「ロンドンに飽きた人は、人生に飽きた人だ」
18世紀のイギリスを代表する作家、サミュエル・ジョンソンの言葉である。確かに何度訪れても、ロンドンという街は、いつも新たな発見がある。
セント・ジェームズは一見ただのオフィス街のような、普通の建物が並ぶ地域だが、ここには英国紳士の文化を担ってきたジェントルマンズクラブの3分の2が集中している。スタイリッシュなレストランや、小さな画廊、洗練されたアンティークショップなどが点在しているが、いったい客がどこにいるのか? と心配になるくらいいつも閑散としているが、わかる人にしかわからないその格好良さ。それもロンドンの魅力である。
何でもない空気が英国らしいキャベンディッシュ・ホテル
ロンドンの魅力は訪れたものにしかわからない独特な空間である
キャベンディッシュ・ホテルも、同じような魅力を持ったホテルだ。ガイドブックに載ることのない、地味なホテル。外見はお世辞にも魅力的とはいえない、ただの近代的なビルである。
伝統的でも、モダンでもなく、サフィシェント(過不足ない)な空間。自らが決して主張することはないが、必要にして十分。そんなところが非常に英国らしいと思う。デザインやサービスが特段優れているわけでもない。だが、ここの「何とはない」空気感こそが重要なのだ。
ウィリアム王子のご成婚に際し、チャールズ皇太子は、伝統のサヴィル・ロウで仕立てるスーツではなく、あえてシャツで有名な「ターンブル&アッサー」の既製スーツをお選びになられた。これは、ご自身のスタンダード(価値基準)を世に知らしめた。
キャベンディッシュ・ホテルのような空間は男のステイタスである。
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※2011年夏号取材時の情報です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2011年夏号より
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