俳優として、僕個人というより「役」で認識してもらいたい
薄幸の将軍から半グレのリーダーまで、振り幅の広い役柄も自在にこなす憑依型カメレオン俳優として定評のある磯村さん。
「そう言われるうちが華だなと思っています。みなさんのお好きなように呼んでいただければ(笑)。僕自身は何かに流されたり影響されることなく、自分のスタンスでやっていけたらと思っているんです」と気負いなく話す。
出演作品が視聴者に愛されてシリーズ化された仕事も多く、この秋はシーズン1、スペシャル、劇場版に続く、ドラマ『きのう何食べた?』の待望のシーズン2が放送。人気コミックの実写化作品で磯村さんが演じるのは同性愛者の青年、ジルベールこと井上航わたる。
「航は人を振り回す猛獣のような小悪魔。不思議な魅力を放つ人物なんです。今作では西島秀俊さんと内野聖陽さん演じる主役のふたりがアラフィフ世代に突入し、航と恋人の大ちゃん(山本耕史)の関係性もひとつ深まります。現場では山本さんとアドリブも交えて熱量高く演じてみました」
ドラマが最初に放送されてから4年がたち、多様性に対する社会の空気も変容した。
「難しい問題ですが、この作品が多くの方に認知されることで、LGBTQ+という存在が何の違和感もなく、当事者がそれをわざわざ問われることもなく自然に混ざり合う世の中になっていけばいいなと思っています」
ひとつの役や作品に対してまっすぐに敬意をもって向き合うしなやかな精神が身上。今作の現場でも航の「可愛げのあるめんどうくささ」を随所で投入することを心がけた。
「演じているときは純粋に、ただその役として生きるだけ。何かひとつ演じ終えたらその人を途中下車させて、また次の人を乗せて出発する、みたいなイメージですね」
今作を演じた20代後半から30歳で俳優としてのバリューも高まり、今年、ひとつの分岐点となる仕事を成し遂げた。地元静岡県沼津市のPR大使に任命され、沼津市制100周年記念イベントで、高校時代に所属していた地元の劇団と公演を行ったのだ。
「『沼津演劇研究所』が僕の俳優としての原点であり、核をつくってくれた場所でした。古巣の恩師と共に未来を担う学生たちに演劇のバトンを渡すようなプロジェクトで、2か月ほどかけて脚本から衣装や舞台装置まで演出をやらせていただいたんです。もう、終演後の恩師や若い子たちのキラキラした表情を見られただけで大満足。僕自身もやりきった清々しさがありました。しばらくはロスを感じるほど有意義な時間でした」
4年続いている配信番組『サウナーーーズ』のサウナを巡る旅でも今年遂に沼津の水源にたどり着いた。「サウナ室で未来を思い、水風呂で現在に立ち返り、外気浴で過去がたちのぼってくる」との持論も披露。
「サウナに入ることは『ひとつの作品』のようなものですね。辛いとき自分を気丈に戻してくれたり、役のリセットにもなっています。いつかサウナで芝居をしているかも(笑)」と、冗談めかした表情で目を輝かせた。
■『きのう何食べた? season2』テレビ東京系にて毎週金曜深夜24時12分放送中!
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- BY :
- 『Precious11月号』小学館、2023年
- PHOTO :
- 三宮幹史(TRIVAL)
- STYLIST :
- 笠井時夢
- HAIR MAKE :
- 髙田将樹
- EDIT&WRITING :
- 福本絵里香(Precious)
- 取材・文 :
- 谷畑まゆみ