1980年代をリアルタイムで知る世代からも、当時を知らぬ若い世代からも、再び熱烈な支持を集めているジョルジオ アルマーニ。このブランドの本質を知る男たちに耳を傾け、改めて素直な気持ちで向かい合うこと。それは決して時代に流されない、確固たる男のスタイルを手に入れる近道でもあるのだ。
真のモードは時代を超える!
深いVゾーン。低いダブルブレストのボタン位置。テロッと落ちる生地。ワイドなパンツ……。1980年代後半のジョルジオ アルマーニがよみがえったかのような、グレーのキュプラ素材を使ったスーツ。もちろん2019年ならではのアレンジは効かせているのだが、この'80年代的バランスこそが「今」! パンツのポケットに無造作に手を突っ込んだときに、その類い稀なドレープ感は完成するのだ。
3人のファッションプロが語る「僕とアルマーニ」
世代も職業も違う3人の男たちが綴り、語る、「僕とアルマーニ」。実際にそでを通した者だけがわかるリアルなブランド観、そして装いの流儀がここにある。
【1】ユナイテッドアローズ上級顧問 栗野宏文さん
私がはじめてジョルジオ・アルマーニ(以下アルマーニ)の作品を見たのは1970年代のL'Uomo Vogueで今も自宅に保管してある。'70年代以降のメンズ・ファッションにおいて最も重要なデザイナーであるアルマーニの初期の仕事を知るには最適かつ重要な資料でもあろう。
新進デザイナーのアルマーニは複数のブランドやショップの商品も手がけている。そもそもメンズの服というのはほとんどフォーマットができ上がっていて、いじることが難しい世界だが、メンズ服の基本であるスーツとユニフォーム(ミリタリー&ワーク)を正しく把握した上で、それをいかにやわらかく仕立てるか? を徹底的に追求したアルマーニの服はある意味で完成形と言える。だから40年以上経過しても色褪せない魅力がある。
1985年、初の欧州出張に出た私と当時の同僚M。われわれの主目的は勿論インターナショナルな展示会での買付や数々の名店のリサーチであったが、同時に個人としては何かアルマーニのものを入手できれば……と目論んでいた。
結局私はフィレンツェでツィードのジャケットを入手したがMはミラノの旗艦店でスーツとジャケットとパンツ、それにタキシードまで買いそろえた。Mはそのために下着以外の着替えを持たずに出張に出たのだ。そんな極端な行動を起こさせたのもアルマーニの服の磁力故だろう。
強いて言えば’80年代後半のバブル景気の文脈や代表的なアイテムとして語られることだけが残念だが、アルマーニは20世紀以降のメンズ・ファッション史に輝く存在である。
しかも基本がクラシックなメンズ・テーラリングであるためにタイムレスでもある。近年、ファッションがストリートインフルエンスに振れていたが、今春からスーツが見直されている。仕事でスーツを着る必要がなくなりつつあるからこそ「着る喜びのあるもの」「買う価値のあるもの」として若者にもスーツが魅力的に映っている。再びジョルジオ アルマーニにスポットライトが向いているのだ。
【2】フォトグラファー 長山一樹さん
僕がジョルジオ アルマーニに興味を持ったのは、仕事でスーツを着るようになった5年ほど前のことでした。クラシックなそれとは明らかに違う独特のやわらかさは、空気をまとっているような感覚で、スーツを着ているという意識そのものを取り払ってくれる。
僕が理想としている、「アーティストが着るスーツスタイル」にぴったりなんです。実際着心地は部屋着なみにソフトですし、デニムなどよりも、よほど軽快で仕事もしやすいです。着たことがない人はコーディネートが難しいと思っているようですが、そんなことはありません。
たとえばマーガレット ハウエルの襟芯のない薄手のリネンシャツなど、プレーンでやわらかな素材感の服と合わせれば、リラックスした色気が醸し出せると思うので、ぜひ試してほしいですね。カメラマンとしてスーツスタイルを撮影するときって、いかにシワを目立たなく見せるか、という作業がつきものなんです。
しかしジョルジオ アルマーニのスーツの場合、シワこそが格好いいから、そんなことに気を遣う必要がない。無造作にポケットに手を突っ込んだり、カフェやダイナーでくつろいだり。肩の力を抜いた、日常のワンシーンが切り取れるんです。(談)
【3】メンズプレシャス クリエイティブディレクター 山下英介
1976年生まれの僕にとって、ジョルジオ アルマーニとはまさに嫉妬すべき存在だったバブル世代の象徴。長年、「自分には縁のない存在」と決めつけていた。しかしファッション編集者として様々なブランドやアートに触れることで、その本質的な格好よさに気づかされた。
20世紀初頭のアーティスト、モディリアニやコクトーが描いた男性像を具現化したようなそのジャケットは、クラシック的ではあるがどんなテーラーでも絶対に真似できない、絵画的なやわらかさを持つ。いわば「幻想のクラシック」なのだ。
僕がはじめてそでを通したのは’80年代のヴィンテージジャケットだが、近年はあの時代を彷彿させるソフトスーツを再びつくり始めており、それが実にモダンで、格好いい。ようやく僕も、過去の固定観念から解き放たれたような気がする。
モードとクラシックを自在に行き来する30代のフォトグラファー、長山一樹さんが選んで撮った!
モダンジェントルマンの眼にはジョルジオ アルマーニはこんなふうに映っている
新しくてどこか懐かしい旅の装いに
ジオメトリック柄の生地でトリミングが施されたナッパレザーのベストと、テーパードを効かせた薄手リネン素材のスラックス。洗練と野趣を併せ持つカントリースタイルだ。
「レザーのベストにリネンのパンツ。そのどこか懐かしい雰囲気を感じさせるカジュアルスタイルは、ヨーロッパの田舎町にとても映えます。日本人の感覚ではちょっとなじみが薄いかもしれませんが、こんなアイテムを旅のワードローブにそろえていたら、素敵ですね(長山)」
80年代の抜け感をブルゾンで表現
ライトグレーという色味と手の込んだカッティングによって、レザーという素材にモダン建築のような洗練をまとわせた、シープスエードブルゾン。
「近頃は'80Sのクラシックをジャケットやスーツに取り入れているジョルジオ アルマーニ。ざっくりとしたスエードのブルゾンも、サイズ感やパターンの妙でしょうか、そんな力の抜けたスタイルへと導いている点はさすがです(長山)」
ラフな場所に着て行きたい1マイルスーツ
清涼感あふれる太畝(ふとうね)シアサッカー生地のダブルブレストジャケットは、’80年代的バランスが新鮮。共生地のパンツと合わせれば、こんなにもシックでリラックスした着こなしに。
「1マイルスーツと呼んでもいいほどに着心地のよいスーツは、肩ひじ張らないラフな場所によく映えます。自分が着るならヘインズのTシャツを合わせたりして、近所のカフェや銀行など(笑)、『がんばる必要はないけれど人目につくところ』に行くでしょうね(長山)」
旧市街になじむグレージュのエレガンス
ウォッシュ加工を施したリネン混のジャケットに、幾何学模様を施したシルクパンツという組み合わせ。涼やかな素材と淡いグレージュが知的なエスニックテイストを漂わせる、旅愁漂うスタイルだ。
「日本人には抵抗がある人も多いと思いますが、海外の旧市街の風景にスッと溶け込むグレージュのスーツやジャケットスタイルは、自分が理想とする装いのひとつです。東京などの大都市ではすこし浮くのですが、それもまた悪くありません(長山)」
新しい「僕とジョルジオ アルマーニ」の物語がはじまる
約1年にも及ぶ工事を経て、2019年3月にリニューアルオープンを果たした「アルマーニ / 銀座タワー」。クールでドラマチックな印象があった以前と較べると、明るくやわらかな自然光が射し込むその空間は、ラグジュアリーながら親しみやすいものへと生まれ変わっている。
リニューアルを果たした「アルマーニ / 銀座タワー」3つのニュース
【1】多目的スペース「アルマーニ / サローネ」がオープン
4階はラグジュアリーな多目的スペース「アルマーニ / サローネ」として生まれ変わる。また、このフロアには近年大人気を集めるオーダースーツ『MTM(メイド トゥ メジャー)』のための、「テクニカルルーム」も用意されている。
【2】大人気! 特典満載のオーダーフェア開催
2019年5月末までに限定のラグジュアリー生地を使い『MTO(メイド トゥ オーダー)』ジャケットの注文を入れた方は、なんと10階のリストランテでの食事に招待される。
【3】日本でしか買えないカプセルコレクションが大充実!
3月21日のリニューアルオープンの当日から、本記事で紹介したコートをはじめ、日本でしか買えないカプセルコレクションがなんと41アイテムも先行発売される。ますます見逃せないショップになりそうだ。
「衣」「食」「住」を楽しめる空間に!
1階の「アルマーニ / ドルチ」や地階2フロアの「アルマーニ / カーザ」にはじまり、アクセサリー、ウエアなどその取扱いアイテムは多岐に及ぶ。私たち男性にとっては、人気のオーダースーツ『MTM』専用の空間がつくられたことに加え、大切なひとときを過ごせる最上階の「アルマーニ / リストランテ」が復活したことは吉報といえよう。
また、このリニューアルを記念して、日本限定のカプセルコレクションをなんと41アイテムも展開している点も見逃せないニュース。男たちのお洒落とライフスタイルを華やかに彩ってくれる唯一無二のショップに、いち早く足を運んでほしい。
掲載商品の問い合わせ先
「アルマーニ / 銀座タワー」
- アルマーニ / 銀座タワー TEL:03-6274-7000
- 住所/東京都中央区銀座5-5-4
営業時間/11:00~20:00
定休日/不定休
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2019年春号より
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- クレジット :
- 撮影/長山一樹(人物/S-14 ) スタイリスト/櫻井賢之 ヘア&メーク/MASAYUKI(the VOICE) モデル/Yaron