海外発や東京発、さらには地元の店主による新店が続々と登場し、コーヒー戦国時代なんて言われている京都。今回は京都の街の中心部にあり、街のコミュニティースペース的な存在の「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」を紹介します。

元小学校の校庭に建つ、前代未聞の図書館兼コーヒーショップ「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」

北東、北西、南西角には道に面した図書館ボックスを設け、ふらりと立ち読むことができる。
北東、北西、南西角には道に面した図書館ボックスを設け、ふらりと立ち読むことができる。

京都の繁華街、木屋町通に建つ立誠小学校は廃校になった後も、映画館を開設したり、さまざまなイベントが行われたり、文化発信の場所として活用されてきました。「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」も2015年、元職員室を使ってスタートしました。が、今年になって、元小学校の改修、増築工事がスタートし、2020年春、ホテルを有する複合施設が完成するまでの間、旧校庭に建てられた仮設店舗で営業することになりました。

現在、工事中の元立誠小学校の校舎。2020年春には複合施設として生まれ変わり、「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」も施設内に登場予定。
現在、工事中の元立誠小学校の校舎。2020年春には複合施設として生まれ変わり、「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」も施設内に登場予定。

高瀬川べりに腰掛けられるのも、他にはないロケーション

高瀬川沿いに設けられたテラス席。目の前は桜並木で、春は特に大賑わい。
高瀬川沿いに設けられたテラス席。目の前は桜並木で、春は特に大賑わい。

仮設とはいえ、店内には、音楽室のイスや理科室の実験台など、以前、小学校で使われていた家具がそのまま使われ、昔懐かしい雰囲気に。実は「立誠図書館」としての役割も担っていて、壁一面には本棚が並び、本を自由に閲覧することも。さらに約500冊の選書を監修したのはブックディレクターの幅 允孝(はば よしたか)氏であり、本1冊1冊が並ぶ位置まで決められていて、見やすくレイアウトされています。また、高瀬川べりにはテラスもあり、川に足を投げだして座るのも気持ちいい。

高瀬川沿いに設けられたテラス席。目の前は桜並木で、春は特に大賑わい。
高瀬川沿いに設けられたテラス席。目の前は桜並木で、春は特に大賑わい。

京都のコーヒー界で知られる、「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」の名物店主

名物店主の牧野広志さん。コーヒーはすべてペーパードリップの一杯立て。
名物店主の牧野広志さん。コーヒーはすべてペーパードリップの一杯立て。

毎日、出勤前後に京都のコーヒー店をパトロールしている名物店主の牧野広志さん。実は京都のコーヒー業界だけでなく、音楽シーンにも精通していて、街のお兄さん的存在です。

海外や東京のコーヒー店が増えることで、京都発のコーヒー店も活性化

阪急河原町駅から徒歩7分。仮設の建物ながら、中に入ると落ち着いた雰囲気。
阪急河原町駅から徒歩7分。仮設の建物ながら、中に入ると落ち着いた雰囲気。

「地元の新聞にコーヒー戦国時代なんて書かれたこともあったのですが、ボクはそうは思いません。コーヒー好きは1日1軒ではなく、何軒も巡る人が多いんです。ブルーボトルやスターバックスなど、海外や東京からの店が増えることで、京都がコーヒーの街として印象づけられるし、京都発のコーヒー店も活性化。戦うんじゃなくて、共存共栄に成功してる街だと思います」と、牧野さん。

コーヒー豆にこだわりを持ちつつ、スタンスはラフな「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」

アイスコーヒーは抽出したコーヒーを直接、氷に当てて、冷やし、抽出後はその氷を捨て、新しい氷を投入。そうすることで水くさくならず、おいしいアイスコーヒーが出来上がるそう。
アイスコーヒーは抽出したコーヒーを直接、氷に当てて、冷やし、抽出後はその氷を捨て、新しい氷を投入。そうすることで水くさくならず、おいしいアイスコーヒーが出来上がるそう。

店で出すコーヒーは牧野さんが親交のある京都のロースターの豆を使い、常時4、5店から卸してもらっています。豆をただ仕入れるだけではなく、牧野さん自身がロースターに産地や焙煎の仕方などをリクエストし、ロースターと一緒にイメージに合う味に仕上げていくそうです。とは言え、スペシャルティコーヒーがズラリと並ぶメニュー表に身構える必要はありませ。元々、「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」は期間限定店だったのですが、「みんなが集まれる場所として残してほしい」という地元の人たちの熱い想いで常設に。

アイスコーヒー400円。ロースターだけで4、5店、さらに豆の種類は15種類以上から選べる。
アイスコーヒー400円。ロースターだけで4、5店、さらに豆の種類は15種類以上から選べる。

「TRAVELLING COFFEE(トラベリング コーヒー)」は、普段着の京都が味わえるコーヒーショップ

「コーヒーってコミュニケーションツールのひとつだと思うんです」と、牧野さん。今も店はご近所さんの憩いの場的存在であり、ブレンドコーヒーは気軽に飲める300円で提供されています。

旅行で京都を訪れると、コーヒー店にも“京都らしさ”を求めてしまいますが、ここに行けば、町家改装店ともひと味違う普段着の京都を味わえます。

※掲載した商品はすべて税込です。

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この記事の執筆者
女性情報誌の編集を経てフリーランスに。エディター・ライター歴15年以上。生まれ育った京都を拠点に、女性情報誌やファッション誌、グルメ誌に寄稿。京都特集や京都でのファンションロケのコーディネートも行う。
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WRITING :
天野準子