慌しい師走にはできるだけ面倒なことは引き受けたくものですが、そんなときに限って回ってくるのが忘年会の幹事役。お店選びに日程調整、当日の目配り、気配り……幹事業は頭の痛い問題が山積みですが、ここは手腕の見せどころです。
飲み会を盛り上げることができればあなたの評価はアップ! 逆に、なんらかのそそうをやらかせば「あいつは仕事ができない」というレッテルを貼られることにもなりかねません。そこで、今回はマナー講師の平川直央子さんから、飲み会の幹事を任されたときのNGマナーを教わります。
いきなり飲み会の幹事をやることになったときのNGマナー9選
■1:口コミサイトだけでお店選びをするのはNG
幹事を任されたら、まずお店選び。平川さんは、口コミサイトを鵜呑みにする行為に警鐘を鳴らします。
「口コミサイトを参考にしてもよいのですが、その情報だけを鵜呑みにしてお店を決めてしまうのはNGです。口コミサイトの写真がおいしそうだったり、高評価の口コミばかりが並んでいたりしても、実際にそうとは限りません。
自分が実際に利用したことのないお店を候補にした場合、まず、お店に電話してみましょう。私の経験上では、電話の第一声の印象がよいお店は、店舗での接客レベルも高いです。逆に、電話対応がどこか頼りないお店は、店舗の接客も残念な傾向にあります。
電話での印象がよいと思った店には、実際に足を運びましょう。ランチ営業をしているお店であれば、せめてランチだけでも味わってみることをおすすめします。夜の集客につなげるために、ランチに力を入れているお店は多いので、ランチを食べてみれば、そのお店の料理のレベルを推し量ることが可能です。
下見ではただ料理をチェックするだけでなく、お手洗いを含めたお店全体の清潔感や、テーブルの間隔、個室の状況も確認しましょう」(平川さん)
テーブルの間隔が狭すぎてなんとなく落ち着かなかったり、個室とは名ばかりで薄いついたてで仕切られているだけだったり、実際に行ってみないとわからないことは多いですよね。当日に「しまった!」ということにならないように必ずお店の下見をしましょう。
■2:参加者の食物アレルギーをリサーチしないのはNG
そしてメニュー選びでは、参加者のアレルギーに気を付けた方がいいとのこと。
「できるだけ多くの人が参加できるように、まずはメールなどで参加可能な日時を募るのが通常だと思いますが、その際、『食物アレルギーのあるかたは併せてご連絡ください』と一言添えて事前にリサーチしましょう。
例えば、海老アレルギーの人がいるのを知らず、伊勢海老が名物のお店を選んでしまったら、アレルギーの人には、残念な思いをさせてしまいますよね。
コースメニューの一部に参加者のアレルギー食材が含まれている場合、別の料理や食材に交換可能かなどお店の人に相談しましょう。お客の要望にどれくらい誠実に応えてくれるかも、サービスの質と比例する傾向にあるので、相談したときの対応もお店選びの手がかりになりますよ」(平川さん)
自分の好みだけでお店や料理のコースを決めるのはNG! 皆が料理を堪能できるように事前のリサーチを怠らないようにしましょう。
■3:役職だけを基準に席を決めるのはNG
キャリア女性であれば、飲食店での上座・下座については、きちんとわきまえているはず。とはいえ、役職順に失礼のないように席決めをするだけでは、いまいち盛り上がりに欠ける飲み会になってしまう恐れがあります。
「もちろん、上座・下座のマナーも大切なのですが、ただマナーに忠実なだけでは、上役は上役同士、若手は若手同士で固まってしまいます。職場の飲み会には親睦を深めるという目的もあるのに、それでは目的を十分に果たすことができません。
また、役職者も『いつもの見慣れた相手ではなく、普段は接する機会のない新入社員とも話してみたい』と考えている人が多いのでは?
ですから、最初の席決めを役職順にした場合は、途中で席替えの機会を設けてもよいかと思います。あるいは、役職者には『今回の飲み会は世代間交流を深めるという目的で、このようなお席にいたしました』と一言ことわったうえで、なるべく年代が混じるように席を決めてしまってもよいでしょう」(平川さん)
「なんで俺がこの席なんだ!」というクレームを出さないためには、くじ引きを活用するのもよいかもしれませんね。
■4:参加申し込みの期限を設定しないのはNG
飲み会の参加を呼びかけたのになかなか返事がこなかったり、「行けたら行く」などとあいまいな返事をされたり、ドタキャンされたり……。幹事にとって頭の痛い問題です。これを回避したいなら、期限の設定が重要!
「飲み会の開催日時を告知する際に、参加申し込み期限を明確に定めましょう。期限までに返事がなければ不参加、『行けたら行く』も不参加の扱いです。
また、会費も期限を定めて事前に徴収しておくほうが安心。ドタキャンへの対処法は、お店のキャンセル料の規定にもよりますが、基本的には、仕事の都合などやむを得ない事情であっても、事前に徴収したものを返金しないというルールを周知徹底しましょう」(平川さん)
幹事あるあるの悩みは、ルールを明確にすることで解決!
■5:役職者にメールだけで会の告知をするのはNG
また、飲み会開催の告知をメールだけで済ませるのは危険。
「会の告知を一斉送信のメールだけで行った場合、メールを見落としてしまう方がいる可能性があります。特に、『この人には絶対に参加してもらわなければ』という役職者に対しては、メールを送信する前のできるだけ早い時期に、直接本人に口頭で伝えるか、または秘書の方に伝えるようにしましょう。また、挨拶や乾杯の音頭の依頼は、このときに併せてお願いしておくとスムーズです」(平川さん)
役員のなかには話し始めると長い……という御方も。いたずらに挨拶が長引かないように、目安時間も伝えておきましょう。
■6:一度告知メールを送っただけで満足するのはNG
告知メールを一斉送信したものの、なかなか参加の声が集まってこない……。このままじゃお寒い飲み会になりそうでピンチなときには、リマインドが必須だそうです。
「飲み会の開催告知は、スケジュールの調整がしやすいように、なるべく早く行うべきですが、そうすると、『そのうち返事するつもり』でうっかり忘れてしまう人もいます。ですから、メールを一度送るだけで告知は完了とするのではなく、参加申し込み期限の2~3日前に参加を促すリマインドメールを送るようにしましょう」(平川さん)
ただでさえ慌しい師走は、飲み会の告知メールをうっかりスルーしてしまう人も多いもの。リマインドメールを活用して、参加者を確保しましょう。
■7:当日の開始時刻ギリギリに会場入りするのはNG
いよいよ飲み会当日! 幹事が遅刻厳禁なのは当然ですが、だからと言ってギリギリに入店するのもいけません。
「会の規模にもよりますし、お店によっては営業時間前の入店をお断りしていることもあります。ただ、他の参加者をお迎えできるように、15~30分前には到着しておくとよいでしょう。もし店内に入れるのであれば、テーブルに席札を設置するなどの準備をしておきます」(平川さん)
何事においても第一印象は大事。誰よりも早く会場入りして、笑顔で参加者をお迎えしましょう。
■8:自分の飲み食いに夢中になるのはNG
お酒の席では、酒癖の悪い人がいたり、途中で誰かが体調を崩したりなど、何かとトラブルが生じがち。お酒を飲めない人も含めて、誰もが楽しめるような配慮が必須になります。
「幹事ももちろんお酒や食事を堪能してもよいのですが、周囲への目配りは常に忘れないようにしましょう。盛り上がっていない人や飲み過ぎている人がいないか要チェックです。
つまらなそうにしている人には積極的に話しかける。そして、お酒のペースが速すぎる人にもやんわり釘をさしておきたいですよね。ただ、立場上、難しい場合は、近くにいる人に『●●さんがこれ以上、飲みすぎないように、ちょっとお願い』と耳打ちしておくのもよいでしょう。
それから、飲み会では、気分が悪くなってお手洗いにこもってしまう人もいます。お手洗いから帰ってこない人がいるのに気付いたら、自分か代わりの人が必ず様子を見に行くようにしましょう」(平川さん)
本当に幹事は気の休まる暇もありませんね。これも仕事の一環だと割り切って、場のムードの盛り上げ役・調整役に徹すべし。特に、飲みすぎはトラブルの元凶なので、全体の飲酒ペースに目を光らせましょう。
■9:終了時にお店の人に感謝を伝えないのはNG
最後に、飲み会終了時のNG。幹事がそそくさと帰るのもマナー違反です。
「お店を使わせていただいたことに対し、お店の人にお礼を伝えるのを忘れないようにしましょう。飲み会ではつい羽目をはずす人がいて、お店に対してなんらかのそそうをしてしまうこともあります。もし、会社の名前で予約していたら、それが会社の評価を下げることにもつながりかねません。
お店に迷惑をかけたかどうかにかかわらず、幹事が帰り際に一言お礼を伝えておけば、お店の人は会社にもよい印象をもつはずです。特に、よいサービスをしてもらって、『次の飲み会もぜひこのお店で!』という場合には、心をこめて感謝の意を伝えましょう」(平川さん)
お店側から見れば、幹事はいわば会社の顔。最後まで気を抜かずに、お店に人にも礼節を尽くしましょう。
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何かと面倒なことの多い飲み会の幹事ですが、みんなをもてなすことでやりがいも感じられるもの。今回ご紹介したNGマナーにはくれぐれも注意しつつ、「あなたに任せてよかった!」と周囲から感謝されるような名幹事を目指しましょう。
愛されマナー学
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美