「本物の家具」がもつ魅力を味方につけてもらうために、インテリアエディター「D」が厳選したお店のためのインテリアアイテムをご紹介する連載。身長156cmと小柄なエディターが、実際に家具を触ったり、座ったりしながら、女性ならではの視点でインテリア名品の魅力を掘り下げます。第9回はノルスタジオの「ウームチェア」。1948年にエーロ・サーリネンによってデザインされた、ミッドセンチュリーを代表する名作です。

【ブランド】ノル スタジオ【商品名】ウームチェア【写真の仕様の価格】¥599,400(税込)【サイズ】幅1050×奥行き940×高さ920 座面高435mm【材質】背・座:強化ファイバーグラス+ポリウレタンフォーム 脚:スチール粉体塗装,クローム

どんな体勢をとっても優しく包み込んでくれる「ウームチェア」

近くで見るとイメージよりもずっと大きく、わりとノッペリとしたイメージのウームチェア。 

名作家具の写真集で見ていたよりもずっと大きく、これがあの「踏ん張っている細いスチール脚に支えられて、キュッとした座面が浮いている、サーリネンのひとりがけソファ」と、同じ椅子とは思いもしませんでした。

ミッドセンチュリーを代表する名作家具なので、普段は正面や真横から撮られていることが多いのです。

ウーム(Womb)=子宮を思わせる、有機的な形状と、さまざまな姿勢をとっても包み込まれるような感覚からその名が付けられたとか。それならば、名作家具だからと言って他人行儀ではなく、お近づきになろうかと、いろんな体勢で座ってみました。

お姫様抱っこ座りも心地よく支えてもらえます。
あぐらもいい感じにおさまります。
KNOLL JAPAN取締役上級副社長の寺田尚樹さんに友情出演をお願いしてみました。これは、かなり盛り上がります。

私と同じ身長のKnoll広報の方のアドバイスで、肘掛けにチョイ掛けしてみました。安定感があって、何かしながらちょっと腰掛けたいときにもいい高さです。新しいラブソファとしても使えそうです。

リラックスしてる相手にちょっと寄り添う感じで話すと、いつもよりもいろんなことがスムーズに進む気がしませんか? その懐の深さが名作家具のもつ底力かもしれません。

MoMA所蔵作品でもあるミッドセンチュリーを代表する椅子「ウームチェア」

サーリネンらしい特徴的な形の脚、ちょっと生き物のようですよね。  

ノル社の創業者ハンス・ノルの妻でありデザイナーであった、フローレンス・ノルからの「たくさんのクッションの中で丸くなれる、バスケットのようなチェア」というリクエストから生み出されたウームチェア。エーロ・サーリネンによってデザインされた、ミッドセンチュリーを代表する名作ソファです。

スチールパイプで軽やかに浮遊させたバスケットのような有機的なシェルは、デザインされた1948年当時の新素材・新技術だったFRPを張りぐるみにすることで実現しました。置くだけで空間が決まる、70年たっても色褪せない、完成度の高いデザインです。

誰もが知っている名作家具をたくさん生み出したノル  スタジオ (Knoll Studio) 

サーリネンのチューリップテーブルも、ノル スタジオのアイコン的な名作家具です。

ノル スタジオは、世界的に知られている20 世紀モダンデザインを体現する家具メーカーです。1938 年にニューヨークで、ドイツ生まれの家具商の息子ハンス G・ノル(当時24 歳)によって設立されました。ドイツの美術学校「バウハウス」と、アメリカの美術大学院「クランブルック」双方のデザイン思想と関係を経て発展したのです。

ハンスのビジネスパートナーであり妻である、フローレンス・ノルとふたりで続けてきたビジネスモデルは、現代でもなお脈々と受け継がれています。彼らの親交から、ミース・ファン・デル・ローエやエーロ・サーリネン、ハリー・ベルトイアなど、当時の時代の先端を行く建築家やデザイナーとの画期的なコラボレーションが生まれ、20世紀のデザインに多大な影響を与えることとなります。

ミッドセンチュリー時代に数々の名作を生み出した、エーロ・サーリネン

アメリカのミッドセンチュリー期における重要な役割を果たしたデザイナー、エーロ・サーリネン

ウームチェアをデザインしたエーロ・サーリネンは1910 年生まれ、フィンランドのキルッコヌンミ出身の建築家、プロダクト・デザイナーです。

クランブルック美術アカデミーの教授でもある父親、エリエル・サーリネンの助手を務め、そこでチャールズ・イームズと出会います。1940年、共同で製作をした「オ-ガニックチェア」がMoMAのコンペで最優秀に選ばれました。ノル社のためにチューリップチェアに代表される数々の家具デザインを手がけたり、ニューヨーク ケネディー空港TWAターミナルを設計したりと、アメリカのミッドセンチュリー期における重要な役割をはたしたデザイナーのひとりです。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM