クロワッサンやミルフィーユ、そしてパイ包み焼き。これらの料理はパイ生地がポロポロとこぼれやすいため、お店で食べるときにちょっとためらってしまいますよね。
散らかしながら食べると、ガサツで卑しい人に見られやすいもの。パイ生地フードをエレガントにいただくにはどうすればいいのでしょうか? ルミナスフィニッシング・マナースクールの井上実智子さんから、パイ系の料理を食べるときのマナーについて教わりました。
パイ生地フードを食べるときに気をつけたいNGマナー9選
クロワッサンを食べるときのNGマナー3選
表面のサクサク感と中のしっとり感のコントラストがたまらないクロワッサン。パイ生地を散乱させず美しく食べるには、以下の作法に注意しましょう。
■1:パンを高く持ち上げた状態でちぎるのはNG
パンは直接かぶりつくのではなく、ひと口サイズにちぎりながら食べるのがマナー。ちぎる際、パンを皿から高く持ち上げるのは避けたほうがよいとのことです。
「お皿から持ち上げず、パンの一部をお皿につけた状態でちぎるとパンくずを最小限に抑えることができます。特に、クロワッサンのように表面がサクサクしたものを持ち上げてちぎると、パンくずがお皿だけでなく、テーブルにまで飛び散ってしまう恐れもありますので、低い位置でちぎるようにしましょう」(井上さん)
パンくずが落ちるのは仕方がありませんが、テーブルまで汚してしまうのは恥ずかしいですよね。見苦しくならないように、パンの一部をお皿につけた状態でちぎるようにしましょう。
■2:ふんわりちぎるのはNG
同じクロワッサンを食べていても、パンくずが大量に出る人とあまり出ない人がいるのはなぜでしょうか? 井上さんによれば、ちぎり方にちょっとしたコツがあり、多少は力を入れたほうがよいとのことです。
「ただ漫然とちぎるとパンくずが出やすいので、層に沿ってちぎるようにしましょう。また、ふんわりちぎるよりも、多少力を入れ、中のしっとりした部分を引っ張る感じでちぎるほうがパンくずが出にくいと思います」(井上さん)
クロワッサンをちぎるときは、層の向きと力加減に注意しましょう。
■3:皿に落ちたパンくずを無理やりパンにくっつけて食べるのはNG
どんなに気をつけても、クロワッサンでは、パンくずが出てしまうもの。皿に落ちたパンくずの扱いについて、“中のしっとりした部分にくっつけて食べる”ことを推奨する人もいるようですが、井上さんはその食べ方について「あまり美しくないのでは?」と疑問を呈しています。
「フランス料理では、食後デザートの前にお店の方が“ダストパン”という道具を用いて、テーブル上のパンくずをきれいに掃除してくれます。つまり、パンくずは出て当然のものなのに、お皿に落ちたものまでお客が無理に拾い集めるのはどうなのでしょうか……。エレガントというより、かえって不自然な気もします。
もちろん、さりげなくつけるのは構いませんが、“お皿をきれいにしなくては”という点にとらわれる必要はありません」(井上さん)
クロワッサンの中がいくらしっとりしているといっても、パンくずは簡単にはくっついてくれません。焦ってぎこちない挙動になるよりは、パンくずを自然に皿に残しておくほうが賢明でしょう。
ミルフィーユを食べるときのNGマナー4選
サクサクのパイと濃厚なクリームが何層にも重なって、食べにくいスイーツの筆頭ともいえるミルフィーユ。美しく食べるためには以下の作法に注意しましょう。
■4:出されてすぐに食べないのはNG
提供された料理は放置せずに、なるべくすぐに食べるのがマナーとされていますが、もちろんスイーツも例外ではありません。しかも、ミルフィーユの場合、単にマナー上、そうしなければならないというだけでなく、時間をおけばおくほど食べにくくなってしまうと井上さんは話します。
「ミルフィーユは時間が経つと、クリームがゆるんできたり、パイのサクサク感が失われたりして、カットするのが難しくなります。味の面でも見た目の美しさの面でも、時間を置かずに食べるのがおすすめです」(井上さん)
デザートはおしゃべりしながらゆっくり味わいたい……という人も多いでしょうが、ミルフィーユは提供されたらすぐにカットしましょう。
■5:上から下まで一気にカットしようとするのはNG
パイ生地がポロポロ落ちたり、クリームがはみ出したりして、お皿がどんどん無残な状態になるのは“ミルフィーユあるある”ですよね。
ミルフィーユもクロワッサンと同様、パイ生地が皿に落ちるのはやむをえないのですが、ナイフとフォークを使ってなるべくきれいに食べるには、力まず少しずつカットするのがコツとのことです。
「ミルフィーユを上から下まで一気にカットするのは、かなり無理があります。上半分と下半分を分けてカットするようにしましょう。また、パイ生地を切るときはナイフを上から押さえつけるのではなく、小刻みに動かすようにすると、生地がポロポロと落ちるのを防ぐことができます。
ちなみに、ミルフィーユははじめから倒してしまうのもおすすめです。パイ層の上からナイフを入れるよりも、倒して横からカットするほうが、きれいに切れると思いますよ」(井上さん)
立てたままの状態でエレガントに食べる自信がなければ、いっそのこと倒してしまいましょう。
■6:フォークを横向きにしてカットしようとするのはNG
ナイフとフォークを使うよりもさらに難易度が上がるのは、フォークのみで食べるケース。ショートケーキなどのやわらかい生地は、フォークを横向きにして入れるだけで難なくカットできますが、ミルフィーユの場合、その方法ではパイ生地はびくともしません。力任せに押さえつけてもクリームが横から飛び出すだけ……。
「お店でフォークしかない場合、フォークを立てて突き刺します。フォーク全体を突き刺すのではなく、わざと歯を1本だけ外に出しておくのがポイントです。その状態で、半分まで突き刺してからフォークを寝かせてカットするとよいでしょう」(井上さん)
この方法を知っておけば、いざというときも安心です!
■7:皿に落ちたパイ生地を放置するのはNG
皿に落ちたパイ生地の扱いですが、クロワッサンとは異なり、ミルフィーユではカトラリーもクリームもあるので、皿になるべく残さないようにしましょう。落ちたパイをさりげなくクリームにからめながら食べれば、パイ生地が皿に散らかるのを防ぐことができます。
パイの包み焼きを食べるときのNGマナー2選
スープの入ったポットにパイが覆いかぶさった包み焼きの正しい食べ方をご存知でしょうか? パイの包み焼きの食べ方では以下の2点を押さえておきましょう。
■8:はじめにパイを全部崩してしまうのはNG
パイの包み焼きは、パイを崩しながら中のスープと一緒に味わう食べ物ですが、はじめにパイを全部崩してしまうのはマナー違反に当たります。
「外側のパイは、香りや熱を閉じ込めるという役割がありますので、はじめにパイを全て崩してしまう食べ方はおすすめできません。少しずつ崩しながら、風味の変化を楽しみましょう」(井上さん)
はじめにパイを全てポットの中に落としてしまうと、スープの味もパイのサクサク感も台無しに……。焦らず少しずつ崩していきましょう。
■9:器の縁に残ったパイを指で取るのはNG
パイ包み焼きでは、ポットの縁にパイが残ることもありますよね。縁のパイはカリカリして見るからにおいしそうですが、指でつまんで取るのはNG!
「縁に残ったパイは、ポットとパイの隙間にスプーンを入れると、ポロッと簡単に取れることが多いです。指で取らずに、スプーンでいただくようにしましょう。すっかり焦げ付いてスプーンで取れない場合は、そのまま残しておきます」(井上さん)
焦げ付いたパイも捨てがたいですが、お店で上品に振る舞いたいときは我慢しましょう。
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きれいに食べるのが難しいため、人前では憚られるパイ料理ですが、これで自信をもってお店で注文できそうですよね。エレガントにパイのサクサク食感を堪能しましょう!
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美