秋が来ると途端に食べたくなるさつまいも。ゆでたり、蒸したり、焼いたりしていただくのもおいしいですが、自宅で料理に使うなら、煮る方法があります。でも、なんとなくいつもうまくいかない、もっとおいしく煮るコツを知りたいという人もいるかもしれません。

そこで今回は、さつまいも料理研究家の鈴木絢子さんに、ほくほくした最高においしいさつまいも煮をつくるのに必要な「条件」を教わります。

最高においしい「さつまいも煮」をつくるときの「条件」9つ

さつまいもの煮物
最高においしい「さつまいも煮」をつくるときの「条件」9つ

さつまいも煮のおいしさといえば、煮崩れしない程度にやわらかで食べ応えのある「ほくほく感」や、さつまいも本来の甘みがぐんと引き出された味わい。鈴木さんに、そのような最高においしいさつまいも煮の条件を9つ挙げていただきました。

■1:さつまいもの品種は「ほくほく系」

たくさんのさつまいも
さつまいもの品種は「ほくほく系」

「さつまいもにはねっとり・しっとり・ほくほく系などのタイプがあります。料理に使うときは、ほくほく系が型崩れも少なく、さつまいも本来の味が引き出しやすいので、適しています。ほくほく系のさつまいもの品種としては、関東方面で多く流通している『ベニアズマ』や関西方面で多く流通している『高系14号』がおすすめです。もし手に入るようであれば、オレンジ芋や紫芋などを使用してもおいしく仕上がります」

■2:塩水には浸さない

「さつまいもをカットした後に塩水に浸すと、さつまいもの断面や皮の内側にある成分であるヤラピンが流れてしまいますので、浸さないほうがおすすめです。でんぷんが気になる方はさっと水にさらしてください。ただ長時間さらす必要はありません」

■3:煮る鍋は「ストウブ鍋」がおすすめ

「ストウブ鍋で調理するとさつまいも本来の甘みが際立ち、ほっくり感もアップします。ただし、水を少量しか使わないため、レモンや蜂蜜と一緒に煮込む場合に焦げやすくなりますので、火加減に注意が必要です。その他、厚手の鍋でもOKです。また、落とし蓋を使うと味が浸みやすくなります。落とし蓋が無い場合は、アルミホイルかキッチンペーパーで即席の落とし蓋にしても。ちなみにストウブ鍋は鋳物ホーロー鍋で熱伝導率が高いため、落とし蓋なしで大丈夫です。

また、炊飯器を使う方法もあります。簡単ですし煮崩れ無しでホクホクに仕上がるのでおすすめです。鍋で煮るときと同じ材料で、通常のお米を炊く要領で炊飯器にすべての材料を入れて炊飯するだけです」

■4:「皮つき」で煮る

「皮つきのほうが煮崩れしにくく、さらに食物繊維・ヤラピン・アントシアニンなどの栄養素が皮の部分に多く含まれているので、皮つきのまま調理するのがおすすめです。皮が傷つかないように丁寧に水で洗い、1.5~2cmほどにカットしたらそのまま煮込みます。煮ると黄色が引き立ちますので、皮の紫色とのコントラストが映え、見た目も美しく仕上がります。皮がどうしても苦手な方は、皮をむいてもOKですが、煮崩れしやすくなりますので火加減に注意してください」

■5:煮る時間は1.5cmの厚みにカットし、中弱火で10~15分

「さつまいもを1.5cmほどの厚さでカットした場合、中弱火で10~15分ほど煮るだけで完成します。さつまいもの直径が太い場合は、薄めに切ったり、輪切りをさらに半分にカットしたりすると火が通りやすくなります。
食べ応えのある乱切りがお好みの方は、厚さがある分、火が通るのにも時間がかかりますので、調味料を入れて煮る前に、一度沸騰したお湯で1~2分下ゆですると火の通りが良くなる上に、煮崩れしにくくなります」

■6:水の量は「ひたひた」、調味料は煮方による

「水の量は、さつまいもが鍋でひたひたに浸かるくらい、およそ1.5~2カップが目安。鍋のサイズ感にもよりますので、ひたひたを目安に調整してください」

■7:甘みを出すには「中弱火」で煮る

「さつまいもは、さつまいもの内部が約70度で熱されたときに、最も糖分が引き出され、甘みが増します。よって、中弱火で煮れば甘みが引き立つと考えられます。強火で煮ると焦げ付きやすくもなりますので注意が必要です」

■8:調味料と一緒に煮込む具材

「調味料は、蜂蜜レモン煮、醤油煮などによって変わります。さつまいも大1本(250~300g)に対して、次の量がいいと思います。

・蜂蜜レモン煮:蜂蜜、レモンを各大さじ2ずつ
・醤油煮:醤油、砂糖を各小さじ2ずつ

また蜂蜜レモン煮の場合、レモンを輪切りスライスにして一緒に煮込みます。他にもリンゴ1個をざく切りにしたものやレーズン、クコの実などの適量を一緒に煮込むとコンポートのようになり、ヨーグルトに入れても良く合います」

■9:隠し味は、塩やバター、だし汁、みりん、黒砂糖など

盛り付けされたさまざまな煮物
隠し味は、塩やバター、だし汁、みりん、黒砂糖など

蜂蜜レモン煮の場合

「煮るときに塩をひとつまみ入れると甘みが際立ちます。お好みでバターを乗せて煮ると、スイーツ風になります」

醤油煮の場合

「お好みで醤油とだし汁(市販の昆布だし等)を半々ずつ使うとおかず感がアップします。また砂糖の代わりにみりんを使うと“照り”が、黒砂糖、てんさい糖などを使うと“コク”が出ます」

よくある「さつまいも煮」の失敗例と対策

最後に、鈴木さんによくあるさつまいも煮の失敗例の対策を教えていただきました。ぜひ参考にしてみてくださいね。

さつまいも本来の甘みがうまく出ない

「強火で熱してしまうと、さつまいも本来の甘みが引き出される前に火が通ってしまいます。弱火~中火くらいの火加減をキープしましょう」

煮崩れてしまう

「完成した後、すぐにお皿に移そうとすると崩れてしまうので、鍋に入れたままの状態で、冷めるまで放置しておきましょう」

今年は、甘くてほくほくして最高においしい「さつまいも煮」をつくって、ぜひおもてなしにも使ってみてはいかがでしょうか。

鈴木絢子さん
さつまいも料理研究家
(すずき あやこ)10代のころ、さつまいもでダイエット・美肌改革に成功。以来さつまいもを20年間毎日食べている。美容家として独立し、2010年に美容コンサルティング会社を設立。美容記事や書籍の執筆、ダイエット指導、テレビ出演など幅広く活動。秋にはさつまいも料理研究家として、さつまいもの魅力を伝える活動を行っている。
さつまいも親善協会HP
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利