オフィシャルなスーツを提案するブランドが減少気味のピッティにおいて、その影響を受けたアイテムがドレスシャツである。ドレスシャツづくりを中心に展開するブランドは、バンドカラーなどのカジュアルシャツの充実と、アウター感覚で楽しめるオーバーシャツの提案にさらに力を入れている。伝統的なドレスシャツが減る一方で、前シーズンに続き、1枚羽織るだけで様になる、リラックスしたスタイルのニットが人気だ。

 なかでも、ポロシャツのように軽快に着こなせるニットや、Tシャツの上に重ね着してくつろいだ雰囲気を演出できるクルーネックのニットなどに注目。夏素材の代表格、コットンだけではなく、モヘア混で変化のある編地を表現したニットを選んだ。

コーディネートに多彩な変化を与えるニットアイテム

マクローレン

マクローレンのポロニット
マクローレンのポロニット

 はじめに、このところ定点観測を続けているイタリアのニットブランド“マクローレン”。出展を重ねるごとに巧みなデザインのニットをバリエーション豊富に投入する。昨年は、チルデンニットが象徴的だったが、さらにアーカイブを掘り起し、新しい編地のニットを展開した。

 写真は、1950年代のスタイルからインスパイアされたポロニット。小さな襟やふたつボタンのフロントのデザインなど、実に小気味いい。ダイヤの織り柄とシャープなストライプを合わせた、スポーティかつクラシックな編地の表情が絶妙である。レンガ色の色彩も懐かしい雰囲気で大人っぽい。

ドレイクス

ドレイクスのクルーネックニット
ドレイクスのクルーネックニット

 もう一枚は、イギリスの“ドレイクス”。ネクタイだけではなく、すっかりトータルルックの提案に進化した同ブランドは、単品アイテムの拡充を図るとともに、コーディネートを多彩に楽しめるニットの提案がうまい。

 積み重なったクルーネックのニットは、発色のよさを狙った先染めの糸がポイント。モヘア&リネンでさらさらとした感触が心地いい。全4色で展開し、ニット単品で十分に楽しめるほか、シャツの上に着る、あるいはコットンジャケットとの組み合わせも洒落た着こなしになるだろう。

 編地は現地イギリスでつくる。シードステッチと呼ばれる柄は、小さなツブ状の種を集積したように見え、クラシックで品のいい表情を生み出している。

 ほかにも、ニットを展開するブランドが目立った今回のピッティ。クラシックなスーツでも、ニットをコーディネートする提案も多く見受けられた。来季は、着こなしの幅を広げる重要なアイテムとして、やはりニットは見逃せない。

第96回ピッティ・ウォモに関する記事はこちら

この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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