時代の流れとともに、日本固有の文化である着物文化は減ってきてしまったが、近年は、浴衣がブームの兆しを見せている。現代ならではの「和」の楽しみ方を知っておくのも、大人の男に取って必要な知識である。現代的ファッションコーデを着物に取り入れながら「和」の装い方の初歩を紹介する。

近年のNHK大河ドラマ『真田丸』を観て思ったことがある。日本の男はとにかく着物が似合うということである。

侍、農家、商人、僧籍者などなど、それは衣装部が力を入れていいものを着せているのだろうが、日本人の黒い髪の毛、肌色、体格になじみがよく、色、形とも「映える」のだ。この和装の文化をあっさり捨て去っていいものであろうか。まさか、それはない。

 幸いこの国には四季折々の行事がある。受け継がれてきた伝統行事を着物で楽しむという趣向も、継承の精神を尊ぶジェントルマンらしいではないか。

ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館の3階に設えられた和装のディレクターである、諸田佳宏さん。理想的な着物の楽しみ方は、「シガーを味わうように、ゆっくりとした時の流れに包み込まれるような、非日常性にある」と話す。桐きり竹鳳凰文の地模様を施した、羽織の家紋にクリスタルをあしらう。象牙を細部にデザインしたサメ革の合切袋を持つなど、粋な装いが身についた達人だ。
ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館の3階に設えられた和装のディレクターである、諸田佳宏さん。理想的な着物の楽しみ方は、「シガーを味わうように、ゆっくりとした時の流れに包み込まれるような、非日常性にある」と話す。桐きり竹鳳凰文の地模様を施した、羽織の家紋にクリスタルをあしらう。象牙を細部にデザインしたサメ革の合切袋を持つなど、粋な装いが身についた達人だ。

YUKATA STYLE
まずは浴衣から、自由な着方が、腕の見せどころ

浴衣¥42,800・角帯¥30,000・根付¥60,000/すべて仕立て上がり価格(銀座もとじ 男のきも の)サンダル¥48,000(ユナイ浴衣¥42,800・角帯¥30,000・根付¥60,000/すべて仕立て上がり価格(銀座もとじ 男のきもの)サンダル¥48,000(ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館〈コートリー&サンズ〉) 帽子¥55,000(ボルサリーノ ジャパン)
浴衣¥42,800・角帯¥30,000・根付¥60,000/すべて仕立て上がり価格(銀座もとじ 男のきも の)サンダル¥48,000(ユナイ浴衣¥42,800・角帯¥30,000・根付¥60,000/すべて仕立て上がり価格(銀座もとじ 男のきもの)サンダル¥48,000(ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館〈コートリー&サンズ〉) 帽子¥55,000(ボルサリーノ ジャパン)

着物に比べて浴衣は、自由な着方が楽しめるため、洋風タイプのカジュアルなサンダルや、パナマ帽をコーディネートすることでモダンな〝ユカタスタイル〟となる。小物類の色目を浴衣となじませたり対比したりして、品のいいバランスを表現する。ろうけつ染めでつくり上げた、美しい藍色の浴衣は、着物に慣れない人にも似合う、モダンな雰囲気が絶妙である。

KIMONO STYLE
着流しも粋だが、羽織を合わせた装いが本格的

着物¥ 306,000・羽織¥249,000・羽織ひも¥19,000・角帯¥128,000・草履¥50, 000/すべて仕立て上がり価格 足袋¥3,900(銀座もとじ 男のきも の) クラッチ¥398,000(アルソーレ〈レザック〉)
着物¥ 306,000・羽織¥249,000・羽織ひも¥19,000・角帯¥128,000・草履¥50, 000/すべて仕立て上がり価格 足袋¥3,900(銀座もとじ 男のきも の) クラッチ¥398,000(アルソーレ〈レザック〉)

最小限のアレンジのなかに、個性的な装いをつくる面白さがある伝統の着物。羽織をまとうことで、さらに完成度が高まる。ビリヤードの球をあしらった羽織ひもなどをアクセントにし、合切袋のかわりにクロコレザーのクラッチバッグを合わせるなど、和洋折衷の遊び心を楽しみたい。色を重ねて奥行きを表現した藍色の羽織とねずみ色の着物の色調を合わせて、足袋の色をなじませる。

現代的にアレンジを加えた「和」の装いで、着物コーデにチャレンジしてみてはいかがだろうか?きっとスーツやジャケパンスタイルとは違った世界が見えてくるだろう。

※価格は2016年春号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。
クレジット :
撮影/小池紀行(パイルドライバー/静物) 篠原宏明(取材)スタイリスト/大西陽一(RESPECT)