ChatworkやSlackなどのビジネスチャットで、社内外の業務連絡や打ち合わせをすることが急激に増えてきましたよね。ビジネスチャットは、メールよりも気軽にコミュニケーションが図れる、非常に効率的なツール。

とはいえ、上司や社外の人とのやりとりでは、どれくらい砕けた感じで接していいのか、ちょっと悩んでしまうなんてことはありませんか? 自分では気づかないうちに失礼な態度をとったり、配慮が欠けていたりして、相手の心証を害していた……なんて事態は、避けたいものですよね。

そこで今回は、IT・SNSマナーコンサルタントの石川礼子さんから、ビジネスチャットを利用するときのNGマナーについて教わりました。特に関係が浅い人とチャットする場合は、些細なことが大問題になることもあります。以下の9つに気をつけてやりとりしていきましょう!

相手を不快にさせやすい「Chatwork」や「Slack」使用時のNGマナー9選

■1:儀礼的すぎるorくだけすぎる言い回しを使うのはNG

ビジネスチャットにも礼儀は必要
ビジネスチャットにも礼儀は必要

ビジネスチャットは「メールのような丁寧なあいさつや言い回しが不要だ」とよくいわれますが、どこまで儀礼を省いてOKなのでしょうか? この点、石川さんはひとつの目安として、電話で話すときの言葉遣いを意識するのがよいと主張します。

「ビジネスチャットで儀礼的な表現を多用すると、テキストの分量が多くなり、チャットの内容を見返そうとしたときに、スクロールするのが大変になってしまいます。

ですから、礼儀正しさを心がけるあまり、冗長な言い回しになるのは避けたほうがよいのですが、とはいえ、ただでさえ気持ちが伝わりにくいテキストベースのやりとりで、乱暴な言葉遣いは相手に不快感を与えてしまうおそれもあります。

ビジネスチャットのコミュニケーションでも、社外の人に対しては『お世話になっております』、社内向けには『お疲れ様です』などの挨拶はあったほうがよいです。言葉遣いでは、『です・ます調』や正しい日本語を使うことを心がけましょう。

判断に迷ったら、電話で話すときに失礼に当たらないか、相手からどのように受け取られるかを基準にすることをおすすめします」(石川さん)

また、ビジネスチャットでは、テンポよくメッセージのやりとりをすることも大切。メールほど言葉遣いに慎重になりすぎず、電話で話すつもりで、失礼のないコミュニケーションを図りましょう。

■2:「凝った顔文字」を使用するのはNG

さきほどテキストベースのやりとりでは気持ちが伝わりにくい、というお話がありましたが、気持ちを伝えるのに顔文字を使うのはアリなのでしょうか? 石川さんによれば、一般的によく知られているもので、かつシンプルなものであれば、使っても差し支えないとのことです。

「相手との距離感にもよりますが、お礼を伝えるときにニッコリ笑顔の(^^)、何かお願いするときにm(_ _)mなどは、ビジネスチャットで使用しても問題はないかと思います。他方、たくさんスペースをとるような凝った顔文字は控えるようにしましょう」(石川さん)

文字のみのやりとりでは気持ちが伝わりにくく、ともすれば冷たい印象を与えてしまうおそれもあります。一般的によく知られている顔文字を、うまく活用しましょう。

■3:通知を定期的に確認しないのはNG

仕事上の通知はすぐわかるようにしておくのがベター
仕事上の通知はすぐわかるようにしておくのがベター

ビジネスチャットでは、プッシュ通知機能があり、自分や所属グループ宛の新着メッセージがあれば、すぐにチェックできるのもメリットのひとつ。

ところが、この通知機能をオフに設定していたり、オンにしていても、自分が普段活用するメールアドレスを登録していなかったりで、重要な連絡事項を見落としてしまう人もいるようです。

これではスムーズに情報共有できるはずの、ビジネスチャットの意味が半減してしまいます。通知機能は、時間帯や通知の範囲などの設定もできるので、連絡事項の見逃しがないように適切に設定しましょう。

■4:重要なメッセージを保存しないのはNG

ビジネスチャット上のメッセージは、一度読めばわかったつもりになって、そのまま放置してしまうこともしばしば。しかし、実はこれがトラブルの元。重要なメッセージはただ読み流すだけでなく、保存やマーク付けをしたりするなどおきましょう。

もちろん、必要なメッセージはキーワードで検索して、後から探すこともできますが、ビジネスチャットでは、過去のメッセージがどんどん流れていってしまうので、遡って探し出すのがなかなか大変なこともあります。

また、そもそもメッセージの存在そのものを忘れてしまうこともあるので、自分の記憶力を過信せずに、そのツールに用意されている保存機能・チェック機能を活用しましょう。

■5:参加グループやスレッドの「趣旨に関係のない内容」を連投するのはNG

そのグループにふさわしい投稿を
そのグループにふさわしい投稿を

気軽にメッセージの書き込みをできるのが、ビジネスチャットの醍醐味。とはいえ、参加グループやスレッドの趣旨とはまったく無関係な内容を、あまり深く考えずに連投してしまうのは考えものです。

ビジネスチャットでは、書き込みが増えるにつれて画面がスクロールしていくので、あまり無意味な書き込みが続くと、グループやスレッドの本来の目的に即した書き込みが埋もれてしまい、見つかりにくくなってしまうおそれもあります。

あるテーマについて議論している最中に、「そういえばあの件、どうなったんだろう?」などとふと気になることがあっても、グループやスレッドの趣旨に無関係の内容は、うかつに書き込まないようにしましょう。

他方で、チャット内で誰かが雑談を始めてしまって収拾がつかなくなりそうなときに、角を立てずに本題に戻す方法として、石川さんは以下のようにアドバイスしています。

「いきなり話の流れを切って本題に戻ろうとすると、冷たい印象を与えてしまうかもしれません。そこで、可能であれば、一言『ありがとうございます』を添えてみることをおすすめします。

たとえば、ランチのおいしい店の話題にそれてしまった場合、『いいお店の情報をありがとうございます。今度、行ってみますね。ところで、本題に戻りますが~』というふうに、一言お礼を伝えたうえで、本題に戻りましょう」(石川さん)

自分のせいで雑談に流れてしまったときには、「長々と失礼しました。では、本題に戻りますが~」という一言があってもよさそうですね。

■6:打ち合わせ中に「一方的に長文」を打ち込むのはNG

対面での打ち合わせに代えて、ビジネスチャットでリアルタイムにメッセージをやりとりすることもありますよね。

ここから先は、ビジネスチャットでの打ち合わせでの注意点です。対面での打ち合わせと同様、ビジネスチャットでも、双方向のコミュニケーションを心がけましょう。伝えたいこと、説明したいことがたくさんあるからといって、長文を一気に打ち込むのは禁物です。

「長文を打ち込むと、会話のテンポも悪くなりますし、打込中がずっと表示されていると、相手にも不安を感じさせてしまうかもしれません。ですから、もしも長文で伝えなければならないことがあれば、事前に『長文になりますがよろしいでしょうか?』と、一言メッセージを送るようにしましょう」(石川さん)

ビジネスチャットでは、目の前に相手がおらず表情などが確認できないので、コミュニケーションが独りよがりになりがちです。伝達事項がたくさんある場合は、事前にことわりを入れるか、もしくは、文章の途中で一旦送信して、相手の反応を見るのもよいかもしれません。

■7:相手のタイピングペースに合わさないのはNG

夢中になって長文を打ち込むのはNG
夢中になって長文を打ち込むのはNG

あなたはキーボードのタイピングやスマートフォンのタップのスピードは速いほうでしょうか? もちろん、仕事をするうえでタイピングなどが速いに越したことがありませんが、ビジネスチャットにおいては、敢えて高速タイピングスキルを、抑えたほうがよいこともあるようです。

それは、チャットをしている相手のタイピングが、ゆっくり目のとき。相手のペースに合わさずに自分のスピードで打ち込むと、会話が一方的になったり、相手に余計なプレッシャーを与えてしまったりするおそれがあります。

「タイピングスキルの個人差だけでなく、タイピング環境差も考慮しなければなりません。たとえば、自分はパソコンのキーボードから打ち込んでいるときに、実は相手は出先でタブレットから応対しているというようなケースも考えられます。もしも、相手の入力速度が遅いように感じたら、相手のスピードに合わせるようにしましょう。

ちなみに、相手のペース合わせたほうがいいのは、顔文字の使用頻度も同様です。相手が顔文字を多用しているのに、自分はまったく使用しない……という状況では、あとからチャット内容を見返したときに、温度差が感じられてしまいます」(石川さん)

マシンガントークにならないように、自分を抑えることも大事ですが、逆に自分がゆっくりしかタイピングできないときには、相手に気を使わせないように、はじめにその旨を伝えておくことも忘れずに。

■8:書き込み内容に迷って沈黙してしまうのはNG

ビジネスチャットでリアルタイムのやりとりをしている最中に、相手の書き込みにどう反応していいのか、ふと迷ってしまうことはありませんか?

対面でのコミュニケーションと同様、ビジネスチャットでも相手からのメッセージにすぐに応答できないと、相手をイライラさせたり、不安を感じさせたりするので避けたほうがベター。

もし、質問などにその場で回答できない場合には、考え込むよりも「その件は確認して、後ほどメールで回答してもよろしいでしょうか?」など、一旦保留にしておくのがおすすめです。

「自分の応答が遅れてしまったときには、『~~さん、失礼しました』、逆に、相手からの反応がなくなったときは、『~~さん、いかがでしょうか?』などと、相手の名前を呼びかけましょう。名前を呼びかけることで、やわらかい印象になり、相手に安心感を与えることができます」(石川さん)

これは、対面のコミュニケーションでも使えそうなテクニックですね。沈黙が気まずいときには、相手の名前を呼びかけて、コミュニケーションを再開しましょう。

■9:自分の感情をストレートにぶつけるのはNG

イラッとしても文面には出さないように
イラッとしても文面には出さないように

文字のみのコミュニケーションは、仕事上の連絡事項を伝えるには適していても、感情のやりとりには不向きだといえます。そういう意味で、ビジネスチャットで自分の感情をストレートにぶつけるのは、あまりおすすめできません。

とりわけ、イライラや不満などネガティブな感情は、文字で伝えただけでは、相手にどう受け取られるか定かではなく、誤解が誤解を生み、問題が解決するどころか、ますますこじれる一方という危険性をはらんでいます。

ビジネスチャットで感情的になるのは「百害あって一利なし」と心得ましょう。チャット上のやりとりで、どうしても納得いかないことがあっても、チャット内で無理に解決をはかろうとするのではなく、一度冷静になってから、対面でじっくり話し合うのが賢明です。

これからますます活用の機会が増える、ChatworkやSlackなどのビジネスチャット。ちょっとした配慮の有無で、相手に与える印象はかなり異なるようです。今回ご紹介したNGマナーを念頭に置いて、ビジネスチャットで実りあるコミュニケーションを図りましょう!

石川礼子さん
IT・SNSマナー講師、マナーコンサルタント
(いしかわ れいこ)ウイズ株式会社 近畿エリア長、ファストマナースクール講師。ITインストラクターとして20年以上の指導キャリアを持ち、全国で活躍する。IT・SNS活用のなかに、人と人とのつながりを意識した真心マナーの必要性を感じ、マナーコンサルタントの西出ひろ子氏に師事。真心マナーのあるIT・SNSに精通したマナーコンサルタントとして注目を浴び、わかりやすい講義にも定評がある。
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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美