仕事がたてこんだり、何かと予期せぬトラブルが発生したりすれば、誰しもストレスを感じるもの。ただ、同じ状況におかれても、うまく気持ちを切り替えて乗り越える人もいれば、ストレスのせいでますます仕事がうまくいかないという悪循環に陥ってしまう人もいますよね。
その両者の違いは、実は日ごろの何気ない習慣にあるようなのです。今回は、日本心理教育コンサルティング代表でカウンセラーの櫻井勝彦さんに、余計なストレスをためやすい人が無意識でやっているNG習慣を教えていただきました。
ストレスためがちな人が無意識にやっているNG習慣5選
■1:職場のデスクが片付いていないのはNG
あなたの職場のデスクはすっきり片付いているでしょうか? 整理整頓が苦手で、新旧の資料が山積みになっているような人は、知らず知らずのうちに余計なストレスをためこみやすいとのことです。
「職場のデスクは、その人の心のあり方を映す鏡。デスク上がきちんと片付いている人は、今すぐ必要なものとそうでないものの区別ができていて、ストレスなく目の前のやるべきことに集中することができます。
他方、デスク上が散らかっているのは、ものを片付けるのが苦手な人。ものが片付けられない・捨てられない人は、頭の中で過去の出来事も整理できていないことが多く、5年も10年も前の嫌な記憶にとらわれがちです。
人間誰しも普通に日常生活を送っているだけでも『今日は仕事に行きたくないな』など、ちょっとした悩みがあるものですが、これに過去のネガティブな記憶を思い出すことも加わると、ストレスの種が何倍にも増えてしまいます」(櫻井さん)
デスク回りの整理整頓を怠るのは、仕事を効率的に進めるうえでもマイナスですが、ストレスの元凶でもあるのですね。心をすっきりさせるためにも、「そのうち使うかもしれないから」とためこんでいるものは思い切って処分しましょう。
■2:寝る前にその日あった嫌な出来事ばかり思い浮かべるのはNG
会議で自分の意見をうまく発言できなかった。上司に話しかけたときに迷惑そうな顔をされたなど、寝る前にその日あった嫌な出来事が次々と浮かんでくることはありませんか? これもまたストレスを増幅させるNG習慣だといいます。
「辛い出来事を何度も繰り返し思い返したりイメージしたりするのは、勉強でいうところの復習と同じで、脳の神経回路にトラウマとしてこびりつき、再び同じような場面に遭遇したときに、また同じように行動してしまうという結果をもたらします。
つまり、会議でうまく発言できなかったことをクヨクヨと思い返すことで、脳はストレス状態となり、本来持っている自分の能力を抑制してしまい、別の会議でもまたうまく発言できないということになりがちです。
また、同じ出来事でもそれをどのように意味づけるのかもストレスに大きくかかわります。例えば、“上司の表情が曇っていた”という出来事について、『もしかして私は嫌われているかもしれない』という捉え方をすると、そこから『上司に嫌われている→仕事に悪影響が出る→左遷させられるかもしれない』などと、どんどん悪い方向に思考を深めてしまいがちです。
しかし、上司の表情が曇っていたのは、たまたま疲れていただけなど、あなたとは全く無関係なことが原因だという可能性も否めません。わざわざマイナスの意味づけをして取り越し苦労をするのは余計なストレスをためこむ人にありがちです」(櫻井さん)
同じ失敗を繰り返したりストレスをためこんだりしないためには、なるべく嫌な出来事を思い返さないこと。もちろん、「うまく発言できなかったのは~~が原因だから、次の会議ではこういうふうに振る舞おう」など建設的に考えるのであればよいのですが、ただ、くよくよと思い悩むだけでは百害あって一利なしです。
また、起こった出来事を自分にとってマイナスの方向にばかり解釈するのではなく、「ひょっとしてこういう可能性もあるのでは?」と多面的にとらえるように心がけましょう。
■3:座ったまま考え込むのはNG
どんなに楽観的な人であっても、仕事中にネガティブな考えがふと思い浮かぶことはあるでしょう。ただ、その後の対処によって抱えるストレス量が大きく変わってくるようです。
「特にデスクワーク中心の人にとって要注意なのは、座ったまま考えごとをすることです。みなさんも心当たりがあるかと思いますが、少々嫌なことがあっても、スポーツをしたり体を動かしたり、人と話したりしているうちに、忘れてしまったりどうでもよくなったりすることはないでしょうか。
逆に、ひとりでじっとしているとどうしても思考が停滞し、同じことを何度も考えるなど、不安や悩みを増幅させる方向にエネルギーを注いでしまいがちです。人間は落ち込んだり悩んだりすると視野が狭くなる傾向があるのですが、デスクワークをしていると目の前のパソコンや資料しか情報が入ってこないために、一旦悩み始めるとそこからの脱却が容易ではありません。
ネガティブ思考がよぎったら、デスクを離れて少し外を歩いてみるとか、人と話すとか、それが難しければデスクの整理整頓をやってみるなどで、無理矢理にでも少し動いて思考を中断するのをおすすめします」(櫻井さん)
デスクワーク中に「こうなったらどうしよう」「あのときこうすればよかった」など、不安や後悔がふと頭をかすめたら、そのまま無理に作業を続けるより、なんらかのリフレッシュ手段を講じましょう。
■4:感情を表に出さないのはNG
仕事をこなすうえでは感情のコントロールが不可欠。苦手な上司や顧客とコミュニケーションをとったり、予期せぬトラブルに対処したりする際にも、常に冷静さが求められます。ただ、自分の感情をずっとないがしろにし続けると、いつのまにか深刻なストレスを抱えてしまうかもしれません。
「少し前に能動的に涙を流す“涙活”が話題になりましたが、実際に、涙を流すと脳内ホルモンの働きでストレスは緩和するといわれています。逆に、感情を抑え過ぎるのは、余計なストレスをためこむもとです。もちろん、職場で感情むきだしにして、泣いたり怒ったりするのはご法度ですが、抑え込んだ感情をそのままにしておくのは、ストレスケアの観点からは望ましくありません。
仕事で嫌な思いをしたり、理不尽な目に合ったりした場合、その場は淡々とやり過ごしつつも、プライベートでは映画や小説などで涙を流したり、あるいは、自分の心情と似た歌詞の曲を聴いたり、歌ったりして、感情をすっきり浄化することをおすすめします」(櫻井さん)
感情のコントロールとは、自分の感情をないがしろにするのとは似て非なるもの。仕事中に感じた怒りや悲しみはただ抑圧するのではなく、プライベートで放出してあげましょう。
■5:小さな幸せをスルーするのはNG
さきほど、怒りや悲しみというマイナスの感情の扱いにふれましたが、うれしい・楽しいというプラスの感情もおろそかにしてはなりません。
「私の教え子のなかに、いつもとても幸せそうな顔をしている男性がいるのです。あるとき、その秘訣を尋ねたところ、彼いわく『うれしいことは全力で喜ぶようにしている』とのこと。
過去の後悔や現在・未来の不安にとらわれないためには、日常生活のささやかな幸せをかみしめることも重要なのではないでしょうか。
例えば、電車でたまたま座れたとか、ランチがおいしかったとか、そういうごく些細なことでいいんです。小さな幸せを日々実感することで、自己肯定感やストレスへの抵抗力もどんどん高まっていくと考えられます」(櫻井さん)
たしかに、人間の思考力には限りがあるので、ポジティブなこととネガティブなことを同時に思い浮かべるのは不可能ですよね。
ネガティブなことを考えてはいけない……と禁止すると、ますます悪いことばかり気になってストレスがたまりがち。ネガティブ思考を無理に追い払おうとするよりも、自分の心をポジティブなことで満たして、ネガティブが入り込む余地を少なくするのは賢いやり方だといえそうですね。
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いつもストレスでイライラしたり不安だったりする人は、今回ご紹介したNG習慣に少なからず心当たりがあるのでは? 心を穏やかに保ち仕事のパフォーマンスを上げるためにも、今日からぜひ改善しましょう。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美