨークショールームなど、多岐に渡ります。ドルドーニによるミノッティの「豊かな空間をつくりだすエレメントとしてデザインされた家具」は年々その質を高め、変化の激しい家具デザイン界でゆるぎない地位を築きました。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM
EDIT&WRITING :
土橋陽子