「本物の家具」がもつ魅力を味方につけてもらうために、インテリアエディター「D」が厳選した大人のためのインテリアアイテムをご紹介する連載。身長156cmと小柄なエディターが、実際に家具を触ったり、座ったりしながら、女性ならではの視点でインテリア名品の魅力を掘り下げます。第14回は日本が世界に誇るメーカー・天童木工の「マットソンソファふたりがけ」。
「物に縛られたくないけど、お気に入りは手に入れたい」わがままを叶えるマットソンシリーズ
気ままなひとり暮らしから誰かと一緒に暮らすようになったり、ときに離れたり、家族が増えたり、人生は予想もしない変化をするもの。できれば物や場所にとらわれずに、自由な気持ちで生きていたいですよね。その一方で、帰ったときにお気に入りの家具が待っていてくれたら、日々の暮らしは楽しいものに変わります。一見正反対のようなふたつの希望を満たしてくれるのが、この天童木工の「マットソンソファ」なんです。
実は「マットソンソファふたりがけ」は、ひとりがけの片アームマットソンイージーチェアを2脚並べて木製コネクターで連結させたもの。フレームの前後に引っかけることで、がっちりと固まります。
一見斬新に見える片アームですが、ひとつあるだけでもくつろぎ感が増します。また、テーブルが近くに置けて、狭小空間には機能的な形状でもあります。
軽いからひとりで簡単に模様替えできるマットソンソファ
自由に組み替えられるといわれても、ソファって重いですよね? その点、マットソンソファは、天童木工の「成形合板」の技術と「ハンモックのような構造」の合わせ技で、とっても軽いのです。その重さ、わずか8kg。イメージとしては5kgの米袋より少し重いのですが、座面を腰で支えることで無理なく持ち上げられます。
和室でもモダンに暮らせて、お手入れも簡単
床への着地面が、ソリのような形状のため「線」で接しています。これはデザインされた1970年代に、畳で暮らす日本の生活様式を意識して設計されたもので、カーペット等の床を傷めづらい形状をしています。床に近い高さで暮らす提案は、海外の一流インテリアブランドでも近年多く見られます。改めてその心地よさを普段の生活に取り入れることは、私たち日本人にはとても親しみやすい感覚ですよね。
親しみやすさの秘密はもうひとつあります。このクッション、張込みではなくて「座布団」のように取り外しも可能。ペットを飼っていらっしゃる方は、クッションの間に入った埃や抜け毛が気になることもありますよね。
世界にジャパニーズ・モダンを広めた天童木工
1940年に、現在の山形県天童市で、大工・建具・指し物などの職人が集まって創業した天童木工。当時の日本ではまだ新しかった成形合板技術(薄くスライスした板を接着し、熱を加えながら型にはめて曲面状に形づくる木工技術)をいち早く取り入れ、日本を代表する建築家やデザイナーと協働して「ジャパニーズ・モダン」というジャンルを世界に切り開きました。1960年、戦後の復興期に日本が国として正式に初めて参加し、金賞を受賞した第12回ラ・トリエンナーレ・ディ・ミラノの家具製作を手がけたことでも有名です。
現在も、針葉樹の家具材への有効利用として最先端技術「Roll Press Wood」を独自開発するなど、木製家具の最先端を走り続ける、日本が世界に誇るメーカーのひとつです。
スウェディッシュ・モダンデザインの巨匠、ブルーノ・マットソン
1907年、スウェーデン南部のベーナムーで、キャビネットメーカーの家に6代目として生まれます。ブルーノ・マットソンは、親から受け継いだ自らの家具工場で、自分でデザインしたものを自分でつくって販売した企業家でもあります。幼いころから木材の特性と技術的知識を、大学では建築を学びました。
それまでの木枠にバネを入れた伝統的な椅子とはまったく異なる構造で、1934年には代表作となるEVAを。1968年にはカーリン・チェアを発表。1981年、スウェーデン政府よりプロフェッサーの称号を受けています。
1969年にブルーノ・マットソンの日本での展示会が開催され、1974年に初来日した折には、西洋の椅子に座る文化と東洋の床座の文化の違いから日本の住居環境にも興味をもっていたマットソン氏自ら、天童木工に図面を持ち込み開発がはじまったそうです。
問い合わせ先
- 天童木工 TEL:0120-01-3121
- TEXT :
- 土橋陽子さん インテリアエディター
公式サイト:YOKODOBASHI.COM