英国の歴史的な小型車「ミニ」のサスペンションを考案したモールトン博士が、自らの名を冠した自転車工房を立ち上げたのは1962年。本人は身長6フィートの大男なのに、その自転車の車輪は直径17インチしかなかった。当時からロードレース用の自転車は、今と同じ27インチタイヤをはいていたのに、だ。

世界一美しいフレームはお城でつくられる!

見よこの機能と美が融合した自転車を!

通称「モールトンタイヤ」と呼ばれる小径の17インチタイヤが採用された『AMシリ ーズ』は、「アレックス・モールトン」の数あるモデルのなかでもトップクラス! 写真は、造形美あふれる分割型フレームに、イグアナレザーのサドルが贅沢すぎるカスタマイズ仕様。『AM-GT Mk. 2 』(KOOWHO〈アレックス・モールトン〉)※参考商品
通称「モールトンタイヤ」と呼ばれる小径の17インチタイヤが採用された『AMシリ ーズ』は、「アレックス・モールトン」の数あるモデルのなかでもトップクラス! 写真は、造形美あふれる分割型フレームに、イグアナレザーのサドルが贅沢すぎるカスタマイズ仕様。『AM-GT Mk. 2 』(KOOWHO〈アレックス・モールトン〉)※参考商品
  • ステンレス製のフレームは、銀ロウで溶接されている。この見た目にも美しい細部へのこだわりこそ、「モールトン」精神の真骨頂
  • 博士が開発したフロントサスペンションにより、路面からの振動を軽減することに成功。驚くほどなめらかなドライビングが可能に

加速性能に優れ、空気抵抗も小さい。何より、自転車全体をコンパクトにできる。というのがモールトン博士の説く小径タイヤの利点である。コンパクトさをさらに生かすために、フレームは二分割構造にもなっていた。

一方、小径タイヤには弱点もある。乗り心地の悪さもそのひとつだが、それをカバーするために、ゴムの弾性を利用する緩衝装置を後輪に付けた。「ミニ」で使ったラバーコーンと同じ原理のサスペンションだ。

小径タイヤも、折り畳み構造も、サスペンション付きも、現代ではもう珍しくないが、自転車が今のように脚光を浴びていたわけでもない半世紀前に、「アレックス・モールトン」はこれらを実現していたのである。

カーボンのような新素材が自転車に使われる前から、軽量と高剛性にも注目し、80年代からはステンレス管を高度な溶接技術で組んだトラスフレームが代名詞になった。「アレックス・モールトン」に「名品」の凄みと風格を与えているのは、その革新性である。

BRAND HISTORY

世界中のサイクリスト憧れの自転車フレームメーカー「アレックス・モールトン」が創業したのは、1962年。イギリス南西部に位置する風情豊かな街ブラッドフォード・オン・エイヴォンにある「The HALL」と呼ばれる歴史的にも貴重な古城(写真左)が、アレックス・モー ルトン博士(写真右)の住居兼、自転車ファクトリーというのも、英国的だ!資料提供:ダイナベクター
世界中のサイクリスト憧れの自転車フレームメーカー「アレックス・モールトン」が創業したのは、1962年。イギリス南西部に位置する風情豊かな街ブラッドフォード・オン・エイヴォンにある「The HALL」と呼ばれる歴史的にも貴重な古城(写真左)が、アレックス・モー ルトン博士(写真右)の住居兼、自転車ファクトリーというのも、英国的だ!資料提供:ダイナベクター

※2012年夏号取材時の情報です。※価格は税込みです。

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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