東名高速を走っていると、富士演習地に近いあたりで自衛隊の車両としばしば行き逢う。その中でも“73式小型トラック”の造形が好きで、見つけると斜め後方から眺めたりする。カーキ色のその車体は市販4WD車のいわばミリタリー・バージョンだ。対戦車用の60式106mm無反動砲を装備できるタイプもあった旧型の通称「ジープ」には、とくに惹かれる。一般向けと地続きのレアなプロフェッショナル用プロダクトには、スペックの魅力に加えて特別なオーラが備わるものだ。ブライトリングの「クロノマット JSP」もそうした性格が強い。

男の物欲を刺激するブライトリングのクロノグラフ

ブライトリング「クロノマット JSP」

懐かしい既視感を誘いながら、実はムーブメントは自社開発・製造の「キャリバー 01」。伝説のデザインを最新鋭の性能で再誕させた「クロノマット JSP」は、プレミアム機でありながら逆に価格を抑える、粋な計らいも見せている。●自動巻き ●ステンレススティール ●ケース径44mm ●SS製パイロットブレスレット ●防水500m ¥896,400(税込価格)※日本限定
懐かしい既視感を誘いながら、実はムーブメントは自社開発・製造の「キャリバー 01」。伝説のデザインを最新鋭の性能で再誕させた「クロノマット JSP」は、プレミアム機でありながら逆に価格を抑える、粋な計らいも見せている。●自動巻き ●ステンレススティール ●ケース径44mm ●SS製パイロットブレスレット ●防水500m ¥896,400(税込価格)※日本限定

伝説のライダータブ

ベゼルより一段高いライダータブは、指掛かりや経過時間の視認といった実際的な役割に加え、デザイン的にもアイコニックなシンボルだ。
ベゼルより一段高いライダータブは、指掛かりや経過時間の視認といった実際的な役割に加え、デザイン的にもアイコニックなシンボルだ。

 そもそも1984年の初代クロノマットは、フレッチェ・トリコローリ=イタリア空軍エアロバティックチームのためにつくられた腕時計だ。コンペティションを勝ち抜くためにパイロットの声を徹底的にあつめ、いままでにないかたちのクロノグラフが出来上がった。そのディテールの中でも最大の特徴といえるのが“ライダータブ”だ。片回転ベゼルの「15」と「45」、ゼロと「30」の対角線に取り付けられたそのタブは、手袋をつけたままでベゼルを回す時の手掛かりに最適で、セットしたゼロ分からの経過時間を計る絶好の目印でもあり、衝撃からガラスを守る障壁でもあった。

 凄腕のエリート空軍パイロットのための工夫は、一般時計ファンも酔わせた。明らかなオーバースペックは、もしもの時に備えるスーパースペックとして熱狂的に受け入れられたのである。ライダータブは25年存続し、2009年のモデルチェンジで姿を消した。その伝説的なディテールを日本限定で復活・装備した、ありえないモデルが「クロノマット JSP」なのである。

自社開発ムーブメント「キャリバー 01」

ブライトリング自社開発・製造の自動巻きクロノグラフ・ムーブメント「キャリバー 01」。70時間パワーリザーブを始めとする高いスペックの一方、メンテナンスしやすさも考慮して設計されている。全量がクロノメーターという稀有なブランドの高い意識の表れ。
ブライトリング自社開発・製造の自動巻きクロノグラフ・ムーブメント「キャリバー 01」。70時間パワーリザーブを始めとする高いスペックの一方、メンテナンスしやすさも考慮して設計されている。全量がクロノメーターという稀有なブランドの高い意識の表れ。

 しかも「クロノマット JSP」は、自社開発に成功したムーブメント“キャリバー 01”を搭載する。パワーリザーブは70時間、24時間調整可能な日付表示を持ち、公的機関にクロノメーターの精度を認められたクロノグラフ・ムーブメントだ。500メーター防水性能を誇り、5年間の保証も付く。

航空計器のように視認性が高い文字盤

抜群の視認性と、圧倒的な存在感を見せる文字盤。時分針が太く、インデックスは両サイドに夜光を配したブロックのような質感を持つ。
抜群の視認性と、圧倒的な存在感を見せる文字盤。時分針が太く、インデックスは両サイドに夜光を配したブロックのような質感を持つ。

 現行のクロノマットとの違いはライダータブだけではない。バーインデックスを両側に蓄光を配したデザインに変更し、文字盤のスクエアパターンを無くして質感を変えた。さらに2009年までにはなかった、15分ごとに反復するベゼルのスロープは装備しており、むしろ初見の新鮮さを見せる。プロの計器であるからといって、無骨一辺倒なわけではない。

 73式小型トラックの60式106mm無反動砲は、実は米軍が装備する「M60」をルーツとする日本バージョンだ。もっとも厳密な品質を要求される軍用製品も、性能を発揮するためにカスタマイズをためらわない。

ブラック・ブルー・シルバーのカラーバリエーションに加え、ブラックアイブルー・ブロンズ・ストラトスグレー(限定)のカラーバリエーション。カーフ革・クロコ革のストラップ、ラバーのダイバープロストラップ、SSのパイロットブレスレットが選択可能。
ブラック・ブルー・シルバーのカラーバリエーションに加え、ブラックアイブルー・ブロンズ・ストラトスグレー(限定)のカラーバリエーション。カーフ革・クロコ革のストラップ、ラバーのダイバープロストラップ、SSのパイロットブレスレットが選択可能。

「クロノマット JSP」も同じことだ。ブライトリングは渾身の最新クロノグラフに、伝統的な装備を、ユーザーのためにあえて復活させた。その日本限定モデルは、最新のスペックに最適のパフォーマンスを持つのである。

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この記事の執筆者
桐蔭横浜大学教授、博士(学術)、京都造形芸術大学大学院博士課程修了。著書『腕時計一生もの』(光文社)、『腕時計のこだわり』(ソフトバンク新書)がある。早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校・学習院さくらアカデミーでは、一般受講可能な時計の文化論講座を開講。