ピッティに出展する多くのブランドは、カジュアルなスタイルの提案に向っている。しかし、クラシックな仕立てのいいスーツは、品格ある大人を演出する意味でも重要なアイテムである。スーツを主体に展開するブランドの出展は減少気味とはいえ、スーツの巧みなつくりや新しい着こなしの提案で臨むブランドは、やはり注目される存在。ビジネスシーンに合わせたスーツという視点ではなく、素材やディテールに凝った洒落たアイテムとしてスーツを楽しむこと。あるいは、タイドアップせずにスーツをあえてカジュアルに着こなすのも潮流である。イタリアと日本ブランドのスーツに着目した。

 まず、南イタリア・プーリア州に本拠を構える、実力派のスーツブランド「ラトーレ」。OEM生産も行い、ヨーロッパの有名ブランドのスーツを手がけていることから、ファッションのプロたちの間では評判のいいブランド。しかし、プーリア特有の洗練された職人技を生かしたスーツづくりは、まだまだ知られていない部分も多い。

 今回、「ラトーレ」は、日本向けのカプセルコレクションを発表した。少しゆったりとしたシルエットや凝った素材使いで、今の時代感を表現する。日本人の嗜好を狙ったスーツの提案だ。

日本人の好みを狙った「ラトーレ」のツイードスーツ

「ラトーレ」が提案するスーツ

 写真のスーツは、ウールのネップツイード生地を使い、肩パッドを施した構築的なスタイル。ゴージラインを下げて、1970年代をイメージさせるデザインである。パンツは2プリーツのややワイドシルエットによるベルトレス。ハンガーに掛っているだけでも十分に味わい深い。

 この春夏から本格上陸を果たした「ラトーレ」は、いよいよ日本でもブランドの実力や服づくりの技を見せつけることになるだろう。

世界的に注目されている日本発のスーツ

日本国内のみならず各国から注目されている「カモシタ ユナイテッドアローズ」のスーツ

 もう1着は、常に、世界各国の名バイヤーたちがブースに訪れる「カモシタ ユナイテッドアローズ」。ブラウンのウールギャバジンによるダブル4ボタンのスーツは、しなやかなドレープ感がなんとも美しい。パンツはベルトレスでエラスティックを採用。リラックスした気分を反映し、大人のスーツスタイルをエレガントかつ軽快に演出するデザインだ。

 着こなしのポイントは、やはりカジュアルなコーディネートにある。ザックリとした風合いのメランジのタートルニットを合わせ、寛ぎのある上品なスタイルの表現。まさにスーツをカジュアルに着こなす絶好のお手本である。

 洒落着として楽しむスーツ。大人の男が目指すべきスタイルは、タイドアップしてもカジュアルに着こなしても、洒脱な雰囲気が漂うことだ。

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この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部こと本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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