どんなに良いジャケットやスーツを着ても、靴ですべてのコーデが決まるもの。男の革靴の基本は黒。とりわけ、ドレスシューズにはそれがあてはまる。とはいえ、おしゃれに決めるならビジネススーツに茶系の靴を合わせてみたい。ダークスーツに茶色の靴というコーデも、最近は一般的になってきた。とはいえブランドごとによってその色はまちまちで、ファッションプロも悩ませる厄介者。一方、それぞれの特徴を知ることでコーディネートの優等生にもなる。ここでは代表的な超一流ブランドの名品茶靴を紹介する。

茶靴はトーンではき分けてこそ

 イタリア男のファッションを崇拝する日本のメンズ・ファッション関係者は少なくない。たしかにぼくたちでは思いもつかないような素材やアイテムの組み合わせを見せてくれるのがイタリア人だ。ピッティ・ウォモの参加者のスナップはどのメンズ・ファッション誌でも売れセン企画である。
 だが、いちばんびっくりするのは彼らの色彩感覚である。青系だけでもイタリア人が独立した一色と認める色がいったい何色あるのか。見当もつかない。それを服装というキャンバスに効果的に配していくセンスは恐るべきものだ。それは革靴についてもいえる。
 イタリア人にとって靴の基本色は茶である。「それが革本来の色だから」と以前取材したイタリアの靴職人が言っていたが、茶の色合いにも憎らしいぐらいこだわる。それは奢侈(しゃし)が禁じられていた江戸時代の町人の茶への尋常ならざる傾倒、「四十八茶百鼠」とも通じる。言葉の上では48だが実際の色数は100でも200でもきかなかったそうである。
 わずかなトーンの違いまで楽しむラテン・ダンディズムを粋と感じるのは、ぼくらの江戸っ子DNAか。

A. Berluti ベルルッティ
スエードに施したツヤのある仕上げが独特

ライトベージュのスエードをアッパーに使った定番モデル『アレッサンドロ』。トウ部周辺などが部分的にスムースレザー状となったフィニッシュは、リネンやブリーチしたデニムなど、表面の変化に富んだ素材と好相性だ。¥171,000(ベルルッティ・インフォメーション・デスク)

B. Edward Green エドワード グリーン
スタイルだけでなくカラーもマスターピース

同ブランドの象徴的なカラー、チェスナット&アンティークフィニッシュのUチップ『ドーバー』。No. 32ラストが生む上品な丸みがあるシルエットは、ジャケット&パンツスタイルからスーツ、カジュアルシックまで、幅広い装いを可能にする。¥170,000(ストラスブルゴ〈エドワード グリーン〉)

C. J.M. Weston ジェイエムウエストン
ブラウンリザードで大人なカジュアルシック

フレンチローファーのマスターピース『180』も、リザードレザーを選ぶことで、オーセンティシティの中にも個性が光る着こなしに。リネンスーツ、またはショーツなど、ライトブラウンカラーは陽光の季節のアイテムと楽しみたい。¥224,000(ジェイエ ムウエストン青山店)

D. F.LLI Giacometti  フラテッリ ジャコメッティ
一足の上で表情が変化する斬新なコードバン使い

部分的にコードバン層があるホースレザーをアッパーに使ったモンクストラップ。トウ部のコードバンの輝きとボディ部のラフな質感とのギャップが、足元に強い個性をもたらす。長めのノーズは、トレンドの太めのパンツなどとも相性がいい。¥110,000(ウィリー〈フラテッリジャコメッティ〉)

E. Corthay コルテ
キャメルレザーの新しい質感を楽しむ

アッパーに使ったのはボルドーカラーのキャメル(ラクダ)レザー。表面に独特の凹凸がある、硬質な革が、フランスのエスプリ漂う流麗なシルエットにほどよいカジュアル感をもたらす。グレーのトラウザーズ、またはデニムに合わせてカジュアルシックに。¥183,000(メゾン コルテ青山)

F. Gaziano&Girlingガジアーノ&ガーリング
ワインのような深みを備えた色に込められた職人気質

英国のふたりの靴職人が手がける靴。ビスポーク由来のスクエアトウに、ハンドステッチで表現したアデレイド(鳩目のまわり)、ダークバーガンディカラーの雰囲気は、オーソドックスなスーツを個性ある着こなしに変える。¥210,000(トレーディングポスト青山本店〈ガジアーノ&ガーリング〉)

G. Max Verre マックス ヴェッレ
部分使いしたクロコがブラウンにツヤをもたらす

アンティーク調のフィニッシュを施したダークブラウンのローファー。甲のストラップに部分使いしたクロコが、絶妙なツヤをもたらしている。カジュアルなパーティなどでも活躍しそうだ。¥140,000(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター〈マックスヴェッレ〉)

H. Solovieré ソロヴィエール
パリ発、カジュアルシックの最新スタイル

アッパーをひもで結わくだけのシンプルなスタイルだからこそ、卓越したセンスが感じられるパリ発の靴。ダークブラウンのスエードは、陽焼けした素足で、ショーツやワイドパンツとともにリラックスして着こなしたい。¥46,000(ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館〈ソロヴィエール〉)

ベルルッティ、エドワード グリーン、ジェイエムウエストン、フラテッリ ジャコメッティ、コルテ、ガジアーノ&ガーリング、マックス ヴェッレ、ソロヴィエール、どれも名品と呼ばれるブランド靴だが、同じ色でもそれぞれ違うのがお分かりだろうか? ここで紹介した8ブランドの特徴を知り、あなたに合った茶靴を選んでいただきたい。

※価格はすべて税込です。※価格は2016年春号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。
クレジット :
イラスト/緒方 環 撮影/熊澤 透(人物)、川田有二(人物)、篠原宏明(取材)、戸田嘉昭・唐澤光也・小池紀行(パイルドライバー/静物)、小林考至(静物) スタイリスト/櫻井賢之、大西陽一(RESPECT)、村上忠正、武内雅英(code)、石川英治(tablerockstudio)、齊藤知宏 ヘア&メーク/MASAYUKI(the VOICE)、YOBOON(coccina) モデル/Yaron、Trayko、Alban レイアウト/澤田 翔(H.D.O.) 文/林 信朗 構成/矢部克已(UFFIZI MEDIA)、鷲尾顕司、高橋 大(atelier vie)、菅原幸裕、堀 けいこ、櫻井 香、山下英介(本誌) 撮影協力/銀座もとじ、マルキシ