発売中のPrecious1月号では、コートの着回しテクニックを大特集!
発売中のファッション誌『Precious』1月号に掲載されている「コートの『着回し』テク公開!」という企画、参考にしていただけましたでしょうか? 寒さの厳しい冬はコートが不可欠。何着かお気に入りのコートを持っているとしても、毎日のこととなると着こなしのマンネリ化は否めません。冬のスタイリングの一番の問題点ですよね。
この企画では、スタイリスト・戸野塚かおるさんが、7着の定番コートをもとに、27コーディネートもの着回しに挑戦。さらに、「色で着回す」、「旅先で着回す」、「ボトム別に着回す」などと、それぞれのコートに「着回し」のお題をつけていたので、さすがプロの戸野塚さんでも難易度の高いテーマだったようです。

さて、 どうやって、着回しコーディネートが完成したのか? その舞台裏を、プロセスを追ってご紹介します。ご紹介するのは、150ページ「キャメルコートでつくる配色着回し」のコーディネートと、159ページの「グレージュコートでつくる巻き物着回し」のコーディネート、計2スタイルの制作プロセスです。雑誌がお手元にある方は、ぜひ合わせてご覧ください。
コーディネート実例1:「キャメルコート×プラムカラー」でつくる配色着回し
「ここでのお題は『配色着回し』。まずは主役のコートの色を何色にするのか?がポイントです。黒のコートの場合だと全体が重く地味になるか、逆にコントラストがつきすぎてきつく見えるか…と、配色をテーマにした着回しには不向きです。また、淡いグレーやベージュのコートは、全体がぼやっと膨張する危険もあり。その上、どこかで見たことがある…と、マンネリを打破する色合わせとしては、その鮮度はイマイチです。
そこで、私が選んだのはキャメル色のコート! 濃厚な色調はシーズンの旬であることに加え、まとうだけで全体をリッチに華やかに見せる絶対的な効果があるからです。合わせる色は、ここで紹介するプラムのほかに、グリーンやピーコックブルーなど、深みのある色味がおすすめ。こっくりとした落ち着いた色合わせは、余裕のあるおしゃれを楽しみたい鮮度の高い女性にぴったりです」(戸野塚さん)
■着回しに使った主役のキャメルコートがこちら

戸野塚’s コメント 「キャメル色といってもいろいろあるので、自分の肌色に似合うキャメル色を見つけることが重要。一般的に黄味の強いベージュ系よりも、やや赤みを帯びたコクのあるブラウン系キャメルのほうが、リッチ感が増すので、大人の女性にはおすすめです」
STEP1:プラム色のボトムで艶をプラス

戸野塚’s コメント 「パープルがかったプラム色は、見た瞬間にぐっと引き込まれた今季のトレンドカラーです。何を合わせたらいいか難しい色ですが、キャメルと合わせたら不思議としっとり、優しい女性に見える!!(グレーや黒ではなかなかこうはいかないのです)。しかもベルベット素材のパンツで艶のあるプラム色を合わせているところにも注目です! ただし、妖艶なこの配色、エレガントすぎると老けてしまうので、あえてここではカジュアルダウン。ざっくりとしたローゲージニットがいい仕事をしています」
STEP2:ブーツやバッグもキャメル色で統一

戸野塚’s コメント 「キャメル×プラムはおしゃれなぶん、難易度が高い色合わせ。そんなときは、ほかの色はいっさい加えず、2色だけにして色数を制限することがコツ。ここに無難だからといって、手持ちの黒の靴やバッグでお茶を濁したら、「配色の美しさ」は台無しですから。とはいえ、コートとまったく同じ色のキャメル色の靴やバッグを探すのも難しいものです。微妙に異なるキャメル色をあたかも同じに見せるには、アイテムの質感を変えること! たとえばバッグをマットなスエードに、ブーツは艶のあるカーフに…といった感じに。インナーに着たニットも微妙にキャメルの色調が違うけれど、ケーブル風の編み地のおかげで、違和感なくコートに溶け込みます」
STEP3:プラム色のマフラーをプラス

戸野塚’s コメント 「パンツだけでプラム色を差すのではちょっと物足りない感じ。そこで、カシミアのマフラーをプラスしました。まずはコートの襟に沿うように長く垂らしてみます。パンツのプラム色とつながって、縦ラインが強調され、全体がすっきりと見える辛口なスタイリングが完成!」
STEP4:マフラーの巻き方をひと工夫

戸野塚’s コメント 「マフラーの巻き方はコートスタイルの最後の仕上げです。あれこれと鏡の前で自分に似合う、またそのときの着こなしや気分にしっくりなじむ巻き方を研究してください。
このコートの場合は、たっぷりとボリュームがあるので、マフラーの分量を大きくして巻きつけるのはオススメしません。写真のように、きゅっと襟元に結ぶと目線が上に行き、断然バランスがよく見えます。また、このコートをカジュアルに着るには、いかに着くずすかが勝負。テーラードカラーを美しく見せて着るのもいいけれど、襟の形をあえてくずして、マフラーでカバーすればご覧のとおり。こなれワザのひとつですね」
コーディネート実例2:「グレージュコート×ファー&プリントスカーフ」でつくる、巻き物着回し
「このスタイリング(159ページ掲載)では、大人の女性の最愛カラー『グレージュ』のコートを軸に、巻き物トッピングで変化をつけた着回し例を見せていきました。巻き物というとストールからスヌード、スカーフまで多種多様にありますが、コートの表情を変えるにはなくてはならない小道具です。
でも、毎日同じスカーフを同じ巻き方では、冬の半ばにして、そでを通すのもうんざりなんてことにもなりかねません。活躍頻度の高いグレージュのコートだからこそ、手持ちのさまざまな巻き物を工夫して、最低でも3通りくらいに着回せるようになると、着こなしの幅はぐんと広がります」(戸野塚さん)
■着回しに使った主役のグレージュコートがこちら

戸野塚’s コメント 「今季のコートを選ぶひとつの基準として、“曖昧なネックデザイン”を挙げたいと思います。メンズライクなテーラードカラーのチェスターコートや、ノーブルな印象のステンカラーのクチュールコートは、きちんとしすぎて今の気分ではありません。今シーズンのコートの特徴である、ゆったりとしたシルエットをいかすためにも、襟の形は着こなししだいで、「どうにでもなる」ものを選んで!
たとえば、このコートは少し立ち気味のフラットカラー。折り返せばエレガントに、立てればカジュアルに……と雰囲気が変わる曖昧なネックデザインです。つまり、さまざまな“巻き物”を効果的にトッピングできる、というわけです」
STEP1:インナーは端正な白ワンピース

戸野塚’s コメント 「カトリーヌ・ドヌーブの往年の映画『昼顔』を連想させる清楚なタンクワンピースをインに。クリアな白はくすみがちなグレージュを品よく、明るく見せてくれます。注目は、ひざまでのコート丈(ミドル丈)にぴったり収めたやや短めのワンピース。“昼顔風”の小悪魔的なコンサバスタイルを目指してはいるのですが、コートからスカートがはみ出ていては、決してエレガントとは言えません。“スカートの丈問題”は悩みどころですが、はみ出しは3~5cmが限界。それ以上に差があるならば、潔くマキシ丈のコートを着ることをおすすめします」
STEP2:グレージュ系の小物で統一

戸野塚’s コメント 「襟元のファースヌードを筆頭に、ブーツもグローブも小物類はコートになじむ淡い色調をチョイスして全体を優しく品よくまとめます。グローブはややブラウンが強く、ブーツはグレー系、そしてファースヌードはグレーのグラデーションと微妙に色味は違うのですが、それぞれのアイテムは点在するので問題なし。それにコートの“グレージュ”という中間色はそれらを違和感なくなじませる、つなぎ役としての力があるのです。
足元をショートブーツにしたのは、白ワンピースにパンプスだとあまりにもコンサバすぎるから。きゅっと足首が締まったブーツで遊ぶことが私のこだわりです」
STEP3:プリントスカーフをファーにプラス

戸野塚’s コメント 「この巻き物テクニックは、今シーズンぜひ真似してもらいたい! 正方形のプリントスカーフを細くたたみ、ファースヌードに巻きつけながらフロントで結んだだけ。ファー×プリントスカーフの合わせワザで、ぐっと華やかにゴージャスになったと思いませんか? ファーの見える分量を工夫しながら(ファーやスカーフを部分的に引っ張り出したり、引っ込めたりして)、ふんわりとツイストしながら緩めに結ぶのがコツ。このときスカーフの左右の端は差をつけて、どちらかを長く垂らして流れるようなラインをつくりましょう。巻き物は一枚だけで、なんていう思い込みは捨てて、自由な発想でおしゃれを楽しんでください」
STEP4:柄の1色とリンクするバッグが引き締め役に

戸野塚’s コメント 「プリントスカーフは白×チョコブラウンのラインに明るいブルーの額縁がおしゃれな幾何学柄。ノーブルな着こなしにほんの少しのきれい色が上品なのですが、なんとなく落ち着かない感じ。そこで、同じようなライトブルーのバッグを投入してみると……、しっくりなじんで見えるから不思議。鮮やかなきれい色が浮いて見えるときは、あえてその色の分量を増やしてみましょう。この方法は、コーディネートに迷ったときに私がときどき試してみるテクニックです。きれい色が拡散されて、全身を遠くから見たとき、むしろ色が悪目立ちするのを防いでくれます」
以上、コートの着回しテクニックがどのようにつくられているか?の舞台裏をご紹介しました。お手持ちのコートをより活用していただく参考になれば幸いです。
※掲載した商品はすべて税抜です。

- TEXT :
- Precious編集部
- PHOTO :
- 小林美菜子
- STYLIST :
- 戸野塚かおる
- DIRECTION :
- 小林 綾、喜多容子(Precious)