ボルボの個性を表すものとして、以前から「スカンジナビアンデザイン」と言葉が使われてきた。スウェーデンのブランドだから納得、という気もするが、では「スカンジナビアン〜」とは、いったいどんなものなのだろうか? ボルボ・カーズのデザイン部門上級副社長にして、インテリア部門のチーフであるロビン・ペイジ氏によれば、北欧の自然にインスピレーションを受けながら、シンプルでモダンなデザインを磨き上げていく作業が、ボルボらしさを生み出す源泉だという。乗り手に温もりを感じさせるボルボには、そんな秘密があったのだ。

高級車ブランドを渡り歩いてきたベテランが来日

上の写真は旧型V60。
こちらが昨年から日本に導入が始まった新型V60。プロポーションの違いは歴然だ。

 2年連続で日本カー・オブ・ザ・イヤーのタイトルを獲得し、年間の新車受注台数が22年ぶりに2万台を超えたボルボ・カーズ(以下ボルボ)。人気のドイツ車勢が販売面で伸び悩んだだけに、10%を超える伸び率を達成したボルボの好調ぶりが際立っている。

 もちろん、こうした好調さは日本だけに限ったことではない。2018年度の世界販売台数では、1927年の創業以来初となる60万台を達成(642,253台・前年比12.4%増)。2014年以来、5年連続で最高記録を更新している。

 この好調ぶりの要因とはどこにあるのか? 1月中旬に来日したボルボ・カーズのデザイン部門上級副社長にしてデザイン部門の実質ナンバー2、インテリア部門のチーフであるロビン・ペイジ氏が、プレス向けに開催したセミナーで、その疑問に答えてくれた。1971年、イギリス生まれのペイジ氏だが、キャリアはジャガーから始まり、ロールスロイス、ベントレー、ブガッティなどでインテリアを担当。エリザベス女王のリムジンのインテリアまで手掛け、2013年にインテリアデザインの責任者としてボルボ・カーズに入社。現在に繋がるデザインの変革を支えていたひとりである。現在、ボルボのデザイン部門はチーフのトーマス・インゲンラート氏、エクステリア担当チーフのマクシミリアン・ミッソーニ氏、そしてインテリア担当チーフのペイジ氏と、3名のデザイナーが共同体制で牽引している。

 さてペイジ氏は、ボルボ好調の要因をまず「高度な安全性、モダンさ、そしてデザインにある」と分析。そのなかでデザインの果たす役割などについて話してくれた。「フロントグリルやロゴ、そしてヘッドライトのなかにトールハンマーが収まる個性的なフロントフェイスは一目でボルボ車だとわかります」。さらに「ボルボが求める『真のプレミアムなプロポーションとスカンジナビアンデザインを具現化』したことも要因」と続ける。その変化がよく理解できるのが、昨年日本デビューを果たしたV60エステート。旧型は典型的な前輪駆動のプロポーションだったが、新型ではがらりと雰囲気を変えている。

プロポーションの変化とインテリアへのアプローチ

XC60のインテリア。
こちらはXC90。
XC90のトップグレードにはクリスタル製のシフトレバーが取り入れられている。

 具体的には真横から見た場合、それまでは前輪の中心点からフロント・ドアの前端部までの距離が短く、結果的にキャビンが前寄りになっていた。さらに長いフロントオーバーハング(前車軸からボディ前端までの長さ)と、短いリアオーバーハング(後車軸からボディ後端までの長さ)というデザインだった。それが一転、新デザインは前輪を前方に移動することでフロント・ドアの前端部までの長さが伸び、ホイールベースも長くなった。またフロントオーバーハングは短く、リアオーバーハングは長くなったことから「伸びやかでバランスのとれた美しいプロポーションとゆったりとした居住性が実現できた」とペイジ氏は語る。

 そうしてプレミアムにふさわしいプロポーションを手に入れたなかで、インテリアについてもペイジ氏は、「XC60ではインパネ周りがまるで羽のような形で、海辺などに流れ着いた流木からインスピレーションを受けた木目素材であるドリフトウッド、あるいは木目パネルを使用。そこにクロームの縁取りを施すことでモダンなイメージを演出しました」と続ける。さらに「大型のXC90ではスイッチ類の数を減らしながらもシフトレバーにクリスタルを使うなど、テクノロジーとジュエリーの輝きの融合させることでボルボらしいフォーマル感などを演出しました」。

近未来のプランも明らかに!

来日したロビン・ペイジ氏とXC40。
レベル5のコンセプトカー「360C」。
スリーピングモードのイメージ。まるで機上のファーストクラス!

 一方、SUVのエントリーモデルであるXC40については「単なるスケールダウンではありません。全体のボリュームを抑えることでグラフィカルなデザインとし、より実用的で使いやすい収納やティッシュ入れ、携帯充電チャージャーなどの実用装備を充実させました」とペイジ氏。また「スカンジナビアン・テイストとしてはフェルトの素材の97%がリサイクルによるものです。こうしたこともボルボが好調な理由のひとつだと思います」とサスティナビリティへの貢献度も強調していた。

 こうしたボルボの好調ぶりをデザイン面で分析しただけでなく、ペイジ氏は昨年発表された完全自動運転のレベル5のコンセプトカー「360C」についても解説。興味深かったのは「ユーザーの用途やクライアントの要望に合わせて室内の仕様変更が可能です。『スリーピングモード』ではゲストは眠ったまま目的地に行けます。また『打ち合わせモード』では会議を行いながら移動や通勤が出できるのです」など、完全自動運転での快適移動と安全性確保についても、多くのインテリアのプランを披露してくれた。

 1時間少々の今回のセミナーではあったが、ここ数年の変化から、近未来までとかなり濃厚な内容だった。そしてロビン氏の言葉からは、デザインによってボルボというスカンジナビアン・ブランドが世界的なプレミアム・ブランドへと正しく導かれているという、自信のようなものが感じられた。当然、それはセールスでの成功と言う裏付けがあってのことだが、この先もボルボ・デザインから目が離せないと感じさせるには十分なセミナーだった。

 いかがだろう。一度見たら忘れない(イタリア車のような)インパクトの強さではなく、心に染み入るような、静かでモダンなボルボのデザイン。それは日々のドライビングで、より深く感じ取ることができ、その先に新たな発見もあるだろう。いいものを長く使うことに長けたメンズプレシャスの読者なら、その価値を理解できるはずだ。まずは販売店で現物を確認のうえ、居心地の良さを増幅させるオプションやスタイルに馴染む色合わせをシミュレーションすることをおすすめする。サンプルなどを使いながら比較することで、本質的なボルボデザインの良さを実感できるはずだ。

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この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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