音楽を楽しむ環境は、近年大きく変化した。Apple musicやGoogle play、Spotifyといったいわゆるサブスクリプションがデフォルトとなり、音源へのアクセスはスマートフォン経由が主流となった。アウトプットに関しても、ワイヤレスやハイレゾ対応など多彩なヘッドフォン&イヤフォンが展開されている。ただその一方で、生活空間で音楽を楽しむことにおいては、いまひとつ更新感が薄いと感じる趣も、多いかもしれない。各社でリリースされているAIスピーカーは確かに便利だが、サウンドのクオリティという点では、決して満足とはいえないだろう。音楽コンテンツへの接続同様に、サウンドのアウトプットに関しても、革新的なテクノロジーとともに、私たちを納得させるものはないのだろうか。

ユニークなデザインが生む、異次元のサウンド

低域から高域まで、迫るように耳を捉える「Phantom PREMIER」の最上位機種、「Gold Phantom」

ツィーターにはチタニウムを採用し、最大出力は4500W/108db、再生可能帯域は14Hz〜27kHz、サイズは343mm(全長)×253mm(幅)×255mm(高さ)、重量11.4kg。¥399,000(デビアレジャパン)

 そうした問いかけへの回答のひとつとなりそうなのが、フランスのオーディオブランド「Devialet(デビアレ)」のアンプ内臓スピーカー「Phantom PREMIER(ファントムプレミア)」だ。

 2018年の9月より日本での展開が始まり、「ビヨンセやJAY-Zが使っている、世界最高品質のワイヤレススピーカー」として話題となったので、ご存知の方も多いかもしれない。

 もともとピュアオーディオの世界で、デジタルアンプの高効率とアナログアンプのサウンドクオリティを兼ね備えた独自技術「ADH®(Analog Digital Hybrid)」を採用したアンプ「Expert Pro」を発表していた同社。

 この「ファントムプレミア」にもそうした技術が盛り込まれている。

スタンダードモデル「Classic Phantom」

こちらは「Phantom PREMIER」のスタンダードモデルである「Classic Phantom」。サイズや重量は「Gold Phantom」と同じで、最大出力1200W/101dB、再生可能帯域16Hz〜25kHz、¥249,000。先出の「Gold Phantom」とこの「Classic Phantom」以外にも、ウーファー部がメタリックな仕上げの「Silver Phantom」がある。ちなみに「Silver Phantom」は最大出力3000W/105dB、再生帯域16Hz〜25kHz、¥319,000(デビアレジャパン)

 大型鳥類の卵、または宇宙船を思わせるような独特な形状のエンクロージャーには、球体状のフロント部分に高音域を再生するツィーターと中音域を再生するミッドレンジのユニット、さらに左右両サイドには低音用のウーファーと、計4つのユニットが配置されている。

 それらはいずれも内蔵アンプによって、ユニットごとにバイアンプの形でドライブされているという。基本的には1台で完結しているが、2台でステレオ設定することもでき、さらに3台、4台と連携させることも可能だという。こうしたマルチドライブによるアップグレードは、先述のピュアオーディオアンプ「Expert Pro」から同社では提案されていた。

「Tree」スタンド

より音響的クオリティを追求するむきには、専用スタンドも用意されている。「Gold Phantom」に推奨されている「Tree」スタンド。660mm(高さ)x340mm(幅&奥行き)、¥61,900(デビアレジャパン)。このほかにも白色のスタンド「White Tree」や三脚の低層スタンド「Treepod」などもある。

 そのサウンドは、個人的な感想を述べると、きわめて直接的な質感だった。広い再生帯域やパワーといったスペックで示されていた品質を感じさせる音が、厚みをもって、「ファントムプレミア」を起点に波のように空間を伝わり、押し寄せたように感じられた。

 その一方で、オーケストラは個々の楽器の響きがしっかり際立っている。出色なのはヴォーカルで、目の前で唇の動いているような生々しさ、音像が感じられた。2台によるステレオ設定で聴いてもその印象は変わらなかったので、それは「ファントムプレミア」のキャラクターといえるかもしれない。

 さらに音楽ソースへのアクセスも、光ケーブルやアナログ接続のほか、Bluetooth、AirPlay®、Spotify Connectなどワイヤレスにも幅広く対応していて、さらに同社のSPARKアプリをダウンロードしてコントロールすることも可能だ。既存のリスニング環境にスムースに導入することができる。

専用キャリーケース「Cocoon」

専用キャリーケース「Cocoon」も別売りで用意されている、¥45,900(デビアレジャパン)。このほかにもリモートコントローラーやマルチルームでの使用を実現するネットワークなどが、アクセサリーとして展開されている。

 プライスは¥249,000~と決して安くはないが、オリジナリティ溢れるデザインや使いやすさ、それらと反比例するような本格的なサウンドを考えると、価値ある投資といえるのではないか。ピュアオーディオのアイテムにはないセッティングの自由度は、音楽が生活必需品なっている人ほど求められる要素かもしれない。

手のひらに乗るサイズでも、スケール感はそのまま

「Phantom PREMIER」よりひとまわり小さい「Phantom REACTOR」。サイスは219mm(全長)x157mm(幅)x168mm(高さ)で、重量4.3kg。「Phantom REACTOR 600」と「Phantom REACTOR 900」の2モデル展開で、「600」が最大出力600W/95dB、再生可能帯域は18Hz〜21kHz。「900」が最大出力900W/98dB、再生可能帯域は18Hz〜21kHz。価格は「Phantom REACTOR 600」¥159,000「Phantom REACTOR 900」¥199,000(デビアレジャパン)

 そして11月には、この「ファントムプレミア」を、4分の1の大きさに小型化した「Phantom REACTOR(ファントムリアクター)」が発表された。センターのスピーカーはフルレンジを採用し、左右にウーファーを配した3つのユニットで構成されている。

 それぞれのユニットが独自にドライブされるのは上位機の「ファントム・プレミアム」と同様。さらにADH®やSAM®といったテクノロジーや、多彩な接続性も継承されている。重低音を生成する画期的音響処理であるハートベースインプロージョン(HBI®)が生み出す、大音量再生時に左右のウーファーが波打つような動きも、「ファントムリアクター」にも引き継がれている。

 サウンドは上位機と比べると低音域の豊かさや高音域の伸びは控えめだが、そのぶん全体にバランス感があり、よりリラックスして音楽が楽しめるように感じられる。

 ジャンルレスに、生活の中で間断なく音楽が流れているような環境を求める人には、そのサウンドは合っているかもしれない。個人的にはやはり片手で持てるほどのサイズが魅力的に映った。

 例えばワークスペースや書斎において、机上や書棚に置くのに収まりがいい。読書やちょっとした作業のときに、ヘッドフォンでなくオープンイヤーで高品質のサウンドを味わえるのは実に快適だ。

「Phantom REACTOR」発表会の様子。手前の「Phantom PREMIER」との大きさの差がよくわかる。「Phantom PREMIER」と「Phantom REACTOR」は伊勢丹新宿店本館5階や二子玉川蔦屋家電1階音楽フロアなどで実機に触れることができる。

「ファントムプレミア」と「ファントムリアクター」、それらのサウンドは、生活における音楽のあり方を更新するに違いない。新しい年を迎えるにあたって、自分自身、またはパートナーや家族の感性を豊かにするギフトとして、こうしたアイテムを選ぶのはどうだろうか。

※価格はすべて税込価格です。

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この記事の執筆者
『エスクァイア日本版』に約15年在籍し、現在は『男の靴雑誌LAST』編集の傍ら、『MEN'S Precious』他で編集者として活動。『エスクァイア日本版』では音楽担当を長年務め、現在もポップスからクラシック音楽まで幅広く渉猟する日々を送っている。