日本でも馴染み深いイタリア伝統のお菓子ビスコッティ

古い写真や創業以来の歴史が壁一面に展示されたミュージアムスペース。テーブルとソファ席があり、座ってコーヒー飲みつつビスコッティを味わうことができる。

トスカーナ名物のハードタイプのビスコッティ、別名カントゥッチーニはイタリア家庭での朝食や、料理の最後をしめくくるデザートとして人気があるドルチェだ。特に青いパッケージがひときわ目立つアントニオ・マッテイはアーモンド入りビスコッティの代名詞的存在で一度は見たことがある人も多いのではないだろうか。

ビスコッティはフィレンツェ郊外プラートが発祥の地で正式にはビスコッティ・ディ・プラート(プラートのビスコッティ)と呼ばれるEUが認定する原産地統制呼称法に基づくIGP食品で、その歴史は17世紀に遡る。プラート市に保管された古文書によればビスコッティとは小麦粉、砂糖、卵白で作る菓子で、その原型はカトリーナ・ディ・メディチの頃に生まれたという。

シンボルカラーの青があちこちにちりばめられたブティック・スペース。右手に見える赤と緑のパッケージはチョコレート入りとピスタチオ入り。

現在我々が知るようなビスコッティを完成させたのは19世紀の菓子職人アントニオ・マッテイで、アーモンドを配合したレシピが大人気となり国内外の品評会で多くの賞を受賞。

1867年のパリ万博に出品したことでその名声は揺るぎないものとなった。以来プラートの家庭では日曜日、あるいは祝いの場にアントニオ・マッテイのビスコッティは欠かせないものとなったという。作家ヘルマン・ヘッセや元アメリカ大統領ビル・クリントンらがこのビスコッティを愛用したことは有名なエピソードだ。

カッペッリエラと呼ばれる帽子入れタイプのギフトボックスは昔からアノトニオ・マッテイの定番。

創業160周年を機にフィレンツェ旧市街、歴史遺産地区にアントニオ・マッテイ史上初の博物館兼ブティックのミュージアム・ショップが2018年5月にオープン。

小さな店内だが正面入り口がビスコッティなどのブティック・スペース。奥のサロンがミュージアムになっていて、壁には創業以来のアントニオ・マッティの歴史が展示されていてその変遷が一目で見えるようになっている。

また、アントニオ・マッティのパッケージは昔から根強いファンが多く、特に「帽子入れ=カッペッリエレ」と呼ばれる円筒型のパッケージは、昔懐かしいレトロタッチで、いまも蚤の市などに古いカッペッリエレが登場するのをよく見かける。普段なかなかお目にかかれないヴィンテージ・カッペリエレがずらりと並ぶ様子は圧巻で、菓子好き、パッケージ好きにはきっとささるはずだ。

ビスコッティの美味しさの秘密

カリカリに二度焼きしているのが美味しさの秘密。ビスコッティとは元々二度焼きという意味だ。

また、ブティックではスタンダードなアーモンド入りビスコッティ「サッケット・ブルー」や最近登場したチョコレート入りの「サッケット・ロッソ」、ピスタチオ入りの「サッケット・ヴェルデ」といったスタンダードラインはじめ、以前はプラート本店でしか食べることができなかったが、常時購入できるので旅行者にもアクセス的にも便利だ。

エスプレッソを注文してビスコッティでコーヒータイムにすることもできるし、トスカーナ伝統のヴィンサントも飲める。これは収穫を終えたブドウを陰干しして糖度を高めてから作る甘口ワインで、やや硬めのビスコッティを浸して食べるのが一番美味しい食べ方とされているが実はこれは都市伝説。

あまり行儀の良い食べ方ではないので、自宅ならともかくレストランなどではあまりいい印象を持たれないのが本当のところ。ヴィンサントもビスコッティもそれぞれ歴史ある素晴らしい食品なので、それぞれ別々に味わうのが正統だ。

問い合わせ先

  • ANTONIO MATTEI TEL:+39-055-0136203X
  • Via Porta Rossa 76/r Firenze
    10:00〜19:00(月曜のみ15:00〜19:00)無休
この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。