11月公開の「大人の女性が観るべき映画」4選
映画ライター・坂口さゆりさんが厳選した、「大人の女性が観るべき」映画作品を毎月お届けする本シリーズ。今回は、2018年11月公開の映画、『ボヘミアン・ラプソディ』、『おかえり、ブルゴーニュへ』、『鈴木家の噓』、『アース:アメイジング・デイ』の4作品をご紹介します。
■1:『ボヘミアン・ラプソディ』|エンターテイメント
観ながらついつい口ずさんでしまった映画『ボヘミアン・ラプソディ』! 英国を代表するロックバンド「クイーン」のリード・ヴォーカル、フレディ・マーキュリーを中心に、伝説のバンドとなったクイーンの紆余曲折を描いた感動エンターテインメント。クイーンのファンも彼らを知らない世代も、心震える時間を堪能できる音楽映画です!
1970年、ロンドン。複雑な生い立ちや、容姿のコンプレックスを抱えるフレディ・マーキュリー(ラミ・マレック)は、昼は空港で働き、夜はライブハウスに入り浸り。ある晩、演奏が終わったお気に入りのバンドもとへ挨拶に行くと、メンバーのブライアン・メイ(グウィリム・リー)とロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)から、たった今ヴォーカルが脱退したと聞かされる。すかさず自らを売り込むフレディを最初は相手にしなかったふたりだが、突然歌い出したフレディの声に一瞬にして魅了され、ふたりもハモり始め……。
見どころは多々あるものの、やはりクイーンの音楽シーンには大興奮。クイーンが成立した瞬間のハモりシーンから、クライマックスとなる1985年に開催され20世紀最大の音楽イベント「ライヴ・エイド」まで心は震えっぱなし。このライヴ・エイドのシーンは、英国・ボービントン空軍基地を使って、巨大ステージからアンプやペダル、吸い殻や灰皿、コーラのカップまで再現したそう。ライヴに立ち会える喜びに興奮マックスでした。
フレディだけでなく、ブライアンとロジャーを演じたグウィリム・リーとベン・ハーディのそっくりさんぶりにも大感動。クイーンがいかに家族的なつながりをもったバンドだったか、改めて彼らの絆を考えてしまいました。映画を見終わった後は興奮冷めやらず、家に帰ってからクイーンのアルバムに聴き入ってしまった一夜でした。
(Story)世界的な人気を誇るロックバンド「クイーン」。リードヴォーカルのフレディ・マーキュリーを中心に、彼らがたどった人生の紆余曲折をヒット曲と共に描く感動作。
作品詳細
-
『ボヘミアン・ラプソディ』
監督:ブライアン・シンガー 出演:ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョーオ・マッゼロほか。
全国公開中。
■2:『おかえり、ブルゴーニュへ』|ヒューマンドラマ
日本でも人気の高いセオドア・クラピッシュ監督の4年ぶりの新作が公開されます。都会を舞台に撮り続けてきた監督が、初めてフランス・ブルゴーニュという田舎を舞台に、家族の絆を味わい豊かに描いています。
ブルゴーニュのワイン生産者の長男として生まれながら、家を飛び出したジャン。父親が死の床にあると知り、10年ぶりに故郷へ戻ってきます。家業を継いだ妹、やり手醸造家の婿養子になっていた弟との再会もつかの間、父が他界。それぞれの悩みや問題を抱える3人はさらに、遺された葡萄畑や自宅の重い相続税に苦悩することに……。
人間がどれほどの問題を抱え右往左往しようとも、季節は巡ります。長い年月をかけてワインが味わいを増すように、愛も年月をかけて育てることが大切だと教えてくれる。スピード重視の現代社会にあって、自身の人生で本当に大切なものは何なのか。その答えをじっくり探したくなる、秋にふさわしい1本です。
(Story)フランス・ブルゴーニュのワイナリーを舞台に、ワイン醸造家の父親を亡くした3兄妹の迷える人生を描くヒューマンドラマ。
作品詳細
-
『おかえり、ブルゴーニュへ』
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ 出演:ピオ・マルマイ、アナ・ジラルド、フランソワ・シビルほか。
11月17日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。
■3:『鈴木家の噓』|ヒューマンドラマ
『おかえり、ブルゴーニュへ』とはまったく異なるアプローチで家族を描いた作品が『鈴木家の噓』。長男の自死という欠落から始まる物語をユーモアで彩りながら紡ぐ、静かな余韻が広がる感動作です。
ある日、引きこもりの長男・浩一(加瀬亮)が自殺。最初に見つけた母親の悠子(原日出子)はショックで入院してしまいます。意識を取り戻した悠子は、ベッドを取り囲む家族の顔を見て、浩一のことを尋ねます。悠子は記憶を失い、浩一が生きていると思っていたのでした。
そんな母に悲しい思いをさせまいと、長女の富美(木滝麻生)と父・幸男(岸部一徳)は、浩一が引きこもりから脱出し、叔父(大森南朋)の仕事を手伝うため、アルゼンチンで働いている、という噓をついてしまいます。幸男はチェ・ゲバラのTシャツを探しだし、富美は兄になりかわって手紙をしたため、親戚たちも巻き込んで、浩一が生きているように振る舞い続けるのですが……。
家族はいるのが当たり前とばかり、家族について普段深く考える人なんてどれほどいるでしょうか。大きな病気や問題を抱えることで、初めて家族を意識することになるに違いありません。本作は、野尻克己監督自身の経験を基にしたオリジナル作品。つらいテーマをユーモアでくるんだ温かい作品になったのは監督の実体験があればこそ。家族一人ひとりが自分自身と向き合い、家族と向き合う。再び新しいスタートを切る鈴木家の面々を応援したくなる映画です。
(Story)悲しみを乗り越えるためについた優しい噓。ユーモアたっぷりに家族の再生を描く。
作品詳細
-
『鈴木家の噓』
監督・脚本:野尻克己 出演:岸部一徳、原日出子、加瀬 亮、木滝麻生、岸本加代子、大森南朋ほか。
11月16日(金)から新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開。
■4:『アース:アメイジング・デイ』|ドキュメンタリー
英国BBCが制作する世界最高峰の「ネイチャー・ドキュメンタリー」の最新作! 太陽が辿る地球の1日に焦点を当て、最新機材を用いて、さまざまな動物や植物の生態をつまびらかに見せてくれます。
驚きの映像の連続で目を見開きっぱなしになること間違いなし。例えば、ジャイアントパンダ。シャンシャンの誕生で日本ではパンダの映像を見ることが増えましたが、動物園で飼育されている姿とは大違いです。正直、子パンダがこれほど速く走り回るとは思いもしませんでした(シャンシャンもその気はありますが)。
実は本作、上海メディアグループと提携し、英国と中国の映画協定の下で制作された初の映画だそう。これまで撮影されることがなかった中国で撮影が可能になったからこそ撮れた貴重な映像となっています。
動物たちと一緒にいるかのような映像は、超軽量カメラと携帯用安定化システムが採用されたことが大きいそう。そんなテクノロジーの進化は見たことがない地球を私たち見せてくれます。
ネイチャー・ドキュメンタリーにこれまで興味がなかった人も見れば新たな世界が広がること間違いなし。人間も自然の一部だということをひしひしと感じられるはず。疲れも悩みも吹き飛ばしてくれる、開放感を味わえますよ。
(Story)地を這うもの、空を飛ぶもの、水に生きるもの……。地球に生きるあらゆる生物たちの営みを見たことのない映像でとらえたネイチャー・ドキュメンタリー。
作品詳細
-
『アース:アメイジング・デイ』
監督:リチャード・デイル、ピーター・ウェーバー、ファン・リーシン
11月、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
- TEXT :
- 坂口さゆりさん ライター
- WRITING :
- 坂口さゆり