ジェントルマンたらんとする男性諸氏にとって、靴選びの難しさは周知のことだろう。どんな服装でも、足元が決まらなければ、どこかちぐはぐなコーディネートになってしまう。ましてや、男のファッションは自分自身のためだけにあるのではない。様々な社会的立場にふさわしい服装が常に求められる。そんなとき、靴選びを迷わないための究極の万能靴がある。

黒一文字で勝負にでる

  同じような黒の革靴でも微妙に表情が違う。だが、内羽根式のストレートチップほど優等生のシューズはないのではないか。
 その理由もストレートだ。このスタイルならどんなフォーマル・オケイジョンもカバーできるからだ。いわゆる冠婚葬祭のすべて、ビジネス関係のハイプロファイルな会合、接待となんでもござれ。そこから、一段、二段とフォーマル度が下がっていくぶんにはなんら問題はない。
 指の付け根辺りからすーっと入る切り替えの潔さは、礼儀正しさを表す世界共通言語だ。

汎用性の高さか、またはクラシックな存在感か

オフィシャル、または格式あるシーンに物怖じせず臨むために、高品質な「一文字(=ストレートチップ)」はマストアイテム。プレーンなキャップトウはもちろん汎用性が高いが、一方で穴飾りをキャップのエッジに配した「パンチドキャップ」は、よりクラシックな雰囲気をもたらす。

左¥230,000・右¥170,000(ジョンロブ ジャパン)
左¥230,000・右¥170,000(ジョンロブ ジャパン)

一本気の「黒一文字」
重光 葵 MAMORU SHIGEMITSU

©gettyimages
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戦艦ミズーリ上で降伏文書に調印した日本政府全権として知られる重光葵。テロで右足を失いながらも、日本と世界の架け橋たるべく奔走した彼の足元には、実直な仕事ぶりを裏付けるような「一文字」。

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。
クレジット :
イラスト/緒方 環 撮影/熊澤 透(人物)、川田有二(人物)、篠原宏明(取材)、戸田嘉昭・唐澤光也・小池紀行(パイルドライバー/静物)、小林考至(静物) スタイリスト/櫻井賢之、大西陽一(RESPECT)、村上忠正、武内雅英(code)、石川英治(tablerockstudio)、齊藤知宏 ヘア&メーク/MASAYUKI(the VOICE)、YOBOON(coccina) モデル/Yaron、Trayko、Alban レイアウト/澤田 翔(H.D.O.) 文/林 信朗 構成/矢部克已(UFFIZI MEDIA)、鷲尾顕司、高橋 大(atelier vie)、菅原幸裕、堀 けいこ、櫻井 香、山下英介(本誌) 撮影協力/銀座もとじ、マルキシ