創業100年を超える歴史を持ち、メンズアイテムのみの展開に絞り込んだ世界で唯一の存在であるエルメネジルド ゼニア。歴史を振り返れば、ファブリックメーカーとして始まり、既製服の生産に乗り出し、世界にショップを広げ、ス・ミズーラを展開。そして、遂に「誂え」という服づくりの最高峰となるビスポークを開始したのだ。
「1世紀以上続くエルメネジルド ゼニアの秘密は南半球にあった!」の取材記事にあるように、極上の素材を供給するために完璧な管理システムを整えた原毛生産から、細かい顧客の要望に応えるビスポークまで、まさにメンズファッションにおける川上から川下までを、ハイクオリティなレベルで成し遂げたのである。
では、そのビスポークの実力とはいかに……。エルメネジルド ゼニアは、イタリア全土に広がる、歴史のあるサルトリア文化を支えてきた張本人だ。
「究極の誂え」となるエルメネジルド ゼニアのビスポーク
服づくりの本質に立ち返る、至高の顧客サービス
展開の始まったビスポークはもちろん、自国の伝統的な仕立て技術を受け継ぐ服づくりで、当然、100%手仕事である。注文する際、豊富な経験を積んだイタリア屈指の技と感性を備えるマスターテーラーが立ち会い、最高品質の仕立てと顧客のパーソナリティを具現化するスタイルにきめ細かく応える、というものだ。
ビスポークの初回は、要望するモデルについてマスターテーラーと話し合い、モデルに合わせた生地を選び、細部にわたる採寸を行う。その約1か月後に仮縫い。そしてデザインやフィッティングなどを再び確認する中縫いを経て、納品。つまり、4回ほどミラノのアトリエに通い、コミュニケーションを取ることで、満足のいく服ができ上がるのだ。完成までに、通常は3か月を要する。
特筆すべきことは、注文の際の生地選びとモデルのスケッチ。膨大な種類をそろえるエルメネジルド ゼニアの生地コレクションから、生地の特性がわかるように、マスターテーラーが生地を立体的に形づくってプレゼンテーション。スケッチでは、顧客との会話から紡ぎ出されるモデルを細かく表現していく。
唯一無二の服を仕立てるビスポークは、完成した服の見本がないため、仕上がりが想像できるスケッチは、実にうれしいサービスである。スーツだけではなく、ジャケットやパンツ、あるいはレザーブルゾンなど、多彩なモデルをつくれるため、描いたスケッチで、顧客の服のイメージに寄り添うのである。
使い古された言い回しではあるが、オーダーメイドの別称となるビスポークとは、「何かを求めて語る」というbe spkenが語源だ。マスターテーラーの話を聞くと、エルメネジルド ゼニアが成し得たビスポークの展開は、つくづく、服づくりの本質に立ち返る、至高の顧客サービスだと実感するのである。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2018年秋号より
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- クレジット :
- 撮影/篠原宏明 文/矢部克已(本誌エグゼクティブファッションエディター)