時代の流れとともに、日本固有の文化である着物文化は減ってきてしまったが、近年は、浴衣がブームの兆しを見せている。現代ならではの「和」の楽しみ方を知っておくのも、大人の男に取って必要な知識である。現代的ファッションコーデを着物に取り入れながら「和」の装い方の初歩を紹介する。
近年のNHK大河ドラマ『真田丸』を観て思ったことがある。日本の男はとにかく着物が似合うということである。
侍、農家、商人、僧籍者などなど、それは衣装部が力を入れていいものを着せているのだろうが、日本人の黒い髪の毛、肌色、体格になじみがよく、色、形とも「映える」のだ。この和装の文化をあっさり捨て去っていいものであろうか。まさか、それはない。
幸いこの国には四季折々の行事がある。受け継がれてきた伝統行事を着物で楽しむという趣向も、継承の精神を尊ぶジェントルマンらしいではないか。
YUKATA STYLE
まずは浴衣から、自由な着方が、腕の見せどころ
着物に比べて浴衣は、自由な着方が楽しめるため、洋風タイプのカジュアルなサンダルや、パナマ帽をコーディネートすることでモダンな〝ユカタスタイル〟となる。小物類の色目を浴衣となじませたり対比したりして、品のいいバランスを表現する。ろうけつ染めでつくり上げた、美しい藍色の浴衣は、着物に慣れない人にも似合う、モダンな雰囲気が絶妙である。
KIMONO STYLE
着流しも粋だが、羽織を合わせた装いが本格的
最小限のアレンジのなかに、個性的な装いをつくる面白さがある伝統の着物。羽織をまとうことで、さらに完成度が高まる。ビリヤードの球をあしらった羽織ひもなどをアクセントにし、合切袋のかわりにクロコレザーのクラッチバッグを合わせるなど、和洋折衷の遊び心を楽しみたい。色を重ねて奥行きを表現した藍色の羽織とねずみ色の着物の色調を合わせて、足袋の色をなじませる。
現代的にアレンジを加えた「和」の装いで、着物コーデにチャレンジしてみてはいかがだろうか?きっとスーツやジャケパンスタイルとは違った世界が見えてくるだろう。
※価格は2016年春号掲載時の情報です。
- TEXT :
- 林 信朗 服飾評論家
- BY :
- MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
- クレジット :
- 撮影/小池紀行(パイルドライバー/静物) 篠原宏明(取材)スタイリスト/大西陽一(RESPECT)