このところピッティに出展するブランドは、1960~80年代をイメージした提案が目立つ。各年代のイメージを自分たちのブランドのデザインに引き寄せ、見事に表現できたアイテムは、売りにつながりやすいからかもしれない。
それぞれの年代の生地のイメージやスタイルを簡単に触れると、1960年代は、仕立て服から既製服に移行する時代。そのため、まだまだ仕立てに相性のいい生地が多く、その風合いは、肉厚でしっかりとし、織り柄では凹凸がある独特な表面感を備える。
70年代になると、ストリートファッションが台頭。ヒッピー文化を反映した派手なサイケデリックの柄や色使いがあふれ出る。一方、スーツでは、渋みのあるチェック柄が注目され、ラペルの形も大きくなる。
80年代に移ると、イタリア人デザイナーが一世を風靡したように、アルマーニ的なシルエットや色使い、ヴェルサーチ的な鮮やかなファッションが全盛となる。
本稿では、70年代のイメージに注目。生地感もユニークなスーツをピックアップした。
70年代のヴィンテージ感を現代に落とし込んだスーツ2選
ラトーレ
まず、南イタリア・プーリア州に生産拠点を構える“ラトーレ”。多くの有名ブランドのスーツを手がける実力派のファクトリーでもあるが、近年、自社ブランドのディレクションが素晴らしい。
写真は、オーソドックスなデザインのシングル2ボタン。ゴージを下げた大きな上襟に、ノッチドラペルであっても、幅の広い存在感のあるラペルをデザイン。薄い肩パッドを選び、直線的だがなじみのいいショルダーを形づくる。
生地は、ウールとシルクの混紡素材を使い、70年代風の適度な光沢感を演出する。ブラウンを効かせたグレンチェックが粋である。
ボメザドリ
もうひとつは、パルマに本拠を構えるブランド“ボメザドリ”。仕立て服から始まり、工場生産のスーツづくりに発展させた“ジャンフランコ ボメザドリ”からの新しいラインだ。
スーツは、シングル3ボタンの段返りのデザインで、フルキャンバス仕様。肩パッドはなく、胸からの芯地を肩までのばしてラインをつくる。ナチュラルなショルダーではあるが、適度な構築感がポイントだ。ウール100%の生地は、しっかりとした感触を備え、シワになりにくい反発力がある。
70年代のスーツといえば、もっと色も派手で、コンケーブショルダーといったスタイルもあるが、この2着のように落ち着いた色柄も見逃せない。手練れの両ブランドがつくるスーツは、よりリアリティのあるスタイルに落とし込む。まさに、今の時代に合う回顧的なスーツの登場である。
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- 矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
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